#国際女性デー ジェンダー平等へ「異常な日本」とは[2022/03/08 23:18]

 3月8日は国際女性デーです。ジェンダー平等を巡り、日本は海外からどう見えているのでしょうか。国連を舞台に世界で活躍する日本人女性に取材しました。

 ニューヨークの国連本部でナンバー3の事務次長の部屋を訪ねました。

 中満泉さん、軍縮担当の上級代表です。この日は、ロシア軍によるウクライナへの原子力発電所への攻撃を巡り、安全保障理事会の緊急会合が開かれていました。各国の大使の発言を注意深く、確認します。

 早稲田大学を卒業後、ジョージタウン大学の大学院を修了、国連の難民高等弁務官事務所に入所し、湾岸戦争やボスニア紛争などの最前線で人道危機の現場にも立ってきました。

 先月は、シリアでの化学兵器の使用を巡り安保理会合に軍縮担当のトップとして出席。国連職員としてのキャリアは、30年以上になります。

 「シリア・アラブ共和国の化学兵器の計画的な撤廃に関する安保理決議2118について再度説明の機会を頂いたことに感謝します」

 スウェーデン人の夫との間に2人の娘を持つ、母親でもある中満さん。8日に「国際女性デー」を迎えるにあたり、ジェンダー平等をめぐる日本の現状をどう見ているのか聞いてみました。

 「いろんなランキングを見ても、まだまだ本当に道のりは長いですよね。ほぼ世界全体とその最下位のようなところに全部日本の場合は女性の地位に関してはそういうランキングになっていて、本当に残念なんですけども、やはりすごく根深い問題で、原因はこれが一つということではないと思うんですね。例えば育休のことなんかでも、日本の場合はきちっとしたシステムは整っている。ただ、それをなかなか活用することができないし、なかなかそういう制度があってもね。育休をなかなか例えば男性が取ることができないとかっていうのはやはりその組織文化のこともありますし、組織文化を変えていく。もっと言うと、文化だけではなくて、その一人一人の考え方理解度、それを深めていく、いろいろなところにやらなければいけないことがたくさんあるんだろうと思います」

 育休などの制度を作って終わりというわけではなく、制度をしっかり活用するための文化や意識の改革が必要だと指摘します。

 国連では、どんな取り組みをしているのでしょうか。

 「2028年までにすべてのレベルでパリティー、つまり50パーセント、50パーセントを達成するという、明確な数値目標を出しました。で、その数値目標を作ったらその後それをどうやって達成していくのか、という戦略を立てて、そしてすべての国連の部門ですね。具体的な例ですけれども、私の補佐官のポスト、これp5のレベルでこれ空席がありましたのでつい最近、その考のプロセスをやったわけなんですけども、その時にすべて人事の方からね。この同じレベル、p5レベルでの現在のODAの割合というのは、男女比がこれで地域的な、そして国籍の割合はこれでということをすべて渡されて、それを考慮した上で、もちろんその他それだけで採用するのではないですけれども、これをきちっと考慮して採用の決定をしてくださいと言うようなことがすべて必ず出てくると。その結果、私たち軍縮部でどの男女比がどういうふうに今現在になっているのか。で、その進捗状況をこれ変わってきますのでどのように変わってきているのか、ということを必ずモニターされて、これ毎年通知されると。そしてそれがうまく進んでいない場合、男女比がきちっと戦略に基づいてきちっと進展していない場合は、もしかすると私自身の契約にも悪影響があるかもしれない、つまり私が責任を持ってこれを必ず実施するという、これが説明責任のない側面なんですけれどもそういうシステム全体すべてを統括したシステムができています」

 男女比の数値目標が公表され、進んでいなければ上司が責任を取る必要があるいうのです。ただ、掲げるだけの努力目標ではなく、達成しなければならないゴールとして、共有されています。こうした組織的な取り組みによって個人の意識も高まっているといいます。

 「今はもう組織文化的にも差別的なことを言ったりすることはできないほぼできないような状況にあるのかなと思います。もちろん、いろいろなところでまだね、セクハラのような問題が起こったり、どの組織にもそういう問題というのはあるんですけれども、そういったものにも事務総長非常に強い問題意識を持って、そのセクハラを専門に調査するような監査部いうのはもちろん国連の中にもあるんですけれども、セクハラの専門の調査官みたいな人を人もきちっと置いてですね。もしそういう問題が起こった場合には早急に対応できるような。これも、だから制度をシステムの一部なんですね。そういうことも努力をしています。これ多分世代的なところもあると思うんですね。世代と言いますか、今そうですね、40代、50代ぐらいの40代ぐらいの中堅レベルの職員の中で、やはり意識的にはもう完全に国連の中では本当に、平等、力、仕事の内容で判断するとジェンダーの別ということでは全くない。そういう意識は国連の中では定着してきているのかな。というふうに思います」

 そして、日本の社会でジェンダー平等を実現するためにはまず、男性が意識を変えることが急務だと指摘します。

 「よく日本では例えば女性の数をもっと増やさなきゃいけない。昇進する人を幹部のレベルに昇進していく人を増やしていかなければいけない。というような話をするとですね。時々、女性にじゃあ下駄を履かせるのか。っていうそういう反論を聞くことがあるんです。私は全くそうではなくて、むしろ逆ですね。男性がこれまでずっと履き続けている、そして今も履いている高下駄を脱いでいただく。それがやはりジェンダーの平等、ということなのかなと思います。これ、例えば医学部の入試の試験の女性と男性の比率を見たり、今年変わりましたよね。女性が50パーセント以上になったと。あとは、例えば都立高校の合格基準基準点が女性と男性、男性と女性との間で違う女性、女性の場合はもっと高い点を取らないと合格できないなんていうのは、まさに男性が高下駄を履いているという状況で、これを脱いでいただくということが、今はやはり一番緊急に必要なのではないかなというふうに思います」

 「男性が履いている高下駄を脱ぐ」ことが緊急課題と強調しました。

 そして、ジェンダー平等は女性のためだけに実現するものではないということを、組織のリーダーが理解する必要があるとみています」

 これももしかすると日本である誤解かもしれないですけれども。これは女性のためにジェンダー平等をするということではないんですね。ジェンダーの平等な社会というのはこれを男性にとっても女性にとってもみんなにとってプラスになる社会と。これが一番理解されなければいけないことだと思うんですね。一つはいわゆるリーダーシップの立場にいる人たち。これは必ずしも大きな会社のトップということでなくて、チームの長であったり、いろんなレベルで影響を及ぼせるような立場にいる人達が、これをやはり支えていこうということでできることを身の回りでやっていくということですね。これは例えば本当に小さいことですけれども、部内の会議はね、例えば5時以降やらないとか。つまり、保育園に女性職員が子どもを迎えに行かなければいけない。そのスケジュールをやはり常に理解しておいて重要なことは、そういうところではやらない。そういうことから始まって、常にいろいろな意味でね。制度も育休の制度も、みんなも取りやすいようなそういうコミュニケーションをとっておく。そして、いろいろさまざまな立場でね、自分はこの問題を変えていくことにコミットしてす、ということをリーダーシップの立場で常に発信していく、ということが非常に重要だと思います。それによって周りの人達がああ、そうなんだなというふうに、 それぞれその行動を変えていく、声を上げていく、それによって、やはり変わっていくのかなと思いますね」

 ジェンダー平等を巡って世界が前に進むなか、国際社会での生き残りをかけて日本は大きく変わる必要があると中満さんは考えています。

 「もう一つは日本の社会で非常に繰り返し繰り返し刷り込まれてるイメージって言うんですかね。例えばドラマであったり、映画であったり。ニュースもそうですけれども、そういったところでね、男性ばかりが発言するようなことを日本の若い女性たち、もっと言うと、女の子たちはそれを見ながら育っていくわけですよね。で、そうすると、気がつかないうちに、それが当たり前、普通の状況なのかというふうに刷り込まれていく。実はそれを世界、世界的なスタンダードから見ると、本当に異常なことなんですけれども、そういう刷り込みをなくしていくというのは、すごく重要なことだと思います娘2人なんですけれども、日本のことは大好きで、日本語も一生懸命勉強するんですけれども、日本にやっぱりいてですね、日本の状況を見ると、基本的にずっと海外で育ってますので、日本の状況にものすごく違和感があるんですね。テレビを見ていると、例えば会社の理事会のシーンが出てくると、座ってるのはほぼ95パーセントがみんな男性で、たまに1人か2人女性が入ってきて、書類を持ってそのシーンで入ってくるのは制服を着た女、若い女性、っていうそういうのがもう繰り返し繰り返し繰り返し出てくるので。ああ、もうあまりにも違和感でどうしてこういうことが今でも許されているんだ、っていうふうに、ものすごく疑問を持っているようです。なので、今の状況はやはり日本の状況は、グローバルスタンダードから見ると普通ではない。ということを理解していただけたらなというふうに思ってます」

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