台湾で初めて中国による「浸透工作」などを正面から扱ったテレビドラマの放送が始まった。中国による「浸透工作」とは、一体何なのか?
台湾統一めざす中国の戦略
まずは、中国の「浸透工作」を警戒する頼清徳政権の動きについて見ていく。台湾では先月、異例のリコール投票が行われた。
台湾各地の市民団体は“親中路線”の国民党の議員が、台湾で影響力拡大を図る中国の「浸透工作」に加担しているとして、リコール=解職請求を行っていた。これを支援したのが、台湾の頼政権だ。
先月26日、国民党の議員24人を対象にしたリコールの是非を問う住民投票が行われるという異例の事態となった。
全てのリコールが、否決される結果となったが、頼政権が中国の「浸透工作」を強く警戒していることがうかがえる。
そんな中国による「浸透工作」はいつから強まったのか?
台湾メディア「天下雑誌」によると、中国による台湾への「浸透工作」は“親中路線”を掲げる国民党の馬英九氏が政権交代を果たした2008年頃から強まったという。
では具体的にどういった方法で“浸透”をはかってきたのか?
例えば、中国が支援する台湾の旺旺(ワンワン)グループが2008年に台湾の大手メディア「中国時報文化グループ」を買収した事案がそれにあたるという。
買収後、これらのメディアでは親中派の馬英九総統を支持する内容や中国に肯定的なニュースが増えたという一方で、人権抑圧など、ネガティブなニュースは報じられなくなったという。
一方、与党・民進党寄りの台湾メディア「自由時報」によると、奨学金や就職の面で優遇するなど、台湾の若者を中国に呼び込む動きを加速させているという。
さらには、文化交流として中国ツアーも行われているという。これは台湾の優秀な大学生を中国に招待し、北京や長沙、広州といった複数の主要都市をめぐらせて中国の偉大さをアピールするツアーで、食費や宿泊費など費用は中国側が負担するものだという。
このような「浸透工作」を強化しているのではないかという指摘に対して中国政府はどう答えているのか?
中国・外務省の毛寧報道局長は「台湾は中国の一部だ。祖国の必然的な統一の勢いを変えることはできない」と答えている。
台湾当局“中国人妻”を警戒
頼政権は、中国大陸側から台湾に移り住む「中国人妻」が「浸透工作」を行っていると警戒している。
中国大陸側から台湾に移り住む、いわゆる「中国人妻」について、中国と台湾はそれぞれどう思っているのだろうか?
中国共産党傘下の団体の機関紙「中国青年報」によると、中国側は「両岸(りょうがん=中台)の婚姻は融合と発展の素晴らしい成果であり、両岸が1つの家族である表れ」だとするなど、前向きな立場をとっているという。
一方、台湾側は、近年の中国共産党の対台湾戦略として「入島(台湾に入れ)、入戸(家庭に入れ)、入脳(脳に入れ)、入心(心に入れ)」といった方針が掲げられているとして、婚姻でも台湾に浸透を図っていると警戒している。3月には「統一工作の背景がある中国人の訪台を厳しく制限する」という新たな方針を示し、中国人妻が台湾から退去させられる事例も報告されているという。
台湾当局による中国人配偶者への厳しい対応について、5月、中国側は「強い遺憾と憤りを表明する。これは人道を顧みない行為」だと台湾側に強く抗議している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年8月13日放送分より)