【独自】「我々を世界に知ってほしい」「外国人は無条件解放」ハマス幹部インタビュー[2023/10/26 23:30]

イスラエル軍は26日、戦車が越境し、ガザ地区内で建物を砲撃している映像を公開しました。

イスラエル軍:「あなたたちの様子はちゃんと見えている。作戦は成功。よくやってくれた」

事態は新たなフェーズに入っていったのでしょうか。こうしたなか、レバノンにおけるハマス政治部門のトップ、アブドラハディ氏が報道ステーションのインタビューに応じました。

(Q.1つ、どうしても聞きたいことがある。10月の事態は、悲劇の引き金を引いたのはハマス側ではないのか。イスラエルの民間人を殺害し、多数を誘拐し、人質に取った、ハマスの行為は正当化できないのではないか)

アブドルハディ代表:「パレスチナ民衆と抵抗運動ハマスは、望んで作戦を行ったのではないと指摘しました。そうではなく、70年以上、占領者の政府と軍当局が続けている、シオニスト(ユダヤ民族主義者)の犯罪への対応として行ったのです。我々の民衆に対して続く敵対行為の結果、何万人もが殺されました。我々は占領には抵抗できるという国際法にのっとって、占領者に抵抗している。それだけでです。パレスチナの国民はどうすれば良かったのか。自分たちの土地に留まる権利と、その大義を抹殺されたこと、継続的な虐殺、何千人もの殺害と捕獲に対して、世界中に向かって声を聞いてもらう必要があった。今起きているように、自らの問題を世界中に、そして国際社会に対して掲示する必要があった。土地を占領された国民と、シオニスト政府の存在を、毎日虐殺を犯し、パレスチナ人に権利を与えることを拒否する強奪的組織があることを世界が知るために、抵抗しただけです。ガザを攻撃するシオニスト軍団がいる外壁を打ち破っただけです」

(Q.パレスチナの人たちが置かれた厳しい状況を、もっと世界に知ってほしいと。その意味では、10月7日の攻撃によって、批判はあるが“パレスチナ問題”の存在が、世界にもう一度、目を向けさせた。世界はもう一度“パレスチナ問題”を考えることになった。1つの狙いを達成したと考えますか)

アブドルハディ代表:「もちろんです。今、世界は誰もがパレスチナの側に立っている。その権利と自由、民族自決の実現、エルサレムを首都とする完全な主権国家の樹立を支持しています。パレスチナ人と、その子どもたちを虐殺し、ガザの街と生活を粉砕する犯罪者であり、国際法と人権を無視する敵が平和を望んでおらず、パレスチナ人に権利を与えるつもりがないことを、世界は理解しました。私たちの大義は今や、全てのアラブ・イスラム諸国に届いている。攻撃と虐殺が直ちに停止され、支援物資が届けられることを願います」

ハマスは現在、224人の人質を取っています。非人道的な行為として批判されるべきものですが、そこについては…。

(Q.拘束されている人々について、人道的な観点から、段階的な解放はあるのでしょうか。交渉取引の材料とするのでしょうか)

アブドルハディ代表:「ガザにいるゲスト(人質)は2種類。イスラエル人と外国人です。機会が訪れれば、外国人は釈放されます。軍事部門の指導部によると、条件交渉の対象にはなりません。イスラエル人については、仲介努力があって、アラブ諸国・非アラブ諸国がハマス指導部と連絡を取り合って、身柄をどうするか、相互理解を模索しています。外国人については、もちろん釈放します。“何かと引き換えに”ではありません。ゲストですから。侵略の停止・支援物資の搬入・組織的な破壊や殺りくの停止には『相互理解に達する用意がある』ありますが、明確なビジョンもありません」

(Q.イスラエルがレッドラインを超えない、いくつかの要素の1つとして、ガザにいる人質の存在があります。『外国人は無条件に解放する用意がある』と言いました。イスラエルの人たちについては、様々な交渉が行われています。どのような条件が整えば『イスラエル人を含めた人質の解放』『レッドライン阻止』になるのでしょうか)

アブドルハディ代表:「その問題は、ハマスの指導部と仲介者の間で話し合いがあり、問題の条件について話す立場にありません。仲介者の立場と調整を害することにもなります」

人質解放と地上侵攻は表裏一体との見方があります。アメリカのバイデン大統領は…。

(Q.人質の安全な解放が保証されるまで、地上侵攻を控える確約をネタニヤフ首相に求めたか)

バイデン大統領:「いいえ。『人質を安全に解放できるなら、そうすべき』とは伝えましたが、それは彼らが決めることです。私がそう要求したのではなく『解放が現実的なら、そうすべき』と指摘したまでです」

ただ、イスラエル軍は空爆だけでなく、地上からも、戦車などによるハマス施設への攻撃を一段階上げてきました。地上侵攻に向けた“地ならし”とみられています。イスラエルのネタニヤフ首相は、連日のように戦時内閣の閣議を開き、思いとどまる様子は全くありません。

ネタニヤフ首相:「これは“悪の枢軸”であるイランやヒズボラ・ハマスと、“自由と進歩の枢軸”の戦いである。我らは光の民で、奴らは闇の民だ。そして、光は闇に打ち勝つだろう」

(Q.地上戦という最悪の事態になった場合、ハマスと協力関係にあるヒズボラが、行動を起こすシナリオはありますか)

アブドルハディ代表:「もちろん、我々とヒズボラ間には全体的なやり取り・調整があります。敵シオニストによる、ガザへの敵対行為が始まった時、ヒズボラはレバノン南部で行動し、一定の防衛レベルで関与しました。ヒズボラ指導部は、ガザ地区で起きていることに対して、自らは中立ではないこと、敵がレッドラインを超えれば戦いに参入すると表明しました。ヒズボラ指導部は『レッドラインとは何か』と問われて、それに答えず、問題を曖昧(あいまい)なままとしました。しかし、ヒズボラ指導部の発言から分かるのは、それは全面的な地上侵入と、ガザ地区の抵抗に対する打撃、さらなる虐殺にかかっているということです。その場合に、戦闘はレバノン南部に拡大します。これをヒズボラと、その指導部はレバノン南部で戦端を開いて、戦争の範囲を拡大しないようにアメリカが送ってきた、全ての仲介者に伝達しました。従って、今激化しているレバノン南部の戦場、すなわちパレスチナの北は、いつでも全面戦争に発展し、ガザやレバノンでの戦争が地域戦争へと変わる可能性があります。その時、各指導部の判断は変わってくるでしょう。それは敵シオニストのガザに対する振る舞い次第です」

(Q.ハマスと関係の深いイランの行動も、私たちは注目しています。これ以上、戦闘が拡大した場合に、イランが戦線に参加することはあり得るか)

アブドルハディ代表:「“イランが、どの瞬間に直接軍事力を行使するのか”については、私は、イランが国として、そうするとは思いません。しかし、イランは多くのカードを有しています。敵がもしレッドラインを超えれば、戦火はパレスチナに留まらず、中東地域の戦争になり得ます。このメッセージは、敵シオニストに届きました。」

イランの外相がベイルート訪問したりシャトル外交を行いました。限度を超えてガザを蹂躙(じゅうりん)するようなことになれば“中立ではない”と、アメリカや西側諸国に警告を行いました。それはイランが直接軍事力を行使することなのかと問われると、イランのような国がそういうことはしないでしょう。イランには“抵抗”という多くのカードがありますので。例えば、イエメンからミサイルを飛ばすとか、イラクやシリアから攻撃を行うとか、様々な方法があります。イランはヒズボラと同じで、イスラエルがレッドラインを超えた場合は、これがガザへの地上侵攻の開始を躊躇(ちゅうちょ)している理由かもしれません」

ハマスの攻撃によって、イスラエル側に出た死者は1400人以上。一方で、報復によるガザ地区での死者は6000人を超えています。ガザの全ての人がハマスを支持しているわけでない。よく言われている話ですが、そのことについては…。

(Q.実際に人道危機に苦しんでいるガザ市民は、多くが支持していると考えますか)

アブドルハディ代表:「パレスチナ人は言及した通り、以前から何十年もの間、シオニストの虐殺で死んでいました。ガザ地区は17年前から生きる権利が奪われてきました。最低限の暮らしだけでした。パレスチナの全ての場所で何十年も、代償を支払い続けてきたのです。何十人何千人という殉教者たちが、侵略が続くなかで犠牲になりました。そして今日、パレスチナ人民は権利と自由と独立のために、自ら選んで代償を支払っているのです。もう一点、パレスチナ人民は今日、ガザ地区で前例のない侵略と虐殺にもかかわらず、殉教した息子を抱きかかえる父親も、殉教した娘を抱きかかえる母親も、パレスチナのためなら自分たちの犠牲は安いものだと表明しているのです。自らの土地を守りぬき、今なお抵抗運動を支持しているのです。なぜなら(抵抗運動が)自分の尊厳と誇りと権利を守っていることを知っているからです。その一方で、世界はパレスチナ人の権利に無頓着で、シオニストによる虐殺を止めることもしなかったのです。パレスチナ人の一人たりとも、作戦が始まってから今日まで、抵抗運動に反対する叫び声を上げた者はいません。逆に誰もが、自分は抵抗運動に身を捧げる、パレスチナに身を捧げると言っています。自分たちの土地に根付いているのであり、出ていくことなどあり得ない。最後の血の一滴まで。なぜなら、自分たちは自分たちの権利と土地を守っているのだからと。これが今日、抵抗運動を支持しているパレスチナ人民の決意です。そして最後に、ハマス指導部およびパレスチナ各派の指導部もまた、妻や子・兄弟・家族などの殉教者を差し出しているのです。他のパレスチナ人民と同じです。毎日のように、ハマスやその他、パレスチナ各派の幹部の家族が虐殺されたという話を聞きます。我々は皆、権利と大義と神聖なる領域を守るために、共に血を流しているのです」

終わりはあるのでしょうか。

アブドルハディ代表:「確かに女性や子どもが殺され、ガザは毎日空襲を受けていますが、人々は、パレスチナの公正な大義のために、自分自身を犠牲に捧げる用意があるとの決定を下しました。どのような民族であれ、その土地を奪われた時は、大変な犠牲を払わない限りは、権利を回復できません。彼らが何かをすればするほど、抵抗勢力が有利になると理解するなら、戦争を長引かせることは、より危険な情勢の展開を招くと知るでしょう。中東におけるアメリカと西側諸国の利益が被害を受けます。その時、彼らは停戦とガザの人々の虐殺からの、救済のための提案が実行される時が来たと気が付くのでしょう」


◆ハマス幹部 発言の真意は?

アブドルハディ氏へのインタビューで、番組が注目したポイントは2つです。

(1)外国人の人質は、安全が保証されれば無条件に解放し、イスラエル人の人質は、交換条件で話を進める。

(2)イスラエルがレッドラインを超えれば、ヒズボラも戦いに参入する。

この2点について、中東情勢や難民研究が専門の、慶應義塾大学法学部・錦田愛子教授に聞きました。

人質の解放はどうなっていくのでしょうか。

錦田教授:「国際的な批判のリスクが高いので、外国人の解放を優先するだろう。イスラエル人については、条件が整えば民間人を解放し、軍人は最後まで交渉のカードに使うのではないか」

また、地上侵攻に伴うヒズボラの参戦は、イスラエルにとって避けたいシナリオだといいます。

錦田教授:「イスラエルは現在、ガザ攻撃での過剰な暴力行使などで批判を浴び、国際的に孤立を深め、国内でも批判が高まっている状態。地上侵攻が始まれば、ヒズボラからイスラエルに向けたミサイル攻撃が一気に増加して、イスラエルは二正面作戦を強いられ、不利な情勢になる」

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