トランプ関税をめぐる、2回目の日米交渉が行われ、赤沢大臣が「突っ込んだ議論ができた」と話しましたが、その詳しい内容が分かってきました。
今回の関税交渉では、日米の溝が浮き彫りとなりました。
そして、自動車の『部品関税』が発動し、業界に影響が広がっています。
■日米関税交渉 米側「自動車は対象外」溝 浮き彫りに
日米の関税交渉の舞台裏を見ていきます。
日米関税交渉の第2ラウンドが行われました。
5月1日、ワシントンで行われた日米の関税交渉です。
参加したのは、日本側は赤沢経済再生担当大臣、アメリカ側はベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア通商代表部代表です。
「非常に突っ込んだ話ができた。早期に双方の利益となる合意を実現できるよう前進できた」と話しました。
関税交渉での日本側の要求です。
赤沢大臣は自動車などの関税を含めて、すべて見直すようアメリカ側に要求しました。
日本が見直しを要求しているのは、
・自動車への関税 25%、
・鉄鋼・アルミへの関税 25%、
・一律 10%かかっている相互関税と、今は停止中ですが、上乗せ部分の14%です。
交渉でアメリカ側は、見直すのは相互関税の上乗せ部分のみとし、
自動車などへの関税は対象外との考えを示しました。
「日本だけ特別扱いしない」と通告したということです。
交渉の様子です。
「ベッセント氏らの対応は硬いままで、閣僚レベルでは決められないと分かった。日米間の隔たりは今も大きい」
「日本側は自動車メーカーは世界一の存在感と競争力がある唯一に近い存在で、規模縮小は容認できない。一方、アメリカ側は関税で強い圧力をかければ、企業は政府に従い米国内の生産が増えると単純に考えている」
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■自動車部品の関税が発動 日本の基幹産業に打撃 現場は…■自動車部品の関税が発動 日本の基幹産業に打撃 現場は…
自動車産業に追い打ちをかける新たな関税です。
新たな追加関税です。
5月3日、自動車部品への追加関税が発動しました。
エンジンなどに25%かかります。
4月3日には自動車に対して、25%の追加関税が発動済みです。
条件付きで軽減措置もあります。
日本の部品工場が部品を輸出して、米国内で自動車が製造されて売られた場合、軽減措置の対象になります。
軽減措置の恩恵がないケースもあります。
日本の部品工場が部品を日本国内の企業に納品した場合です。
日本の工場で組み立てた車を輸出するため、車全体に25%の関税がかかります。
アメリカで販売される自動車は、どれぐらい現地で生産されているのでしょうか。
ホンダが70.6%。
日産、スバル、トヨタは50%台。
マツダは20.8%。
三菱自動車はアメリカ工場を撤退しているので、0%です。
アメリカでの生産比率が低いと、部品関税の軽減措置の恩恵が小さくなります。
日本にとって自動車は基幹産業です。
自動車の組み立て工場や部品工場がある都道府県は26。
自動車関連産業の就業人口は558万人で、全就業人口の約8%です。
そのうち、自動車の部品や付属品の製造業は66万8000人です。
部品関税について、製造企業の声です。
自動車のエンジンや変速機などを作っている旭鉄工です。
日本国内のメーカーに部品を納品していて、軽減措置の恩恵はないといいます。
「完成車への関税を下げてほしかったので、だいぶがっかり」したといいます。
■トランプ関税 米国企業にも悪影響“業績悪化”に“雇用削減”も
アメリカの企業にも影響です。
自動車産業では、アメリカの自動車大手、ゼネラル・モーターズが関税政策で最大約7000億円の影響が出る可能性があり、業績の見通しを下方修正しました。
ほかの産業にも影響は及びます。
iPhone(アイフォーン)などを販売するアップルです。
関税政策の影響で4月から6月期で、約1300億円損失の見通しです。
輸送業では、国際貨物輸送のUPS(ユーピーエス)は、関税政策による貿易縮小を見越して、従業員2万人の削減を発表しました。
■加藤財務大臣 新たな交渉カードに“米国債”!?発言の真意は?
加藤財務大臣が『新たな交渉カード』について言及しました。
「交渉のカードをすべて盤上に置きながら議論をするのは当然。(米国債は)交渉のカードとしてはあると思う。切るか切らないかは別の判断」とコメントしました。
この発言にアメリカメディアが、放送1時間後に記事にしました。
「5月2日に加藤財務大臣が交渉を有利にするために、日本が保有する膨大な米国債に触れる可能性をほのめかしたことで、交渉において新たな局面が浮上した」
日本が保有する米国債です。
2025年2月時点で、約162兆919億円分の米国債を日本は保有しています。
これは全体の約13%で、国・地域別でみると最も多い額になります。
トランプ大統領に焦りも見えます。
株価や通貨だけでなく、米国債も、トランプ関税の発表を受け『トリプル安』となっていますが、加藤財務大臣は、追加相互関税の90日間延期の理由について、金融市場では『トリプル安』が背景との見方も出ていると指摘します。
■日米関税交渉 トランプ氏 石破氏「急いでいない」本音は?
今後のスケジュールです。
5月2日から日米の事務レベルで議論が行われています。
5月中旬以降、閣僚級が集中的に協議をする予定です。
6月にはカナダでG7サミット。
7月上旬に相互関税の上乗せ分14%の猶予期限を迎えます。
7月20日には、参院選の投開票の見通しです。
トランプ大統領と石破総理の考えです。
「私は彼らほど急いでいない。我々は有利な立場にいる」
「国益を譲ってまで、早く妥結をすればいいというものではない」
「部品関税の軽減措置は、整合性がなく、トランプ政権に『焦り』がみえる。アメリカ国内の混乱を収めたいトランプ政権に対して、石破政権は助け舟を出したいが、参院選への影響も考えると、自動車関税の撤廃は譲れない」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月5日放送分より)