温暖化予測の先駆者 ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏[2021/10/05 23:30]

今年のノーベル物理学賞に、気候学者の真鍋淑郎さん(90)が選ばれました。いち早く温室効果ガスに注目し、地球温暖化の予測モデルを切り開いた研究が高く評価されました。

真鍋さんは愛媛県生まれの90歳。東京大学で学んだ後、1958年にアメリカに渡り、気象の研究を続けてきました。現在もプリンストン大学の上級研究員です。二酸化炭素やフロンガスの影響など、地球温暖化問題が注目をあびたのは1980年代ごろからでした。そのずっと以前から研究を重ねてきた真鍋さん。1989年には世界で初めて、大気の流れと海洋の循環を組み合わせた『地球温暖化予測』を発表しました。

報道ステーションでは2年前に、真鍋さんへ取材をしていました。
真鍋淑郎さん(当時87):「色々、面白いことが出た、海を入れたおかげで。この研究で分かったことは、南極周回ですね。北半球では緯度が高くなるほど温暖化が大きくなると。北極海とその周りで温暖化はべらぼうに大きくなる。そのおかげで海氷がどんどん減って、今それはご承知の通りだと思うが。過去20年、30年くらいで、海氷の面積が夏の面積が20〜30%減ってる。それで、その影響もあって温暖化は高緯度でうんと大きくなっていると。ところが、この論文でやってみると、南極周回ですね。ちょうど南緯45〜70度。南極周回、南の高緯度では温暖化が全く起こっていない。熱を海は南極周回で深く混ぜているために、温暖化が小さくなった。海の混合のために、熱を混合していますから、表面の温暖化は全くないんです。というのを、この論文で発見したんです」

南半球に比べ、北半球で温暖化がよりはやく進むという内容で、30年後の現在を予測していました。1990年、第1回目のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書の執筆責任者の1人でもあります。
真鍋淑郎さん(当時87):「なぜ私の論文を皆がそんなに読んでくれたか。一つの理由は1990年が政府間パネルが発足した年なんですよ。大気海洋結合モデルを開発して、温暖化の予測に使いたいと皆が思っていた。だから、私の論文が彼らにとってプロトタイプ、手本になった。」

人類共通の課題である地球温暖化に取り組むための道しるべを、アメリカの地で60年以上、研究を続けていた真鍋さんが開発していました。

気候についての研究がノーベル物理学賞に選ばれるのは異例のことだといいます。ノーベル財団の会見では、こんな言葉がありました。
選考委員:「(Q.今回の賞は世界の指導者らに気候危機の深刻さを伝えるメッセージか?)いまだにメッセージを受け取っていないリーダーがいるなら、今回も耳を貸さないでしょう。ずっと言い続けてきたことです。これは物理学賞です。私たちが伝えたいことは、気候モデリングが確かな立証された物理理論に基づいている事実です」

今年のノーベル物理学賞には、ドイツのクラウス・ハッセルマン教授(89)と、イタリアのジョルジュ・パリージ教授(73)も選ばれ、3人同時受賞となりました。

アメリカメディアも真鍋さんたちの業績を伝えています。
ニューヨーク・タイムズ:「3人の研究は、地球の気候がどのように変動したのか、人間の行動がその変動にどう影響したか理解するために最も重要な研究だ」

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