大規模停電も…CO2排出量最多 中国の“脱炭素”事情[2021/11/02 23:30]

岸田総理が“外交デビュー”の場に選んだのは、各国の国益がぶつかり合う、気候変動の国際会議『COP26』です。

岸田総理:「アジア全体のゼロ・エミッション化に向けて、日本が強いリーダーシップを発揮する」

約120カ国の首脳が参加するCOP26。その目的は、地球の気温の上昇をどう食い止めるのか。目標は、パリ協定で掲げられた「1.5度以内」です。そのためには、各国が温室効果ガスの大幅な削減に合意しなければなりません。
イギリス、ジョンソン首相:「気温が2度上がれば、作物は枯れ、害虫が大量発生し、数億人分の食料危機が起きます。人類滅亡までの終末時計は残り1分。今すぐ行動が必要です」

国連によりますと、各国が目標を達成したとしても、二酸化炭素の排出量は1割以上も増え、平均気温は、今世紀末までに2.7度も上昇するといいます。

しかし、各国の計画はバラバラで足並みがそろっていません。

「日本の決意を世界に発信する」とした岸田総理ですが、ジョンソン首相との電話会談で、重い宿題を突き付けられていました。

現在、日本は電力の32%を石炭による火力発電で賄っています。政府は、2030年に19%まで減らす目標を打ち出していました。しかし、ジョンソン首相は、2030年までに石炭火力を全てやめるよう求めました。

COP26の日本のブースには、水素で発電するタービンの模型が展示されました。天然ガスに水素を混ぜることで、石炭よりも二酸化炭素の排出量を抑えようというものです。政府は、このほかにも、アンモニアを燃料に混ぜる技術などで火力発電を維持する方針です。

ただ、海外からは厳しい反応もあります。
ナイジェリア政府関係者:「日本は、もっと効率が良くて持続可能なエネルギー資源に技術力を注ぐべき」
イギリスの再生エネルギー関係者:「日本の石炭技術がいかに効率的でも、世界が求める基準には全く及ばない。欧州を手本に、再生可能エネルギーへの移行を早めるべきだ」


脱炭素を取り巻く現状は、中国が削減しない限り、打開とはなりません。二酸化炭素の排出量で世界トップなのは、割合で三分の一近くを占める中国だからです。

習近平国家主席は今回のCOP26には出席せず、文書で声明を出すにとどめています。
習近平国家主席:「グリーンエネルギーへの転換を加速させ、再生可能エネルギーを発展させる。手と手を携え、気候変動に対応し、力を合わせて人類共同の地球という家を守ろう」

中国政府が脱炭素のモデルケースとして力を入れている場所が海南島です。2035年までに、必要なエネルギーを風力発電などクリーンなエネルギーで賄うことを目標にしています。

ガソリン車の廃止が決定され、電気自動車の展示会は大盛況です。今なら最大で17万円程度の補助金が出るとあって、買い替える人は多いそうです。ただ、問題もあります。
充電しに来た島民:「このルートはかなり交通量が多いのに、充電スタンドがない。この点は不便。高速道路のサービスエリアで設置してほしい」

海南島では小型の原発も建設中ですが「クリーンエネルギーにかこつけて、南シナ海の島々に電力供給をしたいだけ」と指摘する声もあります。

ただ、中国が脱炭素を急いでいるのは事実です。それは、石油によって経済を牛耳ってきたアメリカをよそに、次世代のエネルギー競争で優位に立つ狙いに他なりません。

李克強首相:「エネルギーの安全は発展の安全、国家の安全に関わっている」

脱炭素の現場は、東北部でも見ることができました。中国経済をけん引してきた石炭。電源構成に占める割合は、この15年で56.8%に引き下がりました。減産したせいなのか、価格は高騰しています。
小売り業者:「価格は1トンあたり約3万4000円です。(Q.昨年の販売価格は)約1万4000円でした。仕入れ値も約3万円に上がった。利益はほとんどないね」

急な脱炭素政策はさまざまな歪みを生んでいます。今年9月、中国では大規模停電が発生しました。停電は、各自治体が中央政府から脱炭素のノルマを課せられたことから、計画的に起こされたものでした。計画停電は今も続いています。

遼寧省瀋陽市は冬なると、マイナス30度になる地域です。高騰している石炭は家計を圧迫し、計画停電は電気による暖房も阻害します。最後の手段は、昔ながらの方法です。
家主:「(Q.毎回、まきをくべるのは大変じゃないですか)まあ、何とかなります。マンションは暖房費がかかるが、ここには“まき”があるから」

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