1972年 日中国交正常化 田中角栄総理の訪中団 共同声明調印までの記録映画[2022/09/28 20:00]

29日、日本と中国の国交が正常化され50年を迎えます。
50年前、1972年9月25日から30日まで、田中角栄総理大臣、大平正芳外務大臣、二階堂進官房長官らの一行は中国を訪れ、国交正常化交渉に臨みました。
その様子を収めた政府の公式記録映画には、首脳会談や外相会談、晩餐会をはじめ、万里の長城や故宮などの視察の様子が映し出されていました。27日の毛沢東主席と田中総理との会談は、日本側が撮影できず、中国から提供された映像です。

※肩書きはすべて当時のもの

00:00
1972年9月25日の羽田空港です。
中国へ向けて出発する田中総理大臣や大平外務大臣らを、大勢の人が見送ります。
田中総理らは、与野党の議員らと笑顔で握手を交わし、飛行機に乗り込みます。飛行機は、大勢の人々に見送られ、中国へ出発しました。

01:19
田中総理らを乗せた飛行機は日本航空の特別機で、日本と中国の航空関係者が協力し運行されました。目的地は北京です。田中総理が窓の外を眺める様子が映されています。

01:55
第2次世界大戦が終わって、27年。両国の間には、空白の時間が続いていました。
映像は毛沢東主席の写真や、当時の新聞記事です。
中国は毛主席のもと「文化大革命」を進め、1971年、国連に参加しました。
1972年2月には、アメリカのニクソン大統領が中国を訪れ、世界から注目されました。

02:29
映像は1972年8月の田中総理と孫平化氏(上海舞劇団団長)の会談の様子です。笑顔で握手を交わしています。この会談が、田中総理の中国訪問を決定的なものにしました。

02:49
当時の中国国内の様子です。街中を自転車で移動する人々の様子などが映されています。
当時の中国は、諸外国との友好協力を前提に平和五原則を掲げ、復交三原則を押し出していました。

03:14
北京・天安門前の様子です。多くの人たちが行き交い、道路では、白い制服を着た警察官が交通整理をしています。
北京駅前のメインストリートでは、地方から出てきたような大きな荷物を抱えた親子連れの姿も見えます。

04:12
映像は、9月25日の北京空港の様子です。
午前11時30分、周恩来首相が迎える中、田中総理らを乗せた飛行機が到着しました。
田中総理はタラップを降り、周首相と握手を交わします。出迎えたのは、日本関係者などを含めた53人。アメリカのニクソン大統領が中国を訪れた時を上回る人数でした。

04:56
歓迎の曲が演奏される中、一行は移動。
田中総理は、人民解放軍の儀仗隊を閲兵。中国製の乗用車「紅旗」に乗り、宿舎の北京郊外にある迎賓館に向かいます。

05:38
迎賓館に到着した田中総理ら。もてなしを受け、リラックスした表情を見せます。周首相とにこやかに会話します。

06:21
映像は人民大会堂の様子です。田中総理らが到着し、周首相との第1回会談が行われます。握手を交わしたり、記念撮影をしたりする様子です。

07:18
午後3時、会談が始まりました。田中総理、周首相、両方に笑顔が見られます。

07:39
人民大会堂から、田中総理が出てきました。車に乗り込み、会場をあとにします。

08:00
会談を終えた、田中総理、大平外務大臣、二階堂官房長官です。田中総理と大平外務大臣が談笑する様子が映っています。

08:50
25日の夜には、周首相主催の晩餐会が開かれました。この中で周首相は中国側の基本的な考えを明らかにしました。

09:13
これに対し田中総理は「我々は過去の暗い袋小路にいつまでも沈淪することはできません。私は、いまこそ日中両国の指導者が明日のために話し合うことが重要であると考えます。」と述べました。

09:49
翌日の26日午前、日本の大平外務大臣と中国の姫鵬飛外相の会談が、人民大会堂で行われました。姫外相の笑顔も見られます。両首相の会談で大枠を話し合った問題について、詳細が討議されました。

10:17
映像は、田中総理らの宿舎、迎賓館です。田中総理、大平外務大臣、二階堂官房長官は、迎賓館のバルコニーをリラックスした様子で歩きます。

10:44
中国は、国交正常化の道を開くきっかけとして、アメリカや日本と、スポーツで交流しました。国内の体育館では、若者たちがトレーニングをしています。古くから伝わる民族武芸に取り組む子どもたちの姿も見られます。

11:48
また中国国内では幼稚園の普及も進んでいました。おもちゃで遊んだり、曲に合わせて踊ったりする子どもたちの様子が映されています。

12:22
北京大学の様子です。学内はきれいに整備されています。おそろいの衣装を着た女性たちが、踊っています。

12:50
映像は、中国舞劇団の「紅色娘子軍」の様子です。大平外務大臣と二階堂官房長官は、中国側の招待でこの舞台を観劇しました。

13:21
映像は万里の長城です。多くの観光客が訪れています。

14:08
27日、田中総理らは姫外相の案内で、万里の長城を訪れました。
田中総理は先頭で登っていきます。そのスピードについていくため、案内役の中国の役人が小走りになり、「田中総理、もう少しゆっくりお歩きください。」と声をかけたそうです。

15:00
コートを着た大平外務大臣と二階堂官房長官。先に進む田中総理を見上げ、休憩しながら進みます。

15:13
先頭で手を振る田中総理の後ろには大勢の人が続いています。

15:20
田中総理らを乗せた車列が、北京郊外の「明の十三陵」の入り口に到着しました。参道の両側には、ラクダやゾウの巨大な石像が並んでいます。田中総理は、説明を聞きながら、石像を眺めました。映像には田中総理らが歩いて、敷地内や地下宮殿の中を見て回る様子が映されています。

16:44
田中総理らは迎賓館で休憩したあと、人民大会堂に移動。午後4時から3回目の首脳会談に臨みました。日中国交正常化の大詰めの交渉が行われたとみられています。

17:45
27日夜、毛沢東主席と田中総理ら一行が会見しました。にこやかに握手を交わします。
毛主席は田中総理に「喧嘩はもう済みましたか。喧嘩しないと駄目ですよ。喧嘩して初めて仲良くなれるものです」と話しました。
毛主席は「楚辞集注」全6巻を田中総理に送り、玄関近くまで田中総理らを見送りました。毛主席との会見は、国交正常化の交渉が大筋で決着したということを示すものでした。

20:22
翌日の新聞には、毛主席と田中総理の会見が大きく取り上げられました。

20:32
28日、田中総理ら一行は、北京の天安門を入ったところにある明・清時代の皇帝の住まいで宮殿などが立ち並ぶ故宮を訪れました。田中総理ら一行の様子は、テレビ中継されました。

21:01
田中総理らが故宮の中に入っていきます。数々の彫刻や美術品が所蔵されています。
田中総理らは研究者などの説明を興味深く聞いています。

22:18
4回目の両首脳会談です。共同声明案は、27日深夜まで行われた外相会談でほぼ固まり、この日は交渉妥結と、共同声明の案文が確認されました。

22:35
田中総理主催の答礼宴が、人民大会堂で開かれました。
田中総理に付き添われ、周首相が拍手で迎えられます。

23:22
田中総理は「私は、歴史の大きな流れの中で新しい展望を目指して進みたいと思います。今後、日中間にはなお解決すべき幾多の問題があります。しかしながら両国が互譲の精神と相互信頼に基づいて対処するならば、これは決して超克できない問題ではないと信じます。かくしてこれまでの両国間の不正常な状態に終止符が打たれ、両国国民の多年の願望である両国間の国交正常化が実現されるならば、これは両国の歴史に新たな一章を開くのみならず、アジアひいては世界の平和に貢献するものと確信いたします。」と述べました。

24:32
乾杯に使われた九谷焼の盃には、田中総理の故郷・新潟県の銘酒が注がれています。
田中総理は関係者のテーブルを回り、乾杯を交わしていきます。

25:14
周首相の挨拶です。周首相は、「国交正常化のために貢献し、命を犠牲にすることを惜しまなかった日本の友人に敬意を表したい」と述べました。

26:04
会場に君が代が流れます。

26:23
周首相は田中総理が日本酒の盃を持つと、「マオタイでやりましょう」と呼びかけました。2人はマオタイが入ったグラスで乾杯します。周首相もテーブルを回り、日本の関係者と乾杯します。

27:04
別れの宴が終了すると、田中総理と周首相は握手を交わします。2人は並んで会場をあとにします。

27:24
9月29日、人民大会堂の「東大庁の間」です。日本側は田中総理と大平外務大臣、中国側は周首相と姫外相が出席し、共同声明の調印式が行われます。
日中共同声明の前文には、「戦争状態終結と、国交正常化の実現は両国の歴史に新たな1ページを開く。日本側は、戦争で中国国民に重大な損害を与えた責任を痛感して深く反省し、復交三原則を十分理解するとの立場を再確認し、中国側はこれを歓迎する」と記されました。

28:45
署名された共同声明を手渡し、田中総理と周首相が握手を交わします。乾杯が行われ、多くの関係者が笑顔を浮かべています。

29:29
調印式を終え、記者会見が開かれました。
大平外務大臣は「共同声明の中には触れられておりませんが、日中関係正常化の結果とし、
日華平和条約は存続の意義を失い終了したものと認められるというのが、日本政府の見解
でございます。」と述べました。
会見の様子は日本国内でも中継され、街頭でテレビを見る人の姿も映されています。

30:13
映像は田中総理が、筆で何かを書く様子です。周首相から「言えば必ず信じる、行えば必ず
果たす(=言必信行必果)」と書かれた書が贈られ、田中総理は「信は万事のもと(=信為
万事之本)」との所信を書いて、返しました。

30:41
日中の国交が正常化されたあとの、中国国内の様子です。
朝の市場は多くの人でにぎわっています。百貨店や行き交う人たちの様子など、当時の市民生活の様子が写されています。
針を使った手術を受ける様子なども映されています。

35:41
映像は北京動物園です。ジャイアントパンダが映されています。

36:37
9月29日の北京空港です。田中総理らを見送ろうと、大勢の人たちが集まり、花の飾りを振っています。田中総理らは周首相の専用機で上海に向かいました。

37:19
上海に到着した、田中総理たち。民族衣装を着た人たちの歓迎を受けました。

37:35
田中総理らは周首相の案内で人民公社を訪れました。畑で市民が農作業をする様子を視察しました。

37:49
上海で一泊した田中総理らは、30日午前に空港に到着しました。5000人を超す人たちに見送られました。少女たちは歌いながら踊り、田中総理らを見送ります。

38:43
田中総理らと周首相らは次々に固い握手をし、言葉を交わしました。

39:17
田中総理らが飛行機に乗り込みます。飛行機は午前9時30分、上海を離陸しました。

39:54
機内では、田中総理一行が乾杯しました。

40:05
田中総理らは、午後1時に羽田空港に到着しました。
タラップの周りでは、到着を待つ人たちが集まり、日の丸を振っています。

40:43
多くの報道陣がカメラを構える中、田中総理が飛行機から降りてきました。
田中総理は右手を高く掲げます。
田中総理らは、出迎えた人たちと次々に握手し、笑顔で言葉を交わします。野党党首とも握手します。

41:50
田中総理は国民に向け、挨拶しました。「ただいま中国訪問から帰ってまいりました。日中
国交正常化は日中両国民の長い間の願いであり、アジアの平和の基礎を作るものでありま
す。この課題は、今日の国際情勢、ひいては大きな歴史の中でとらえ、いつか、誰かが果た
さなければならない仕事であったと信じます。」

42:49
田中総理は記者会見を開きました。
「日中の国交の正常化という一点だけを実現するために、精力的に誠意をもって会談をいたしましょうと。ま〜あの〜そういう誠意がこの会談を成功に導いたものだと思います。」

43:12
午後4時すぎ、田中総理は自民党の両議院総会に出席しました。共同声明について、党の最終的な了承を求めました。

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