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2024年8月3日 21:00

【池上解説】理由はお金の問題?ハリス氏が大統領候補になった意外なワケ

2024年8月3日 21:00

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今年の夏は本当に暑いですよね。そんな中先月アメリカのバイデン大統領が
選挙の4か月前という時期に大統領選挙からの撤退を決めました。日本でも大きなニュースになりました。一体なぜそんなことになったのでしょうか。そしてなぜ、ハリス副大統領が後継となったのでしょうか。ポイントを絞って解説してまいります。

【きっかけは言い間違い…バイデン大統領撤退のワケ】

バイデン大統領撤退の一番のきっかけとなったのは、なんといっても6月27日にCNNで行われたテレビ討論会です。バイデン大統領とトランプ前大統領の一騎打ちとなったこの討論会で、バイデン大統領は言葉を詰まらせ数秒間沈黙したり、トランプ氏に「何言ってるかわからない」とつっこまれるほど、意味不明ともいえる発言をしたのです。バイデン大統領の高齢への不安が高まりました。

そして決定打となったのが、先月11日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の式典での発言です。「並外れた勇気と決断力を持つウクライナの大統領にマイクを引き継ぎたいと思います。プーチン大統領です!」こう、ゼレンスキー大統領を紹介したのです。
すぐに間違いに気づいて言い直しましたが後の祭りです。その後にはハリス副大統領をトランプ氏と言い間違える場面もありました。戦争している国の大統領と支援している国の大統領を間違えるという、まさに致命的ともいえるミスによって、高齢への不安がさらに広がってしまったのです。

そんな時期に起きたのが、トランプ前大統領の暗殺未遂事件です。

トランプ氏

この事件によってトランプ支持者の結束が強まりました。トランプさんが一気に優位に立ったように見える、そうなると民主党の中からも「バイデンさん、この際もう撤退したほうがいいのでは?」という声が出てくるようになりました。最後は家族がバイデンさんを説得したとも言われています。投票日まで4か月を切った段階での撤退は極めて異例の出来事です。

そしてバイデン大統領が撤退を決めた理由の一つが自分の党である民主党を守るため、と言われています。

【なぜ?バイデン氏撤退を民主党が強く望んだワケ】

選挙での大敗を食い止めたい

実は今年の11月には大統領選挙と一緒にアメリカ議会の上下両院の選挙も実施されます。
現在のアメリカ議会はこのような勢力図になっています。

議席数

上院はかろうじてバイデン大統領の民主党が勝っていますが、下院はトランプさんのいる共和党が多数派です。

もし大統領の椅子だけでなく、上下両院もトランプさんの共和党にとられてしまったら、法案も予算案も共和党の思い通りになってしまいます。民主党の意見が一切通らなくなってしまいますよね。そうなってしまうと民主党としては恐怖です。そして立候補する議員からしてみれば、人気のないバイデン大統領とセットで選挙運動をしたら自分たちも落ちるかもしれない。そうなれば「バイデンさん撤退してください」という人たちが増えてもおかしくありません。

【不人気だったハリス氏がなぜ後継候補に?】

ではなぜ後継者にハリス副大統領が選ばれたのでしょうか。副大統領としてのハリスさんは実はそんなに人気のある人ではありませんでした。不法移民の問題を担当した時もなかなかうまくいきませんでした。そんなハリスさんが後継者に選ばれた大きな理由の1つにお金の問題があると言われています。

アメリカの大統領選挙は多額の資金が必要です。基本支持者からの献金で賄われるわけですが、バイデン陣営が集めた資金は6月末時点で9600万ドル、約150億円にも達していました。
このお金は「バイデン大統領とハリス副大統領」を候補として集められたものです。つまり、バイデンさんでもハリスさんでもない人が候補者となったら、このお金は使えなくなってしまう可能性があったんです。ハリスさんであればバイデンさんさえOkと言えばそのままこのお金を使うことができます。投票日まで4か月を切った段階ですから、他の選択肢はなかなか難しかったと言えるでしょう。

カマラ・ハリス氏

そしていざ候補者としてみたら、民主党支持者の間では「ハリス旋風」と言われるものが起きています。またハリスさんには黒人かつアジア系、そして初の女性大統領としての期待もかかっています。若い人や女性、黒人からの指示を集めてきています。トランプさんともいい勝負をするのではないか、とみられています。

池上彰さん

番組ではこれからもアメリカ大統領選挙の続報、そして仕組みのことなど詳しくお伝えしていきます。今回の大統領選挙は最後までかなりの接戦になると見られています。是非これからも注目していただければと思います。

(池上彰のニュースそうだったのか!! 8月3日OAより)