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ABEMA NEWS

2025年8月11日 11:01

「絶対的な弱者に向けて攻撃する」歪んだ攻撃性と自己顕示欲 世界で広がる“動物虐待”の闇 数千人参加のネコ虐待グループが残酷な動画を公開

2025年8月11日 11:01

「絶対的な弱者に向けて攻撃する」歪んだ攻撃性と自己顕示欲 世界で広がる“動物虐待”の闇 数千人参加のネコ虐待グループが残酷な動画を公開
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 いま、“動物虐待”のオンラインネットワークが、世界的な問題になっている。ネコを拷問・殺害する様子を撮影した画像や動画を、オンラインで共有・販売する国際ネットワークのメンバーがイギリスにいると判明。メンバーは数千人いる模様で、イギリスBBCは、中心的なアカウントの背後にいる人物を「東京在住の27歳男性」だと報じている。

【映像】BBCで伝えられたネコ虐待のニュース

 発端は中国発信のネコ虐待コンテンツとされ、実際に虐待に手を染める人が増えたという。日本でも動物虐待事犯の検挙件数が、この10年で約3倍になっているというデータがある。なぜ動物虐待が起こり、画像や動画を共有・販売するのか。『ABEMA Prime』では専門家と考えた。

■世界的に広まりつつある“動物虐待”

BBCの報道内容

 8月4日のBBC報道によると、猫を拷問する動画を共有・販売する国際オンラインネットワークが存在し、暗号化されたメッセージ上で数千人が参加。中には東京在住・27歳男性もいる。ロンドン北西部の公園で殺された2匹の子猫が、切り開かれ吊るされている状態で見つかり、5月に17歳の男女2人を逮捕した事例もある。

 BBCの報道によると、グループ内で投稿・販売している映像は「猫を溺死させる」「ケージに入れ餌を与えない」といったものから、猫を感電死させる内容まで存在する。苦痛を長引かせるため「蘇生させるにはこうやって感電させるといい」などのチャットも書き込まれているという。また、どれだけ早く殺すことができるか競う“猫100匹殺害”コンテストもあるそうだ。

 NPO法人「どうぶつ弁護団」理事長の細川敦史弁護士は、「中国で虐待されている情報はSNSで見ていたが、外国の話のため不確かだった。ただ報道や警察の捜査もあることから、それなりに確かだろう」との見解を示す。「中国では自分のペットや野良猫への虐待は処罰されないと聞いている。だからこそ、中国で虐待動画が製造されやすい。アメリカやイギリスでは、虐待そのものではなく、他人が作った動画でも上げると処罰対象になる。アメリカは動物虐待にフォーカスしているが、イギリスは有害動画をまとめて規制する中に虐待を入れている」。

 犯罪心理学者で東京未来大学教授の出口保行氏は、「小動物を殺害し、それが人に脅威を与えるのを楽しむ“負の循環”が、我が国の中でも始まってきている」と危惧する。「小さな頃に虫を殺すのは当たり前だ。シリアルキラー(連続殺人犯)も幼少期のそうしたエピソードにたどり着くが、かといって幼少期にそうしていた人が殺人鬼になるわけではない。子どもは生命の価値がわからず殺してしまうが、途中で『命は大事だ』と学び、殺人につながることはほぼない」。

 しかしながら「ずっと続いてしまうタイプもいる。生命の大切さに気付かないままエスカレートしてしまうと、虐待を起こしやすい」といい、「攻撃性は誰にでもあるが、社会の中で抑圧を求められる。犯罪者の心理分析を約1万人やってきたが、時代によって攻撃性の表現が変わっているのは確かだ」と指摘する。

 とはいえ、「攻撃性も注目ポイントだが、歪んでいる自己顕示欲のほうがよほど強い」とも語る。「放火も最初は、人里離れたところで火を付けて、だんだんと人に近づいていく。普段は社会で何も評価されていないのに、いきなり『すごいことをやっている』と注目される。自己顕示欲を徐々に満たす中で、行動がエスカレートすると、事件につながる」。

■どうすれば動物虐待は減らせるのか…心理を考える

動物虐待、日本人の逮捕事例も

 過去には動物虐待から、人への犯罪に至った事例もある。1997年に小学生2人を殺害した通称「酒鬼薔薇聖斗」は少年時代、ネコなどに動物虐待を行っていた。2001年に小学校へ侵入し児童8人を殺害した男は、動物に火をつけて殺傷していた。また2004年に小1をわいせつ目的で誘拐・殺害した男も、過去に動物虐待を行っていた。

 細川氏は虐待防止の活動を行っているが、「どうしても対症療法的なことしかできない」のだそうだ。「虐待が行われているのではないかという通報が、全国で年間200〜300件ある。その中で証拠があり、刑事告発できるものは、警察に捜査してもらう。われわれには捜査権限がないため、獣医師の協力を得つつ、弁護士の知見を使って、警察に適切につなぐことに力を注いでいる」。

 虐待を行う人物像について、出口氏は「社会の中で受け入れられていない思いが強い。被害意識や疎外感を覚え、どんな行動をしても『自分は悪く思われている』と感じる。その不満から絶対的弱者に向けて攻撃するパターンばかりだ」と分析し、「『失うものがなく、捕まっても仕方がない』という、いわゆる“無敵の人”が生まれると、虐待がエスカレートして、歯止めがきかない時代になる」と話す。

 そして、「誰かが話を聞くことが重要だが、いまの世の中は『出る幕じゃない』『お節介かな』と遠慮しがちだ。かつては皆お節介だったが、どんどん抑制されていて、はみ出したままの人がいる。それを引き入れられるかで、かなり違ってくる」とした。

 動物虐待以上に発展する可能性はあるのか。細川氏は「似たような行為をやることで、スカッとして、本質的なところまで踏み込まないという考えがある一方で、やることによりエスカレートするパターンもある」と話す。出口氏は「攻撃性は誰にでもあって当たり前で、なければ困る。ただ、適正な方向に出さないといけない。歪んでいる方向で出すのは絶対にダメだ」と断言する。

 動物虐待を目にしたらどうすればいいか。まずは見つけた状態を写真・動画撮影し、証拠を保全する。そして、警察の生活安全課や動物愛護センター、自治体の環境衛生課などに通報する。どうぶつ弁護団は、「事件を発見、認知した人が警察へ捜査のきっかけを与えることが重要」としている。 (『ABEMA Prime』より)

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