中国ロケット“制御不能”で落下 なぜ?専門家解説[2021/05/06 23:30]

アメリカ国防総省は5日、中国が先月に打ち上げた大型ロケット『長征5B』の機体の一部が、“制御不能”のまま、地表へ落下する可能性があると発表しました。

国防総省は、8日ごろに大気圏に再突入する見通しを示しています。

去年5月の打ち上げ後には、アフリカのコートジボワールで『長征5B』の一部とみられる巨大な金属片が見つかっています。

アメリカ宇宙軍は、先月に打ち上げられた『長征5B』の部品を、24時間体制で追跡するとしています。
一方の中国外務省は、
「各国とともに宇宙空間の平和利用を進め、宇宙空間の安全を守るため、ともに努力したい」
としています。

ただ最新の追跡情報をもとにした予測によると、多くの専門家が、今回は人的被害が出る可能性は低いだろうとみています。

そもそも今回の落下の原因は中国のロケットの大きさにあります。
各国のロケットは2段式になっていて、燃え残るような大きい部分は宇宙空間に行く前に落下させ、残ったパーツは、小さいため大気圏で燃え尽きるようになっています。しかし今回の中国のロケットは1段のまま宇宙空間まで飛び立つことが可能で、巨体のまま大気圏に突入するため、燃え尽きないのです。
実際、今回を落下が懸念される部品は全長30メートル、重さは20トンです。

宇宙工学に詳しい和歌山大学・秋山演亮教授:
「今回の部品は20トンもあるので、大気圏で燃え尽きないだろう。さらに中国は、落下場所の制御もしていないと思われる。」

では、なぜ中国は“燃え尽きない大きさのロケット”を、“制御なし”で飛ばすのでしょうか?
和歌山大学・秋山演亮教授:
「一段式の大型ロケットは、構造がシンプルになり、コストも安くなる。また確率的に考えれば、人のいない場所に落ちる確率が高いので、燃え残ることを問題にしていないのではないか。さらに、燃え残ったロケットの一部を落下させてはいけないという法的拘束力がない」ことを理由に挙げています。

ただ、秋山教授は「燃え残る大きさと分かっているなら、何らかの制御をすべきではないか」とも指摘しています。

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