プーチン大統領の孤立がさらに深まるか−ゼレンスキー大統領 広島サミット参加の意味[2023/05/20 07:00]

ウクライナのゼレンスキー大統領がG7広島サミットに対面で出席することがわかった。
ゼレンスキー大統領にとって、アメリカのバイデン大統領やG7の首脳らに加え、アフリカやアジアなど新興国・途上国「グローバルサウス」に対して直接訴えることができる意味は大きい。
厳しい経済制裁下にあるロシアは、今回広島サミットに出席する「グローバルサウス」を頼みの綱としているためだ。

ゼレンスキー大統領がインドのモディ首相やブラジルのルーラ大統領、ベトナムのファム・ミン・チン首相といったロシアが拠り所にしたいグローバルサウスの首脳らに直接呼び掛ける姿が映し出されれば、ロシアにとって衝撃は少なくない。

■孤立深まるロシア「他の世界との隔絶 鮮明に」

クレムリンに近い関係者は、ゼレンスキー氏とインドやブラジルとの直接会談を警戒しつつ、「広島サミットは『レッド・ライン』になる。西側とロシアとの交渉の余地は完全に失われ、ロシアと他の世界との隔絶を鮮明にする」と述べる。

ゼレンスキー氏の広島サミットへの出席は、プーチン氏の国際的な孤立を際立たせることになる。
中国は中央アジア5か国の首脳を集めた「中国・中央アジアサミット」を主催し、G7への対抗勢力を着実に構築しているが、そこにプーチン氏の姿はない。

さらにプーチン氏は、ロシアが主導するBRICS(新興5カ国)の首脳会議への参加すら危ぶまれている。8月に南アフリカで開かれるが、ICC(国際刑事裁判所)による逮捕状発行を受けて、南アフリカがプーチン氏の出席に難色を示しているのだ。

関係者は「プーチン氏はできるだけ国際会議に出席し、国際的に孤立していないのだと示したいが、それができないでいる」という。

■存在感を増すインド・モディ首相

ロシア政府関係者は「今回の広島サミットでもG7の首脳らは、プーチン氏の動向を受けたG20への対応についても話し合うだろう」とみている。

この関係者によると、「プーチン氏は9月にニューデリーで開催されるG20首脳会議への出席を望んでいる」。一方で「ドイツ政府は、プーチン氏が出席するのであれば、首脳レベルでの出席は取りやめるとの方針を示している」という。
プーチン氏とも個人的に親しいモディ首相が、すでに1年以上続くウクライナ情勢をめぐりG20をどのような舞台にするのかも今後の国際情勢を大きく左右することになる。

■プーチン氏は国内の動きにも警戒が必要

広島サミットへのゼレンスキー大統領の出席で、ロシアの国際的な孤立が改めて強調されることでプーチン政権を支えるエリートたちに動揺が広がる可能性もあり、ロシア国内の動きにも注意が必要だ。

さらにロシアの反体制派も動き始めている。
現在服役中の反体制派指導者ナワリヌイ氏の陣営が18日に声明を発表し、ナワリヌイ氏の誕生日である6月4日に国内各地の主要都市でデモを行うよう訴えかけた。

独立系メディア「重要な物語」によると、ロシア大統領府が国内とウクライナの占領地の500以上の大学で秘密裏に行った調査では、ロシアの現状を最もよく表す言葉にとして44%が「危機」、32%が「衰退」と答え、3分の1以上の学生が国外への出国を希望しているという。

ロシアでは部分的動員に反対する昨年9月のデモが厳しく弾圧されて以降、半年間以上、大規模なデモは行われていない。ロシアの国際的な孤立が改めて強調される中で、6月にデモが行われれば、大きく広がる可能性もある。
プーチン大統領の内憂外患の状況は、一層深まっている。


テレビ朝日外報部

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