9・11遺族の思い「幸せ感じる心は奪われない」[2021/09/10 23:30]

日本人24人を含む3000人近くが犠牲となったアメリカ同時多発テロから11日で20年。テロで夫を亡くし、3人の子どもを育ててきた、日本人の女性がいます。

杉山晴美さん(56)は、当時、銀行員だった夫・陽一さんの転勤に伴い、家族でニューヨークで暮らし始めました。晴美さんのお腹には、新しい命も宿っていました。

陽一さんの職場は、ハイジャックされた飛行機が突っ込んだビルの80階でした。陽一さんの行方がわからないまま、テロから半年後、三男が誕生。それから間もなくして、陽一さんの遺体が見つかりました。残された3人の子どもたち。晴美さんには、ある決意が芽生えていました。
杉山晴美さん:「夫の肉体はテロによって奪われたけど、心は奪われてはいけない。幸せを感じる心を、絶対、取り戻して、子どもたちを育てていくと」

一方、アメリカは“テロとの戦い”を掲げ、アフガニスタンやイラクに侵攻します。20年経った今も断ち切れない憎しみの連鎖。
杉山晴美さん:「繰り返されるのを見たときの落胆はすごく大きくて。20年というタイミングで、また起きて考えさせられる」

憎しみや悲しみとどう向き合い、生きていくのか。晴美さんも迷いがなかったわけではありません。大切なことに気づいたきっかけは、子どもが友だちに言われた一言でした。
杉山晴美さん:「お友だちが悪気なく子どもに『(父親がテロで)死んじゃったの』『悲しかったの』というのが聞こえて、大丈夫かなと思って」

晴美さんは、元気づけようと、帰り道に立ち寄ったのは、子どもたちが大好きなアイスクリーム屋さんです。
杉山晴美さん:「みんな、わーって喜んで、はしゃいでアイスクリームを食べてて。私たちができることは、日々、壊されかけた幸せとか、子どもたちの笑顔を積み重ねていくことが、私たちがやるべきテロへの抵抗じゃないかなと。子どもの顔を見ながら思った」

子どもたちは、すっかり大人になりました。憎しみに満ちた日々ではなく、笑顔で歩むことを選んだ晴美さん。
杉山晴美さん:「紆余曲折、いろいろなこともちろんあったけど、やっぱり楽しかったと。うちの主人が『もう楽しむだけ楽しんだから、そろそろ来れば』というくらいまで楽しんじゃおうかな」

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