欧州で広がる“分断”家族内でも割れる接種の是非[2021/11/23 23:30]

新型コロナウイルスの感染再拡大が起きているヨーロッパ各国で、規制の強化が相次いでいます。ワクチン義務化に動き出す国もあり、ワクチンを打つ人と打たない人との間で“分断”が起き始めています。

ドイツでは新型コロナの感染再拡大が起きていて、多い日は6万人を超え、過去最多を更新しています。

南部の主要都市ミュンヘンでは、クリスマスマーケットが中止となりました。ミュンヘンはドイツの中でも特に感染状況が悪く、市長は「中止以外の選択肢はなかった」と話しました。

2年連続の中止に出店する側は落胆を隠しきれません。

菓子店店主・ラビュックさん:「屋台をすべて作り終えた後、クリスマスマーケットが中止になった。とても残念で涙を流しました。毎年、屋台で売ることが楽しみだったし、すごく好きだから」

倉庫に案内してもらうと、9月からこの日の為に用意されてきた商品が山積みになっていました。

菓子店店主・ラビュックさん:「1月初旬まではもつけど、売れなかったら捨てないと。例年だと、クリスマスマーケットですべて売っています。今年はどうしよう。お客さんにどうやって売ればいいのか」

キリスト教関連のオーナメントを扱っている店も出店できなくなりました。この店では、売り上げのほぼ全てを、この時期に作ります。

オーナメント店店主・シュバイツァーさん:「クリスマスマーケットで生計を立てている人も多いんです。クリスマス商品を6月に販売するのは難しいです。クリスマスは12月ですし、中止になると本当に深刻な問題です。しかも中止が2度目となると、その問題はより深刻になります」

聞こえてくるのは、こんな恨み節です。

オーナメント店店主・シュバイツァーさん:「危険なのは大きなイベントで、もしサッカースタジアムに5万人の観衆が集まったら大変です。すべてが少し早すぎたと思います。(Q.何が早すぎたんですか)マスクなし、色々禁止せず、すべての店を開けることです。ワクチンを拒否する人は馬鹿げています」

ミュンヘンでは屋外でのマスク着用義務や、お店でのアルコール提供、イベントでの人数制限など、先月6日までに規制が大幅に緩和されました。今の感染拡大は、制限緩和で人の流れが増えたことと無関係ではありません。

また、ミュンヘンはワクチンの接種率が70%に届いておらず、決して高い水準ではない地域です。そもそもドイツ自体、接種率は高くなく、喫緊の重要課題になっています。

ロベルト・コッホ研究所:「これから冬にかけての感染者の急増や重症化を防ぐためには、12歳から59歳の少なくとも85%が完全接種を終えなければいけない」

感染拡大には未接種も大きく関わっているとされていて、政府内では接種の義務化も検討され始めています。

ドイツ、シュパーン保健相:「この冬の終わりには、ドイツでは誰もが、接種済みか、回復しているか、死亡しているかのいずれかだ」


ヨーロッパでの感染拡大はドイツだけの問題ではありません。隣国のオーストリアでは、22日から4回目のロックダウンに入り、ワクチンの義務化も決まりました。拒否すると罰金です。

オランダ政府は、グリーンパスの使用を感染から回復した人とワクチン接種を受けた人だけに制限しました。検査結果が陰性だけではグリーンパスは使えません。グリーンパスを所持していないと、社会生活がままならなくなるので、事実上のワクチン義務です。

規制強化に対し、デモも起きています。ヨーロッパでは、国から何かを強制される、行動を規制されるというのはファシズムに直結するイメージがあり、強い拒否感が示されます。

銀行員:「もうすぐ定年退職します。15日が最後の勤務日でしたが、ファシスト用パス提示を強いられるので、会社には行かないことにしました」

打つ者と打たざる者。それは人間関係に大きな軋みを生み出しつつあります。

峯岸さん一家では、峯岸穣さん(48)は接種済み、妻・アイノさん(56)は接種拒否、娘・桃子さん(13)は未接種と三者三様です。

峯岸穣さん:「うちでは、ワクチンと政治と宗教の話はするなって言ってる」

アイノさん:「だから話の種がないんですよ。ごはん以外は」

峯岸穣さん:「僕は、自分に打つことは誰にも文句言われる筋合いはない。だけど打ったら『この弱虫』みたいなことを言われました」

アイノさん:「会社のプレッシャーで打ったからね」

峯岸穣さん:「違う違う。希望者しか打っていないんだよ」

アイノさん:「プレッシャーかけられて」

峯岸穣さん:「ないない。打っていない人もいる。うちの両親も80過ぎだし、妻の両親も80過ぎで、クリスマスとかで会った時に、もし自分がウイルスを与えて何かあったら取り返しがつかない。自分だけだったら別に打たなくても良かった」

アイノさん:「打ちたくない理由の一つはワクチンの副反応。長期の副反応がまだ明らかじゃない。もう一つは、政府・国がプレッシャーをかけて、打つようにさせるのがすごい嫌で、ちょっとプロテスト」

話は平行線です。

(Q.オーストリアが、ワクチン接種義務をヨーロッパで始めて出したが)

アイノさん:「ドイツでもそういうことになったら、私もデモに参加する。嫌っていう人がいても、政府がそういう法律を作るというのは、民主主義では絶対いけないと思う」

峯岸穣さん:「そしたら俺は、そのデモに対するデモに行きます」

アイノさん:「私のすごいいい友達もワクチン打った。彼女は、生活が不自由になっているから、ワクチンを打った。最近、生活が厳しくなってから、彼女と会ったり電話したら、すぐ嫌味を言う。『あんたたちのせいでみんな困っているんだよ』って。最近はこっちからも声をかけないし、彼女もちょっと引いてくる。ワクチンを打っていない友達との偏りというのも今から出てきていると思う」

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