タイで「盆栽ブーム」 コロナ禍を機に…“若い愛好家”急増 超大物芸能人も虜に![2023/06/24 11:00]

微笑みの国・タイでは今、「盆栽」が若い世代を中心に大ブームになっています。今回は「盆栽の虜」で“ある超大物芸能人”を取材しました。タイで起きている「盆栽ブーム」。その人気の秘密を追跡しました。

■盆栽コンテスト “若い女性”や“親子”の姿も

タイの首都バンコク。この日、追跡取材班が向かったのは、まるで高級リゾートホテルのような自宅。駐車場にはヨーロッパの高級外車がズラリと並んでいます。さらに、盆栽がたくさんあります。

実はこちら、タイ屈指の盆栽愛好家の自宅。サッカー場並に広い庭には、およそ1000鉢もの盆栽があります。

これらの盆栽を育てているのが、ピシットさん(67)。看板を作る会社を経営しながら、盆栽協会の会長を務めています。

ピシットさん:「盆栽は友達みたいなものなんだよ。盆栽のおかげで寂しくない。認知症の予防にもいいしね」

そんなピシットさんの自慢の盆栽がこちらです。

ピシットさん:「これは『空中の森』という作品。まるで空中に森が現れたように見えるだろ」

自宅以外にも、盆栽専用の庭園を3つも所有しているピシットさん。「鳥居」を作るなど、日本へのこだわりがあるといいます。専門の従業員を雇い、合計3000鉢の盆栽を育てています。

去年8月、バンコク市内で開催された盆栽コンテストの映像。およそ500人の愛好家が参加しました。

盆栽の価値は、樹木の年齢「樹齢」と盆栽の形「樹形」などで決められます。

タイでは、特に「懸崖(けんがい)」という断崖絶壁で生き抜く樹木の姿を表現した「樹形」が人気だといいます。

参加した愛好家の中には、若い女性や親子もいます。

ピシットさん:「タイでは今、若い世代で盆栽を始める人が増えていますよ」

一体なぜ、若い世代で盆栽がブームになっているのでしょうか?

■所得向上 コロナ禍を機に…若い愛好家が急増

向かったのは、バンコク最大の市場。ここ数年で盆栽の露店が急増しているといいます。

盆栽を販売する店主(35):「(Q.よく売れている盆栽は?)小さい物がよく売れていますよ」

小さい盆栽は、安いものでおよそ400円。高いものでおよそ1万円。売られている盆栽はすべて、店主の女性が育てたものです。

店主:「私は根っこと幹が好きなんです。根っこの美しさと幹の力強さにこだわって育てています」

この日も、若い2人組の男性が訪れました。

客:「インターネットで盆栽を知って、きょう初めて本物を見に来ました」「小さくてきれいですね」

盆栽人気、かつては富裕層中心でしたが、近年の所得向上で広がり、コロナ禍を機に自宅で盆栽を育てる若い愛好家が急増したといいます。

■愛好家「心が落ち着く」「盆栽は生きる芸術」

次に向かったのは、バンコク市郊外の、ある邸宅。中に入ると、「盆栽ハンター」と書いてあります。

果たして、盆栽ハンターとは?

ここは日本から輸入された高級品の販売店。盆栽の王様ともいわれる「黒松」や「真柏(しんぱく)」などがあります。

日本でも人気の高い新潟県・糸魚川産の樹齢300年の「真柏」は、日本円でおよそ200万円。厳しい自然の中で生きる姿が表現されています。

実は、この店は週末には盆栽教室を開き、毎回5分で予約がいっぱいになるほどの人気店。参加者の多くは20代から40代の若い世代だといいます。

こちらが店主のオークさん(43)。

オークさん:「かなり伸びているので、余計な部分を自分で選んで剪定(せんてい)してみてください」

この日、女性たちが学んでいたのは盆栽の剪定です。

愛好家(40):「盆栽は心が落ち着くから大好き。例えば剪定をしていると周りの音が全く聞こえなくなるくらい無心になれるの」

こちらの男性に、盆栽を知ったきっかけを聞いてみると…。

愛好家(31):「ドラえもん」

こちらは、広告代理店勤務のミーンさん(32)。先日、この盆栽をおよそ80万円で購入したそうです。

ミーンさん:「盆栽は『生きる芸術』です。他の人が休日に映画を見に行くように、僕は休日に盆栽の世話をすると、心がとても充実するんです」

■超人気ミュージシャンも虜に…きっかけはコロナ

そして今回、追跡取材班は「盆栽の虜」になってしまったというタイで超有名な芸能人の元へ。この男性は一体?

アルバムの売り上げは累計500万枚。タイの伝説のロックバンド「CLASH」。そのボーカルを務めるバンク・プリーティさん(40)。

バンクさん:「テレビ朝日スーパーJチャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。バンク・プリーティです」

バンクさん自慢の盆栽園には、見事に管理された盆栽がおよそ50鉢。隣接する和室には掛け軸と盆栽。そして、日本の武将の鎧(よろい)と盆栽が置かれています。

日本が大好きだというバンクさんが盆栽を始めたきっかけは、新型コロナでした。

バンクさん:「歌手としてコンサートができない。友達にも会えないという中で、以前、京都の旅館で見たことのある盆栽を始めてみようかなと思いました」

そこで、日本の有名な盆栽園に連絡し、値段を聞くと…。

バンクさん:「日本円で『2000万円』と言われて。『OKOK、ダイジョブ、ダイジョブ』と断りました。メチャメチャ高かった」

諦めきれないバンクさんは、まずはタイの市場で安い盆栽を購入。インターネットで栽培方法などを調べ、独学で知識を身に着けていきました。

そして2年前、念願だった日本の「黒松」を購入しました。

バンクさん:「これは日本の有名な盆栽作家・木村正彦さんの作品です。樹齢は100年を超えています」

値段は「秘密」だそうです。

バンクさん:「良い盆栽は必ず正面に幹が見えるんだ。だから針金をかけて幹を見せるように枝を矯正していくのさ」

■バンクさん「出会いは運命」 今後の夢は?

時間を忘れ、盆栽に熱中してしまうというバンクさん。実は、盆栽との出会いが「人生の大きな転機になった」といいます。

バンクさん:「盆栽のおかげで、僕はアルコール依存症を克服できました。僕の命を救ってくれたんです。そして自分自身を見つめなおすきっかけをくれました。だから盆栽との出会いは運命だと思っています」

そして、今後の夢について語ってくれました。

バンクさん:「日本の伝統的な盆栽というスタイルは残しながら、タイの若い世代にも受け入れられるような盆栽を広めていきたいと思います」

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