“戦闘激化”予測も…米が追加制裁「ロシア産原油を禁輸」なぜ今?記者解説[2022/03/09 23:30]

ロシアがウクライナに侵攻して、まもなく2週間。引く気配をまったく見せていません。

民間人を避難させるための“人道回廊”。9日も、日本時間午後4時から設置するとロシア側が発表しました。設置されるのは、前回と同じで、首都キエフ、ウクライナ第2の街・ハリコフなど5都市。国外の行き先は、ほとんどがロシアです。

これに対し、ウクライナ側は、独自に6つの国内ルートを提案し、ロシア側から同意を得たとしています。ウクライナ政府は、初めて実現した8日の人道回廊で、スムイから市民など約5000人がポルタワに避難したと発表しました。

8日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、イギリス議会でビデオ演説を行い、改めて国際社会に訴えました。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領:「“生きるべきか、死ぬべきか”シェークスピアの有名な言葉を、皆さんはご存知でしょう。この問いは、ウクライナの13日間に対する問いです。私たちは、今も、未来も存在し、平和であり続ける。我々は、最後まで戦う。海で、空で戦い、私たちの土地を守る。テロ国家に対して制裁を強化してください。ロシアをテロ国家として認めてください。偉大なウクライナへ栄光を、偉大な栄光国に栄光を」

アメリカ国防総省によりますと、北からキエフに迫るロシア軍は、激しい抵抗により、ほとんど動けない状態です。現在、東と北西からも部隊が迫っていますが、「まだ市街地には近づけていない」ということです。ロシア軍は、3方向から包囲して、降伏を迫る狙いだとみています。

いま、キエフに残る人々は、どういう状況にあるのでしょうか。
キエフでIT関連の仕事をしている男性は、マンションの電気や水道は通じていて、生活に特段の支障はないといいます。
キエフ在住・アルテムさん(38):「たまにミサイルが飛んで来るけど、みんな普通に歩いている。西部へ避難する電車は普通に出ていて、最近、本数が増えている」

男性の母親や妻と子どもたちは避難させましたが、ウクライナでは、国民総動員令が出され、18歳〜60歳までの男性は、出国禁止となっています。
キエフ在住・アルテムさん(38):「私たちにウクライナは一つだけ。(Q.徴兵されれば戦闘に参加する)もちろん。海外からの協力や支援に感謝している。支援がもっと多く集まれば、ウクライナの勝利が近づく」

アメリカ国防総省は、ウクライナ南部では、ロシア軍が攻勢を強めていると分析しています。南東部のマリウポリは孤立し、オデッサでは「ロシア軍が陸側から攻撃しようとしている」との見方を示しています。

ロシア軍の今後の動きについて、CIA=アメリカ中央情報局のバーンズ長官は、こう話します。
バーンズCIA長官:「プーチンはウクライナを支配し、その将来を勝手に決めようとしている。彼を突き動かしているのは、個人的な執念だ。長年の不満と野心が交錯し、醜い数週間が続くだろう。彼は攻撃を強め、民間人の犠牲をないがしろにし、さらにひどい市街戦を繰り広げるだろう」

アメリカは、さらなる制裁に踏み込みました。
アメリカ・バイデン大統領:「ロシアの原油、ガスなどを禁輸にする。アメリカ国民はプーチンの戦力に再び強力な一撃を加えることになる」

ロシアのウクライナ侵攻で、ガソリン価格が過去最高値をつけるなか取られた今回の措置。バイデン大統領は、さらなる高騰も覚悟の上です。
アメリカ・バイデン大統領:「犠牲の伴う決断だ。プーチンの戦争は家計を痛みつけている。世界平和に対するプーチンの攻撃に対抗しなければ、自由やアメリカ国民にかかる負担は、さらに大きくなるだろう」

バイデン大統領が強気を見せるのは、ロシア産原油への依存度が低いからだけではありません。「ガソリン価格が高騰しても禁輸を支持する」という世論が後押ししています。

イギリスも、年末までに原油の輸入を段階的に停止する方針です。ロシア産の天然ガスに大きく依存するEUも、重い腰を上げようとしています。年内にロシアからの輸入を3分の2減らす計画を発表しました。

◆布施哲ワシントン支局長に聞きます。

(Q.なぜ、このタイミングで追加制裁に踏み切ったのでしょうか)
現地から悲惨な映像を目の当たりにして、議会を中心にロシアに強く出るべきとの声が高まっています。今回の決定は、議会の声に引っ張られる形で決まったものです。バイデン政権の基本的スタンスは、軍は送らない、つまり直接関与はしない代わりに、それ以外の支援、例えばインテリジェンスの提供、武器弾薬の提供など、間接支援でウクライナを支えていこうというものです。ただ、この間接支援について、疑問の声が、国内で上がり始めています。議会を中心に「果たして道徳的に正しいのか」という声が上がっています。

今回の追加制裁のほかにも、ポーランドを介して戦闘機を送れないかという議論もありますが、ホワイトハウスは、ムリ筋な話だと否定的ですが、議会は、強くプッシュしていて、検討せざるを得ない状況になっています。

いま最も話題となっているのは、ウクライナ上空に飛行禁止空域を設定すべきではないかということです。これについてもホワイトハウスは、ロシア軍との武力衝突のリスクがあるので、強く支持する議会と対立しています。きのう、軍事、外交の専門家27人が連名で公開書簡を発表。“人道回廊”の上だけでも設定すべきではないかという声が上がっています。間接支援だけに留めたいバイデン政権ですが、よりリスクのある、さらに1歩踏み込んだ関与を求める圧力にさらされています。

(C) CABLE NEWS NETWORK 2022

こちらも読まれています