「生き地獄みたいな社会に逆らえ」 韓国“BTS世代”の若者が始めた社会変革[2022/06/19 22:30]

「伝えたいメッセージが出てこなくなった」
そう胸の内を明かし、活動休止が報じられた「BTS」、デビュー曲では「生き地獄みたいな社会に逆らえ」と歌っていました。
そこに込めた彼らのメッセージとは。

▽“現状を変えたい”声を上げるBTS世代
BTSと同じ世代の若者たちが社会を変えようと声を挙げ始めています。
フードデリバリーの仕事をしているウィ・デハンさん。
Q. 何を配達したんですか?
(フードデリバリー配達員 ウィ・デハンさん)
「ドーナツを配達しました」
Q. 1日何時間くらい配達する?
(ウィ・デハンさん)「8時間から9時間ほど仕事をします。ヘルメットを長時間着用していると肩が痛くなります」
配達の単価は1回450円ほど。
韓国ではいま、ウィさんのようにインターネットのアプリを通じて単発の仕事を請け負う若者が急増しています。その数は就業者全体の8.5%。(220万人)平均月収は15万円ほどだといいます。
(ウィ・デハンさん)「現状について感じる不満は多すぎて詳しく話すには時間が足りません。物価に比べて賃金が上がらないのも大きな不満です。もともと一人暮らしでしたが、大変だったので実家に引っ越しました」
過酷な現状を変えるため去年ウィさんは仲間たちと「ライダーユニオン」を立ち上げました。雇用保険などの社会保障がなく事故があっても労災も受けられない労働環境の改善を企業側に求めたのです。
(ウィ・デハンさん)「ライダーの処遇改善のための交渉を続け、配達料の引き上げやライダーの福祉などについて(企業と)いま17回目の交渉を行っています」
仕事の傍ら、大学に行くために勉強を始めたというウィさん。いま新しい目標ができたといいます。
(ウィ・デハンさん)「将来の目標は『政治家』になることです。若者の住居問題や福祉の問題を解決したい。かゆい所に手が届く、若者向けの政治をしてみたいです。」

▽“反日強要”に抗議 20歳最年少の当選者
「チェ・インホ!チェ・インホ!」
“若者の政治参加”が進む韓国。今月1日、ソウル市の区議選で、20歳の大学生チェ・インホさんが最年少で当選しました。日本では衆議院議員と地方議員の被選挙権は25歳以上ですが、韓国では今年1月、18歳以上に引き下げられています。
Q. 出馬の動機は?
(最年少でソウル市区議に当選 チェ・インホさん)
「高校生の時から(政治)活動をしていましたが、市民社会の中で声を出すことに限界を感じました。」
(教師)「日本の経済侵略に反対する!」
チェさんは高校3年生の時、教師から反日スローガンを叫ぶよう強要されたと告発。証拠の動画をYouTubeで公開しました。
(女子生徒)「日本は謝罪しろ」
(男子生徒)「安倍自民党は滅びろ」
「滅びないぞ」

中立であるべき教育現場で偏向教育が行われているとして、座り込みを行いましたが…強制的に排除されました。
(チェ・インホさん)「助けてください」
「同調しない生徒には『なぜ反日運動に参加しないのか?』と敵視してくる。そのようなやり方だと危険で暴力的な流れになる。外交は感情でやってはいけないものです」

▽BTS世代が変える「韓国政治」
若者票がカギを握るといわれた今回の大統領選挙。候補者たちは若者へのアピールに躍起になっていました。
(「国民の力」尹錫悦候補 (当時))「若者と庶民のために不動産価格を必ず正常化します」
チェさんは若者の待遇改善を訴えた尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏の陣営で活動。
(チェ・インホさん)「だから若者たちは(ユン氏を)支持したくなるんです」
大統領に就任したユン氏はさっそく公約の実現に着手。韓国政府は16日、就職の際の採用不正をなくすために「公正採用法」をつくる方針を発表しました。韓国政治を変えている「若者の力」。選挙制度の違いはありますが20代の投票率が日本の衆議院選挙では36.5%でしたが韓国の大統領選挙では65.3%に及んでいます。
(チェ・インホさん)「今後、政治の構図が変わっていき、若者の声が主導的な役割を果たせるようになったらいいなと思います」


6月19日『サンデーステーション』より

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