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サンデーステーション

2021年12月12日 22:30

“季節外れの竜巻”背景に気候変動?竜巻街道も東に

2021年12月12日 22:30

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アメリカ中西部などを襲った30個以上の竜巻。犠牲者は100人を超える可能性があります。過去最悪の竜巻被害は一体なぜ起きたのか。専門家は要因として気候変動の可能性を指摘しています。

▽稲光の中…カメラが捉えた「巨大竜巻」
(ストームチェイサー マックスウェル・オルソン氏)
「ミズーリ州に入ります。今、私がいる南東の方角で30分前、竜巻に襲われました。」
撮影をしているのは、竜巻を追跡し、記録する専門のカメラマン。
「大きな竜巻です。」
さらに竜巻へと近づきます。
「少し見えにくくなってきましたが、まだ見えます。すごく大きいな。…気を付けないと。」
するとそこに…
「大きな竜巻があります」
巨大な竜巻が町を飲み込みました。
さらに、こちらはアーカンソー州で住民が撮影した映像。

こちらはケンタッキー州。竜巻はさまざまな場所で記録されています。
アメリカで発生した竜巻は10日夜から11日にかけ30個以上、ケンタッキー州やミズーリ州など6つの州を襲いました。

▽「すべて失った」一夜で変わった風景
一夜明け、見えてきた惨状です。屋根、2階部分がえぐり取られた家々―
そして、もはやそこにどんな建物があったのかさえわからないくらい破壊されつくされた一帯。
アメリカ中東部に位置するケンタッキー州は現状、最も被害が激しい場所です。
撮影者「何もかもが消えた。破壊された」
町の中心部でも原型をとどめている建物の方が少ないくらいです。

「町は壊滅的だ。ここはメイフィールドのブロードウェー通り。これは郵便局だ」
何とか倒れなかったのは郵便局。ただ、その中は瓦礫だらけです。
被災者「裏口のドアが顔に向かって吹き飛んできたの。だから、そこから逃げたの」
辛うじて壁は残っていますが、屋根は吹き飛びました。
「2009年に夫が亡くなった時に破産して、今また、すべてを失ってしまった」
竜巻が発生したのは10日の夜から11日にかけて。

(ケンタッキー州で牧場を営む吉田直哉さん)
「おそらく夜中の1時、2時くらいだったと思うんです。戸や窓を押すような音が、ガタガタっていうような音がすごく大きくなってきまして、きょう朝起きてみて、それできのうの風景と全く州内の景色が変わってしまったというのを知って、かなり愕然としました」
男性「玄関先にいたら、すべての電気が消えて、空が青くなって竜巻の細長い雲が見えたんだ。3軒先くらいで叫び声が聞こえて、おばあさんをがれきから救い出した」
救助活動が続けられていますが、被害の全容はまだ見えていません。

(ケンタッキー州 ベシア知事)
「死者は50人を超えるとみられる。最終的には70人から100人にのぼるだろう」
死者がこれだけ多くなると予想される理由の一つはろうそく工場の倒壊です。
クリスマスを控え、工場は24時間体制で稼働していて、竜巻が直撃した10日の午後9時半ごろ、中ではおよそ110人が働いていました。
男性「妻を探しているんだ。大事な人なんだ。彼女を見た人は連絡してほしい…」
竜巻は6つの州で30個以上、相次いで発生しました。イリノイ州では少なくとも6人が亡くなりました。
竜巻の直撃を受けてネット通販大手・アマゾンの物流倉庫が倒壊したのです。
地元消防当局「およそ140mにわたり建物が竜巻直撃の影響を受けた。両側の壁が内側に倒れた。屋根は真下に落ちた。つまり建物のほとんどは建物の内側に倒壊した」
当時、クリスマス商品の配送のため多くの従業員が働いていました。
これまでに45人が救助されましたが、シフトが変わるタイミングだったため、中にいた正確な人数は把握できていないといいます。
男性「犠牲者は自分だったかもしれない。犠牲者の家族のために祈るよ」
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏はツイッターで哀悼の意を表し、従業員や関係者への支援を続けると表明しています。

テネシー州では少なくとも4人が死亡し、1人が行方不明です。
トレーラーハウスが完全にひっくり返ってしまっています。
一人の女性が住んでいましたが、何とか救助され、病院へと搬送されました。
アーカンソー州では北東部で少なくとも2人の死亡が確認されています。

これは2月に撮影された衛星写真。
そして、竜巻の直撃を受けたあとです。農場の建物が骨組みだけを残して崩壊しました。

同じ地域にある老人介護施設も崩れ落ちました。
建物の中は瓦礫で埋まり、庭に植わっていた大きな木は根元から吹き飛ばされています。
こちらの施設では1人が瓦礫の下敷きになり、死亡しました。
また、ミズーリ州でも少なくとも2人が死亡しました。
ミシシッピー州も竜巻が発生しましたが、現時点で死者は確認されていません。

これまでのところケンタッキー州を中心に84人の死亡が確認されています。

▽“季節外れの竜巻”気候変動の影響は
アメリカで多発した竜巻の被害―。
アメリカ海洋大気庁によると、現地時間の10日だけでも400件近い竜巻や突風などの報告があったと言います。
なぜ、これだけの竜巻が発生したのでしょうか?専門家は当時の気象条件に着目しました。
(東京大学大気海洋研究所 新野宏名誉教授)
「竜巻を起こしやすい積乱雲として『スーパーセル』というものがあるんですけども、南から湿った空気が下層に入って来て、そこで尚且つ風が地面近くでは南風で、上空に行くにつれて西風になっている。そこで積乱雲がスーパーセルになりやすい。そういう状況が結構広い範囲で作られたことになる」

竜巻を生み出す、巨大積乱雲「スーパーセル」―。
メキシコ湾からの暖かく湿った空気と、北からの冷たい空気がぶつかって発生。それは、回転を伴った激しい上昇気流をつくりだし、竜巻を発生させるのです。
メキシコ湾の海面水温を見ると、平年と比べ、2℃ほど高くなっているのが分かります。また、この時期としては記録的な暖かさだったところに、強い寒気が南下した影響で、大気の状態が不安定になり、積乱雲が急速に発達したとみられています。
アメリカの気象学者は…
(米・気象学者 ジェフ・マスターズ博士)
「昨夜、レーダーを見ていて『12月になぜこんなことが起きるんだ!』と思った。こんなに激しいのは3月〜5月にしか見たことがありません。我々が考える通常のシーズン以外に竜巻が発生する可能性が高くなっている。」
さらにマスターズ氏は、発生エリアについても言及しました。
(米・気象学者 ジェフ・マスターズ博士)
「気候変動が、竜巻が発生するエリアも変えてきた。以前はテキサスやオクラホマなどだったが、ここ数十年で南東部にシフトしてきた」
年間1200件もの竜巻が発生するアメリカ。これまで竜巻が集中して発生していたのは「竜巻街道」と呼ばれる、テキサスからネブラスカにかけての中西部―。
しかし、今回多発したのは、東寄りのこのエリアだったのです。
(東京大学大気海洋研究所 新野宏名誉教授)
「1個のスーパーセルに伴って竜巻は典型的には1個発生する。 今回は広い範囲で、スーパーセルが起きやすい条件が整っていたので、仮に一時的に弱まったとしても、また条件の良いところに来ると発生するということは起きても不思議じゃなかったかなと思います」
CNNによると、バイデン大統領は既に救助隊を投入して、支援物資を送ったほか、仮設住宅の支援も検討していると言います。
(バイデン大統領)
「状況を注視している。アマリカ史上最大級の竜巻被害だろう。連保政府は、可能なあらゆることを行う」


12月12日『サンデーステーション』より

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