【侵攻1年】空きテナントに続々と進出 制裁下のロシア経済で増す“中国の存在感”[2023/02/26 23:30]

中国が気になる動きを見せています。
侵攻1年の節目にウクライナの「和平案」を提示したと思えば、その一方で、ロシアへのドローン提供も報じられました。
ロシア国内を取材すると、市民生活の中でも存在感を増す中国の実態が浮かび上がってきました。

▽東部軍率いる大佐語る“ロシア軍の変化”
2年目に突入したロシアのウクライナ侵攻。東部・バフムトでは、今も激しい戦いが続いています。
「撃て」
最前線の東部の軍を束ねるチェレバティ大佐に最新の戦況を聞くことができました。
(ウクライナ東部方面軍 チェレバティ大佐)「(去年)6月からここで戦っています。東部方面軍は非常に大きな部隊で数万〜数十万の兵士がいます。東部での激戦は7カ月以上続いていて、1日50回以上の攻撃があります。」
この1年でロシア軍はどう変わったのか、大佐はこう指摘します。
(チェレバティ大佐)「ロシアは動員兵と軍事会社からの兵で、質の悪い兵しか残っていません。規律や軍事の知識は衰え、質が良い司令官も不足しているため、新しい戦術はありません。ロシアの大砲もそろそろ足りなくなるでしょう。」
一方、ウクライナには待望の戦車が到着しました。24日、ドイツ製の戦車「レオパルト2」4両がポーランドから引き渡されたのです。
(チェレバティ大佐)「4両自体はあまり戦況に影響しないが、数百両規模の戦車がNATOから供与されると決まっています。これは我々の反撃の重要な武器になります。プーチンは臆病。戦争始まって以来、核で脅してきたが、我々ウクライナも世界も恐れていない。」

▽“和平案”の一方でドローン提供情報も…存在感増す中国
ここに来て、存在感を増してきたのが“中国”です。侵攻から1年のタイミングに合わせて中国は、“和平案”を発表。「各国の主権と領土の保全は着実に確保されるべきだ」とウクライナに配慮した上で「対話こそがウクライナ危機を解決する唯一の方法だ」とロシア・ウクライナ双方に“停戦と対話”を呼びかけ、「中国は建設的な役割を果たしたい」と提言しました。その裏で、ロシアへの武器販売という情報も…ドイツのシュピーゲル誌は、「中国のドローンメーカーがロシア側との協議を進めており、ドローン100機を4月までに提供する方針だ」と報じました。
そのドローンは35kgから50kgの弾頭を搭載可能でロシアがウクライナへの攻撃に使用しているイラン製のドローンに似ているということです。
この報道について中国は、「紛争地域や交戦国への武器売却は一切行っていない」と否定。ゼレンスキー大統領は…
(ゼレンスキー大統領)「中国が正義の側、我々の側につくと信じたい。中国がロシアに武器を供与しないと強く信じたい。私は習近平国家主席と会うつもりです。両国に有益で世界の安全保障につながる。」

▽スマホも車も…“西側撤退”の穴埋める中国企業
一方で、西側諸国の経済制裁が続くロシア国内。
「かつては西側の高級ブランドショップなども多く並んだモスクワの目抜き通りです。西側による経済制裁が続いたことで、多くの店舗が撤退しているようです。テナント募集中の張り紙を多く見かけるようになりました。こちらもテナント募集中と大きく書かれています。かなり巨大なビルですが、テナント募集中の張り紙がしてありました。」
制裁は、長期的にはロシア経済にダメージを与えているものの、すぐに戦争を断念させるまでには至っていません。実際、モスクワの暮らしには、どんな変化が出ているのでしょうか。21歳の大学生に普段の買い物の様子を撮影してもらいました。まずは大好きだというヨーグルト。
(大学生(21))「私が一番好きなのはこの商品です。でもすごく高くなりました。以前は50〜60ルーブル(約90〜108円)今は77ルーブル(約139円)です。」
ヨーグルトは以前よりも値上がり。次に、バター。
「私はこれが好きです。脂肪分も成分も良いし味も良いです。値段は198ルーブル(約356円)ですがこのバターにしては高いです。数カ月前は100ルーブル(約180円)くらいで買えたからです。」
バターも値段が上がっていました。一部、 値上がりしたものもありましたが、店内はさまざまな商品で溢れていました。西側のメーカーが撤退しても、必要なものは一通り揃っているようです。
「“コカ・コーラ”の代用品はたくさんあります。全部似ていて値段もほぼ同じです。これは“コーラ・チェルノゴロフカ”で、値段は手ごろだし味も“コカ・コーラ”に劣りません。」
モスクワ市民に、経済制裁の影響について聞いてみると―。
「個人的には生活がものすごく悪くなったとは感じません。つまり私は大丈夫です。」
「閉店したところがあります。でも私たちには強い精神がありますから。」

制裁が十分な効果をあげていないように見えるその背景には、ある国の存在が指摘されています。こちらはモスクワにあるショッピングセンター。去年8月の映像では、西側ブランドの店舗が撤退し、案内板にはたくさんのバツ印がつけられていました。再び訪ねてみると、そこを穴埋めするかのようにー。
「新しくオープンした中国のスポーツウェアのお店です。」
新たに出店していたのは、中国のブランド、さらにこちらも―。
「こちら中国のスポーツ用品店です。まもなくグランドオープンと書かれています。」
今、ロシアでは、西側企業が撤退したその空白を、急速に中国の企業が埋めています。
「電器ショップですが、携帯電話の売り場はほとんどが中国製です。こちらも中国製、こちらも中国製。こちらもですね。さらにこちらも中国製です。」

各国がロシアへの輸出額を減らす中、実は中国は侵攻前よりも、さらに輸出額を増加させています。中国の存在感は、自動車産業でも―。
「モスクワ郊外にあるベンツの工場です。ロシアの企業が買い取り、今後は中国車を製造するとみられています。中国の国産車、紅旗(ホンチー)を製造するとみられています。」
侵攻後、メルセデス・ベンツなど、西側の自動車メーカーが相次ぎ、撤退を表明。ロシアの新車市場でシェアを伸ばしているのは、やはり中国です。この1年で、ヨーロッパメーカーが27%から6%に減らした一方で、中国メーカーは10%から38%に激増しています。
「中国製のタクシーです。これも中国車のハヴァルがタクシーとなっています。」
西側の自動車メーカーが撤退し、今後の整備や修理のことを考え、中国車を選ぶ人も多いようです。
Q. 中国の車ですか?
(中国車のタクシー運転手)「素晴らしい車だね。今は中国製のものが一番多いです。中国製はとても品質が高く便利で乗り心地が良いです。」
22日、プーチン大統領は、モスクワを訪問中の中国の外交トップ、王毅政治局委員と会談。習近平国家主席のロシア訪問を要請するなど、さらなる関係強化を確認しました。
「まもなくオープン予定の中国のビジネスセンターです。ロシアと中国の経済の交流拠点になると言われています。」
すでに高級ホテルが営業を開始。中国からのビジネス客などを受け入れる準備が進んでいます。
「すごい豪華です。去年の10月にオープンしたということですが、豪華ですね。」
全340室で、そのうち、スイートルームは39室あるそうです。敷地には中国式の庭園まで設けられていました。
Q. 宿泊客は主に中国人ですか?
(ホテルの従業員)「いろいろですが、中国の領事や外交官の方々がきます。」
ロシアと中国の経済的な結びつきが増々強まる中、経済制裁はどこまで効果を発揮できるのでしょうか。アメリカのバイデン政権は、24日、ロシアに対する追加制裁を発表。今回は“制裁逃れを手助けしている”として中国を含む、およそ90の企業も禁輸リストに加えられました。


2月26日『サンデーステーション』より

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