日本人観光客が待ち遠しい…“脱”入国制限 ハワイの今 #リアルアメリカ[2022/05/27 20:00]

◆マスク不要! ハワイに米国内の観光客は戻った

すっかり以前の日常を取り戻したハワイ。
マスクの着用義務も解除され、コロナ禍の雰囲気はもはやありません。
GWに初めてハワイを訪れた日本人観光客は。

日本人観光客)
「最高すぎて、あとマスクないのがいいですね。日本は基本的に全員マスクつけていないと、多分90%つけている。着けないと“悪”なので。(日本とアメリカとは)ギャップしかないですね」

2019年にハワイを訪れた日本人は157万人余りに上りましたが、
去年はわずか2万4000人にまで激減しました。
一方で、アメリカ本土からの観光客はコロナ前の120%に急増し、ハワイのビジネスに大きな影響を与えています。

◆日本人が来られない…乗り切るための戦略転換

ディーン・アンド・デルーカ ハワイ 高橋陽平社長)
「去年の6,7,8,9月と夏休み需要だったんですけれども、日本人の方はもう本当にほとんどいない状況で。過去類を見ないぐらい本当に多くのアメリカ人の方が来て下さって」

日本人観光客が激減する中、経営を支えたのはアメリカ本土の客でした。
テイクアウトができるサンドイッチなどのメニューをアメリカ人好みに変更する戦略を打ち出したのです。

ディーン・アンド・デルーカ ハワイ 高橋陽平社長)
「(アメリカ人は)普段、地元で食べているものをハワイでも食べたい、ちょっと日本人とは求めているものが違うんですよね。アメリカ人の人たちが普段食べているもの、食べやすいものというのに着目して、そういったメニューをホットサンドイッチとして作っておりまして」
Q日本人観光客は旅行中、色んなレストラン行きたい。アメリカの人は違う
「これがすごく面白くて、アメリカ本土からいらっしゃるお客様は、旅行先でも一度気に入ったレストランがあると毎日通って下さる。『ここがおいしい』と思ったら、そこでずっと楽しい時を過ごしたい。さらにそれがハワイであればより良いよねと、どちらかというと日常と違うゆったりとしたリラックスできる安心できる時間を求めて旅行にいらっしゃる方が多いので、気に入って下さると本当に毎朝、毎昼食に来て下さるんです」



Q日本人観光客がいなくなったが米本土の需要を見つけた?
「コロナになって悪いこともたくさんあったんですが、良い点として、今までなかなか来ることがなかったアメリカの中間層を取り込むことができた。そういった方々に良く思ってもらえるというのは非常にプラスなことでもありましたし、コロナ前と今だと幅が広がったなと。会社としても成長の証として良いことかなと思っております」

コロナ禍のピンチをチャンスに変えました。
高橋社長は、売り上げをさらに伸ばすためには日本人観光客が重要だとみています。

ディーン・アンド・デル―カ ハワイ 高橋陽平社長)
「去年の夏はコロナ前をしのぐ飲食の売り上げでしたが、残念ながら、アメリカ本土のお客様は日本のようにお土産文化というものがないので、逆に言うと、物販はあまり売れなかった。なので、お土産を求めてハワイにいらっしゃるヨーロッパ、オセアニアや日本の方々が戻ってきて初めて物販が上がっていく。これがもしコロナ前と同じぐらいまで復活すると、全体の売り上げは、過去にないぐらい大きくなるということになりますね」

◆日本人観光客への期待 進む準備

日本人観光客が戻ってくるという期待感はハワイの様々な場所で広がっています。
早速、日本語を話せるスタッフを雇うなど準備を始めたという店も

コーヒーショップ831オーナー 武田奈津子さん)
「日本語が話せるスタッフにまた戻ってきてもらったり、新しく採用したりして。
あとは午後も開けられるように、また、週7日開けられるように準備しています。
今までは日本語より、英語ができないと対応できないので、英語がメインでしたが、
急遽、日本語ができる人を採用してトレーニングを始めています」

朝はコーヒーを買いに来るアメリカ人が多いものの、
ランチ後にお茶をしにくる日本人がいなくなり、これまで午前のみ営業していました。
GWを境に5月以降は、午後もオープンし、日本人向けのスイーツの販売も再開します

コーヒーショップ831オーナー 武田奈津子さん)
Q)日米で味覚や求める甘さが違う?
「そうですね、スムージーもそうですし、もうちょっと甘さが効いていないとアメリカだと人気がないんですけど、日本人はもうちょっと甘さ控えめ目の方がよかったとか」

コーヒー豆や新鮮なフルーツなどハワイ産の食材にこだわりを持つ武田さん。
地元の人にとっても日本人観光客は特別な存在だと感じています。
コーヒーショップ831オーナー 武田奈津子さん)
「ハワイの地元の人は日本人のことが好きなので喜ぶと思います。日本の人は礼儀正しかったり、ゴミを捨てないとか当たり前のことなんですけど、列を作って待てたり、いつも笑顔で返してくれたり日本人の素敵なところなのでハワイだけでなく世界中にで出せたらいいと思うので。ぜひハワイに来てください」

ハワイと言えば、海のアクティビティも人気です。
日本人の足が遠ざかっていた間にアメリカでは国内有数の観光地としてハワイの価値が見直され始めています

カリフォルニア州からの観光客)
「 コロナ前に計画していたんだけど来れなくて 2年経ってようやく来られた」
Q:今はアメリカ国内が旅行しやすい、ハワイはいい旅行先ですか
「ハワイは最高。満喫しているわ」

◆日本人を待ちわびるウェディング業界は

ホテルの稼働率も高く、ワイキキには人が溢れています。
ハワイのビジネスは、今や日本人なしでも十分に回っているように見えなくもありません。
ただ、日本人カップルが主な顧客だったハネムーン業界は事情が違います。
オアフ島にある結婚式場では、GWをきっかけにようやく光が見えてきました。

ツリーハウス・ハワイ 田貝亜耶さん)
Qコロナ禍で日本人の結婚式はできなかった
「ほぼゼロに近い状態でして、予約も全てどんどんキャンセルになってしまい、一切出来ない状況でした。やっとドレスの入れ替えなどに予算を回せるようになったのがつい最近ですので、久しぶりにドレスのトレンドを取り換えることが出来る状態になれました。やっとですね」

3年ぶりのウェディングに向けて動き始めました。
最新のトレンドに合わせて、式場の撮影やPRも一からやり直しです
最大50人の挙式が可能ですが、しばらくは少人数での渡航を見越して、
カップルのみのプランや気軽にアフタヌーンティーを楽しめるコースも新たに作りました。
この3年間、いつでも門出を祝えるよう準備してきましたが、
コロナ禍の日本に向けてどう発信するべきか悩んだ時期もあったといいます。

ツリーハウス・ハワイ 田貝亜耶さん)
「やっぱりハワイに来て欲しいという思いはあるんですが、それを発信していいものなのかと悩んだ時期もたくさんありました。私たちとしてはハワイにいつでも戻って来て欲しい、でも来られない現実がある中で、SNSや広告の発信の仕方は物凄く考えて取り組んでいました。私たちとしては動いてるよ、いつでもハワイは待ってるよという状態を作っておくことを心がけてはいました。
Q.準備を進めていて今の気持ちはどうですか
ワクワクしてます。すごい楽しみです。やっと日本から新郎新婦様がいらして、2人を祝福出来る環境にあるので、やっとその時期が来たんだなと思って今から待ち遠しくてしょうがないです」

◆観光客の不在で海がきれいに コロナがもたらした変化

日本の大手旅行会社もハワイのツアー販売を再開しましたが、
現地では、ビジネスだけでなく観光客の受け入れ方にも変化が起きています。
コロナ禍で観光客が減ったことで海がきれいになり、環境を大切にする意識が高まっているのです。

人気の観光スポットでは人数制限が設けられていました。
美しい海はハワイの大事な観光資源でもあります。
環境を守るための制限については、観光客の受け止めも前向きです。

アラスカ州からの観光客)
「前回来たのは4,5年前。混雑がひどかった。今の方がずっといい。間違いなく景観が保護されている」

カリフォルニア州からの観光客)
「ハナウマ湾は3回目、ずっと綺麗なままだ。予約しなきゃいけないけど簡単だし問題ないよ」
「環境保護のために入場制限するのはいいことだと思う。色んな人が立ち入って自然を荒らしちゃうから」

◆ハワイが日本に求めること

ハワイの自然を守りながら観光地としての価値を高めていきたい。
そんなハワイを大切にしてくれるパートナーとして日本人観光客への期待が高まっています。

ハワイ州観光局日本支局 ミツエ・ヴァーレイ支局長)
Q:観光客が増えたが環境に配慮した新たな受け入れ方を模索している
「日本と同じでハワイも島国ですし日本よりも小さいのですごく影響を受けやすい。ハワイでの色んな事例を日本とも共有しながらお互いに島の資源を守っていくというのはこれから必要になっていく」
Q:ここ2年コロナで日本人が来ることができなかった
「日本とハワイの歴史はすごく深いですし、地元の方々は日本に行けないのがすごく寂しい。あとは日本の旅行者に早く戻ってきてほしい、いつになったら日本の客は戻るの?とよく聞ききます」
「まずは帰国後の隔離が緩和され、感染危険レベルが2になってやっとパッケージ旅行が販売できるようになった。これでGWからちょっとずつ個人旅行が戻って、夏、年末年始に向けて日本の観光客が少しずつ緩やかに戻ってくる可能性があり、ハワイの方々の期待が高まっています」

多くの日本人に来てもらいたい一方で、日本政府による海外からの入国制限については緩和してほしいという声も上がっています。

ハワイ州観光局日本支局 ミツエ・ヴァーレイ支局長)
「まだ水際措置で一日1万人という規制がありますので、いつになったら緩和するの?特に住んでいる人がいつになったら日本に行けるの?という質問が大変多いです。観光というのはツーウェイ(双方向)であるべきだと思いますし、お互いの行き来、ハワイと日本は交流がすごく多いんですね。留学生同士の交流も含めて、やはりツーウェイというのが大切だと思うので観光のツーウェイが早く戻ればいいなと思います」

日本政府は、1日1万人としている入国制限の上限について、
6月から2万人に拡大する方針を明らかにしましたが、ハワイはすでに制限なく観光客を受け入れています。
かつては1年に150万人以上の日本人が訪れたハワイに、その存在感が戻る日は来るのでしょうか。


取材・構成・ナレーション: 猪ノ口克司朗
撮影: 池谷俊明
編集: 山田 久

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