緊迫の南シナ海…中国念頭に協調 安全保障強化へ広がる連携 日米比も初の首脳会談へ[2024/04/10 23:30]

国賓としてアメリカに招かれた岸田総理は、日本時間11日未明、バイデン大統領との首脳会談に臨みます。

会談前日は、市内のレストランで、非公式の夕食会です。2人は、SNSにツーショット写真を揃って投稿しました。レストランへ向かう大統領専用車『ビースト』の車内での1枚。親密ぶりをアピールです。

日米首脳会談の翌日には、フィリピンを加えた初の首脳会談を行う予定です。

この3カ国とオーストラリアが、7日、南シナ海で共同訓練を行いました。特定の国を名指しはしていないものの、当然、中国が念頭にあります。

先月23日、フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海のアユンギン礁で、フィリピンの船が、中国海警局の船2隻から放水砲の直撃を受け、フィリピンはけが人が出たとして、中国に抗議しました。

このアユンギン礁には、1隻の古びた船がずっととまっています。25年前、フィリピン軍が実効支配を誇示するため、意図的に座礁させた軍艦『シエラマドレ号』です。

この船は、元々、アメリカ軍の揚陸艦として、第二次世界大戦中につくられました。中国と対峙する最前線として、フィリピン軍の兵士が、交代で駐留しています。駐留する部隊には、補給船で定期的に物資を届ける必要があります。中国が暴力行為を繰り返しているのは、こうした補給船に対してです。

南シナ海問題を棚上げし、中国に接近を図ったドゥテルテ前大統領。しかし、2022年に就任したマルコス大統領は、中国への警戒感を隠しません。

フィリピン・マルコス大統領:「フィリピンは、いま、地域の平和を損ない、安定をむしばみ、繁栄を脅かす行動の最前線に立たされています。わが国が直面する挑戦は手ごわいかもしれないが、わが国の決意も同じくらい固い。決して屈しません」

3カ国の首脳会談で、バイデン大統領は、アメリカとフィリピンの相互防衛条約が『シエラマドレ号』にも適用されると強調するとの報道も出ています。

アメリカとともに、そのフィリピンと協力関係を強める日本。岸田総理は、CNNのインタビューで、こう述べました。
岸田総理(7日放送):「決して対中、特定の国を対象とする協力ではないと思います。フィリピンが自らの領土領海領空、主権や領土を守ることは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化するうえで大変重要」

3カ国の協力について、中国は…。
中国外務省・毛寧副報道局長:「米国など一部の国は、南シナ海で協力という名で対立し、平和という名の筋肉を誇示し、秩序という名の混乱を生み出している。正真正銘の覇権主義的行動である」


■安全保障において、いま日本はどのような状況に置かれているのか。

日本の安全保障の基軸となるのは“日米同盟”です。この同盟を軸として、外交問題において、目的を同じ国である同志国などと協力して、安全保障を強化しようとしています。

日本・アメリカ・韓国の枠組みや、日米に加え、フィリピンを加えた3者の首脳会談が11日にありますが、これもその一つです。日本・アメリカ・オーストラリア・インド、4カ国の枠組み『QUAD』、そして、インド太平洋での中国の脅威を念頭にしたアメリカ・イギリス・オーストラリア、3カ国の枠組み『AUKUS』。8日には、この3カ国の国防相が「日本との協力を検討する」と声明を発表しています。

ワシントンのホワイトハウス前には、岸田総理に同行する千々岩森生記者がいます。

Q.日米首脳会談がまもなく始まりますが、首脳会談はどのような展開になりそうでしょうか。
千々岩森生記者:今回の岸田総理の訪米を俯瞰して見ますと、総じて“安全保障”の色彩が非常に強いものとなっています。具体的には、在日アメリカ軍と自衛隊の“指揮統制”の連携させていくことが確認される見通しです。これまで別々だった組織の一体化をより進めていくと。総理周辺は、「アメリカは、口では日本を守るという姿勢を示しているが、これからは口だけでなく、実際にアメリカ軍に関与させる。そうさせるシステムを構築していく。これが今回の狙いだ」と説明しています。

Q.今回、アメリカは岸田総理を国賓として待遇していますが、その理由はどういったところにありますか。
千々岩森生記者:バイデン政権が始まって、岸田総理で5人目の国賓となります。5人を見ると非常にわかりやすいです。1人目は、フランスのマクロン大統領です。マクロン大統領を除くと、岸田総理を含めたあとの4人は、アジア太平洋地域のリーダーです。韓国、インド、オーストラリア、日本。韓国は米韓同盟があります。3人目以降を見ますと、まさにQUADのメンバーです。バイデン大統領は、地域の仲間と結束して、アジア太平洋地域の問題に対峙する。特に、中国をにらんで対峙していくという方針は、岸田総理の外交方針とも一致するわけですが、裏を返せば、ここまで日本は踏み込むわけですから、リスクも背負う、そして、責任も背負うということにもなっていくと思います。

Q.おととしまで、北京で特派員をしていた千々岩記者から見て、こうした状況を中国側はどのように見ていますか。
千々岩森生記者:これは一言で言えば、非常に嫌がっています。中国共産党の幹部などと意見交換してきましたが、総じて口をそろえて言うのは「“アジア版のNATO”をつくる動きだ」といいます。日米同盟もそう、AUKUS、QUADもそう、「すべてアジア版のNATOに向けた動きだ」と同じ言い方をして、非常に強い危機感を強めています。

経済に目を向けると、中国の投資、マネーがどんどん中国から日本にシフトをしていく。こうした経済面を見ても、外交・安全保障面を見ても、中国は、そろそろ対話に臨んでくる。その一つの証左が、去年11月に、岸田総理と習近平主席が、1年ぶりに直接会談を行いました。その後、処理水をめぐっても、徐々に対話が始まるなど、中国の対話ムードというのが見えてきていますが、この動きが本物かどうか。本当に中国が対話を求めているのかどうなのか。これは、今後、慎重に見ていく必要があると思います。

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