アメリカと中国による初めての関税協議が行われました。
ロイター通信によると、中国の何立峰(か りつほう)副首相は、貿易協議の枠組みを設けることで米中両国が合意したと明らかにしたということです。
米中の関税戦争はどうなるのでしょうか。
また、トランプ大統領は関税措置をめぐる交渉でイギリスと合意したと発表しましたが、日本への交渉の影響についても見ていきます。
■トランプ関税 米中が初協議「大きく進展」145%vs125%の行方
日本時間5月12日未明、スイスで2日間行われた、米中協議が終了しました。
関税が発動されてから、初めての対面交渉でした。
アメリカは中国に対して関税を145%、中国はアメリカに対して関税を125%かけています。
「アメリカと中国の間で非常に重要な貿易交渉が大きく進展した」
「対等な協議を通じ、中国とアメリカは、隔たりの解決に向けて、重要な一歩を踏み出した」
「貿易協議の枠組みを設けることで米中両国が合意した」と明らかにしたということです。
「我々がいかに早く合意に達することができたか理解することが重要だ。中国との隔たりは思ったほど大きくなかった」
「私たちはとても熱心に中国のタフな交渉担当と話し合った。とても建設的な協議ができた2日間だった」
合意の内容について、詳細は5月12日に発表するとしています。
トランプ大統領には報告済みだと明らかにしました。
アメリカの現状は、対中貿易で約42兆8277億円の赤字です。
中国からアメリカに輸出されている品目トップ10です。
スマートフォンが一番多く、6兆円近く輸出されています。
ノートパソコンやリチウムイオン電池など、電子機器が続き、4番目に多いのが三輪車など玩具。
ほかに医薬品なども含まれています。
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■米中関税交渉 「まるでAI」中国側交渉担当の素顔■米中関税交渉 「まるでAI」中国側交渉担当の素顔
中国側の交渉担当者は習近平国家主席の最側近です。
何立峰(か・りつほう)副首相です。
・習近平国家主席の最側近。
・40年近く前に習国家主席が福建省で副市長を務めているころからの部下。
・習国家主席の意向で、異例の出世を果たしたといわれています。
習近平国家主席の結婚式にも出席した仲だといいます。
何立峰副首相はどんな人物なのでしょうか。
「典型的な地方官僚。彼の最優先事項は習近平氏の指示を実行すること」と評価。
「チャットGPTと話しているようなもの」だといいます。
考え方については、何立峰副首相は、外国人実業家との会談で、中国の輸出主導型の成長戦略を推進すると主張しているということです。
「中国の雇用創出に重要な貿易黒字に関して、態度を軟化させるとは考えにくい」とみています。
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■初協議前 トランプ氏は揺さぶり発言!?中国の反応は■初協議前 トランプ氏は揺さぶり発言!?中国の反応は
トランプ大統領は交渉直前、揺さぶりともとれる発言をしています。
「私はきょう80%という数字を出した。どうなるか見てみよう」
「摩擦が起きるのは正常だ。懸念について意思疎通を保っている」
「中国の利益を執拗に侵害するなら、断固として反撃し、最後まで付き合う」と強気の姿勢も見せました。
「中国は不動産バブルがはじけて経済が悪化しているので、早く妥協した方が良いが、『圧力に屈した』と見られたくない。トランプ大統領は『80%に引き下げ』など、早く成果を出したい焦りがみえる」
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■トランプ関税 合意一番乗りはイギリス 早期決着の背景■トランプ関税 合意一番乗りはイギリス 早期決着の背景
トランプ関税交渉の合意、一番乗りはイギリスです。
5月8日、トランプ大統領とイギリスのスターマー首相が電話会談を行いました。
ここで関税交渉に合意。
イギリスが合意の第1号となりました。
合意内容です。
アメリカはイギリスに対して
・自動車関税27.5%を年間10万台まで10%に引き下げ
・鉄鋼・アルミ関税25%を0%に
・相互関税10%は撤廃せず
一方、イギリスはアメリカに対し
・アメリカ製品への関税5.1%を1.8%に引き下げ
・アメリカ産農産物や牛肉の輸入拡大
・ボーイング社製航空機1兆4500億円相当を購入すること
で合意しました。
アメリカが輸入しているイギリス車です。
2024年、約11万台がイギリスからアメリカに輸入されました。
輸出されているイギリス車は、ロールス・ロイスやベントレー、ジャガーなど高級車が中心となっています。
なぜ自動車関税が引き下げとなったのでしょうか?
アメリカが2024年輸入した自動車約769万台のうち、イギリス車はわずか1.4%ほど。
自動車関税を引き下げても影響がないと判断したものとみられます。
「(ロールス・ロイスは)非常に特別な車で生産台数も限られている。数百万台の車を製造するモンスター級の自動車メーカーではない」
アメリカの貿易収支です。
対イギリスの貿易収支は約1兆7190億円の黒字。
一方、対日本の貿易収支は約9兆9265億円の赤字となっています。
「イギリスは、トランプ政権にとって最も合意をしやすかった。自動車関税を引き下げても相互関税の10%は残すことがわかったので、日本も同じであれば、これは相当に厳しいと覚悟した方がよさそう」
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■日米の関税交渉はどうなる?イギリス指標に?違いは?■日米の関税交渉はどうなる?イギリス指標に?違いは?
イギリスの合意を受け、日本も合意となるのでしょうか。
日米の関税交渉では自動車関税は対象外でした。
アメリカ側は、見直すのは相互関税の上乗せ部分のみとしていました。
日本に課されている関税は、
・自動車関税 25%
・鉄鋼・アルミへの関税 25%
・相互関税の10%と上乗せ分14%です。
「日本だけ特別扱いしない」としていました。
「我々は撤廃を求めている。ゼロを目指していくべきだ。(イギリスの10%は)1つのモデルではあるが、10%ならそれでいいやというようなことを今申し上げるわけにいかない」
2024年の対アメリカの自動車輸出です。
日本車は約137万台で大衆車が中心で、
ハイブリッドカーなどが好調だということです。
一方、イギリスは約11万台で高級車が中心となっています。
「イギリスとは特別な関係にある。今後こういう車の取引(自動車関税引き下げ)はない」
「イギリスの先例を参考にすると、農産物の輸入拡大の計画を示して相互関税を10%あるいはゼロ近くまで下げる。自動車は下がりそうにないので、裏技として『日本車の低関税率での輸入枠』を認めてもらう方法はあるのでは」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月12日放送分より)




















