“感染制御の母”ナイチンゲール博物館閉館[2021/02/27 16:29]

 イギリスの看護師で現代の新型コロナウイルス対策にもつながる感染予防の基礎を作ったフローレンス・ナイチンゲールさんの功績を展示するロンドンのナイチンゲール博物館が、ロックダウンの影響で今月末で閉館することになりました。ナイチンゲールの功績に詳しい大平支局長のレポートです。

 ナイチンゲール役の案内係・アンバーさん:「ようこそいらっしゃいました。私はフローレンス・ナイチンゲールです」

 ロンドン中心部にあるフローレンス・ナイチンゲール博物館は、ロックダウンなどの影響で1年近く観客を受け入れられていません。

 ナイチンゲール博物館・グリーン館長:「ナイチンゲールの功績を知ってもらうことが今ほど大事だった時はありません。現代の新型コロナとの闘いや対策に彼女が与えた影響は計り知れないのです」

 今、ナイチンゲールを知ることがなぜ重要なのか。閉館前の博物館内を特別に取材させてもらいました。

 ナイチンゲール役の案内係・アンバーさん:「ナイチンゲールは政治をよく知っていたし、歴史や最新の知識も勉強していました。当時、ほとんどの女性が教育を受けていなかったなかで、控えめに言ってもかなり個性的だったと思います」

 人のためになる仕事をしたいとナイチンゲールが志したのは看護師でした。19世紀半ば、イギリスがロシアと戦ったクリミア戦争に従軍した際、野戦病院での経験がナイチンゲールの人生を大きく変えることになりました。

 ナイチンゲール役の案内係・アンバーさん:「ナイチンゲールがクリミア戦争に従軍した時、夜間は医師や他の看護師はただ寝ているだけでした。もちろん患者たちは夜間も治療が必要でした。ナイチンゲールはランプを手に道を照らし、野戦病院を毎晩6キロ以上も往復していたのです」

 その献身的な看護で知られるナイチンゲールは兵士たちの死因のほとんどがけがではなく、感染症であることを突き止めたのです。病院内の感染対策を徹底し、死者を大幅に減らすことに成功しました。

 ナイチンゲールは科学に基づいて対策を実践する人でした。円グラフや棒グラフもない時代、死亡した兵士の数や死因を月ごとに図表にまとめました。一目で分かるデータで病院の環境改善を実現していったのです。

 ナイチンゲール役の案内係・アンバーさん:「ナイチンゲールは数学の知識を使って世界を変えました。データを目で見て分かるようにすることがいかに大事かに気付いていたのです。当時、一緒に仕事していた政治家やお偉いさんたちはデータをたくさん見る時間はありませんでした」

 その後、ナイチンゲールは今、博物館があるこの場所に近代的な看護学校を設立するなど、現在の医療の礎を築いてきました。

 運営を入場料収入に頼ってきた博物館は今月末で閉館します。ナイチンゲールの功績を伝え続けるためにオンラインでの運営に移行するということです。

 ナイチンゲール役の案内係・アンバーさん:「来てくれてありがとうございました。またいつの日か会いましょう、サヨウナラ!」

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