「陽性者も街に、感染数気にせず」英“全数把握”撤廃の背景と世界の対応[2022/08/19 23:30]

新型コロナ感染者を“全数把握”するため、医療現場では、患者を診ながら情報入力をするなど、負担が増えています。

政府は、見直しの検討をするとしていますが、どのような形がいいのか。海外を例に見ていきます。

韓国は全数把握しています。アメリカ・フランスも全数把握の形式を残していますが、イギリスは全数把握をしていません。それぞれ、どのように感染者の数を把握しているのでしょうか。

●韓国

病院などのPCR検査で陽性が判明した場合、病院などから保健所に報告が行きます。自分で抗原キットを使い、陽性となった場合は、検査場などで改めてPCR検査をした後に、保健所に申告します。

つまり韓国は日本と同じような体制ですが、韓国は、日本のマイナンバーのような住民登録番号を検査でデジタル活用しているため、医療現場が事務作業で疲弊していないということです。

●アメリカ

病院などのPCR検査で判明した陽性者のみ把握しています。自分で検査をして陽性だったとしても、軽症・無症状の場合は、病院や保健所に申告する必要はありません。

●フランス

自分で検査して陽性の場合、改めて薬局などでのPCR検査を呼び掛けていますが、検査を受けない人も多いということで、実態を反映していない状況です。

イギリスはなぜ全数把握をしていないのでしょうか。ロンドン支局・佐藤裕樹記者に聞きます。

◆ロンドン支局・佐藤裕樹記者

(Q.イギリスの人は、コロナに対してどのような意識で生活していますか?)

イギリスの人たちは、コロナを全く気にしていません。道行く人でマスクをしている人は、ほとんどいません。

特にイングランドでは、コロナの規制が撤廃されたのは今年2月です。もう日常を取り戻して半年が経ちます。極端なことを言えば、規制がないので、コロナ陽性で街を出歩いていたとしても、法律上は問題ありません。

規制がないので、自分が陽性かどうか知る必要性が薄まっています。こうした政策の背景には、コストを鑑みた対策、経済とのバランスがあります。

(Q.イギリスでは、感染者の数を把握していないのですか?)

正確な数字は把握できていないと思います。ただ、推定・予想を出しています。19日に2週間前のデータが発表されました。これは、無作為に選ばれた人の陽性率などから導き出しているもので、40人に1人が感染していたというデータです。

(Q.イギリスの人は、推定値を気にして生活していますか?)

全く気にしていません。道行く人に話を聞いても、誰も知りませんでした。こちらにある民間のPCR検査場は、ビジネスが成り立たないとして潰れてしまいました。ロンドンで細々とやっている民間のPCRセンターを訪れるのは、入国に陰性証明が必要な日本人や中国人がほとんどです。多くの国では今、入国に陰性証明が必要ないので、民間のPCRセンターの需要は減っています。

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全数把握について、日本の加藤厚労大臣は「全数把握の目的は、感染状況の把握と、高リスク患者の健康管理。医療機関の負担を軽減しながら、全数把握の機能をどう残すのか、専門家などの話を聞いて検討する」としていて、速やかに対応する考えを示しています。

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