6月から続く大雨と“山津波”パキスタン洪水1300人死亡…異常気象の原因は?解説[2022/09/05 23:30]

パキスタンで起きている大洪水で甚大な被害が出ています。

当局発表によりますと、3300万人が被災し、今月4日までに亡くなった人は1314人に上ります。犠牲者の3分の1は子どもたちです。今月2日には一日で57人が死亡し、そのうちの25人を子どもが占めていました。

遺族:「おいと息子が負傷し、もう一人の息子が亡くなりました。悲劇的な瞬間は言葉では言い表せません。気持ちは言葉になりません」

首都イスラマバードから車で2時間の距離にあるノウシェラでは1週間前、カブール川の堤防が決壊しました。

住民:「政府の人々がこちらにやってきて『必需品を持って家から出てください』と。『ここは洪水が起きるから、今は命が優先だ』と言ってくれました。

住民:「政府の職員たちが一人ひとり家から出るのを助けてくれました」

パキスタンの洪水は6月から始まりました。近年まれにみる豪雨に加えて、気候変動による猛暑で氷河が溶けだし、長期間水害が起き続けることになりました。

山岳地帯の多いパキスタンですが、平野部の大部分が水没したことになります。特に南部での被害は甚大です。

パキスタン、イクバル計画開発相:「被災の規模は甚大で、3300万人に対し、膨大な人道的支援が必要です」

3300万人に被害というのは、7人に1人が被災しているという状態ですが、この数はまだ増えそうです。

4日には、パキスタンで最大の貯水湖が危険水位に達したため、放流が始まりました。人口密度の高い地域への洪水拡大を食い止めるためですが、これによって10万人の避難が必要となります。

一連の洪水は農村部を直撃しました。72万以上の家畜が流され、米や野菜といった作物だけでなく、主要産業である綿花にも被害が出ています。

国連は220億円の拠出を決めましたが、支援が長期化するのは必至です。

パキスタンで19年間、活動してきたNPO団体は、今回の水害をこのように分析しています。

AARJapanイスラマバード事務所、大泉泰駐在代表:「インフラにしても道路・電気が優先されがちで、堤防・治水関係のインフラまで手が回らない部分がある。特に2つの川が交わる場所では、一気に一帯が海のようになってしまう。河川も大河で、日本のように短い川じゃないので、そこを全部治水するのは物理的に難しい」

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パキスタンの大洪水には、主に2つの要因が考えられています。

●長期間の豪雨

豪雨は6月から続いていて、例年同時期の5倍以上の雨量になっています。

●氷河湖決壊洪水(別名『山津波』)の多発

パキスタンの北東部にあるヒマラヤなどには7000以上の氷河があり、それが溶けて流れ出す減少が、今年30件以上発生し、例年の3倍になっているといいます。

こうした気候変動は、なぜ起きるのか。世界の異常気象を研究する三重大学・立花義裕教授は「“偏西風の蛇行”が関係している」と指摘しています。

偏西風が蛇行することによって、ヒラマヤなどに暖かい空気がたまり、多くの氷河が溶けるほど、地上の気温が高くなりました。

一方、パキスタン南の海水温は今年、例年に比べて低かったといいます。気温が高い場所では上昇気流が起き、その隙間に冷たく湿った空気が入り込んで雨雲ができて、雨が降りやすい状況が続いているということです。

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