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2025年8月21日 18:00

印パ停戦の功績を主張するアメリカ インド側は猛反発 蜜月関係一転…米印関係が悪化

2025年8月21日 18:00

印パ停戦の功績を主張するアメリカ インド側は猛反発 蜜月関係一転…米印関係が悪化
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 トランプ大統領がインドとパキスタンの紛争に関して、自身が仲介したと繰り返し述べています。しかし、この発言にインド側が反発、アメリカとインドの関係が悪化する事態となっています。

蜜月関係一転 急激に悪化する米国とインド

 アメリカとインドの関係が急激に悪化しています。去年11月、アメリカの大統領選でトランプ氏が勝利宣言した直後、インドのモディ首相はXに両者の蜜月ぶりを示す写真を掲載し再選を祝福していました。

 そして、トランプ大統領の就任翌月の2月にはモディ首相が訪米。外国首脳として対面での会談は4番目となる首脳会談を行いました。この時も、互いのリーダーシップを称賛し、アメリカ産石油などの輸出拡大で合意するなど非常によい関係でした。

背景にインド・パキスタン武力衝突

関係悪化の要因は印パの武力衝突?
関係悪化の要因は印パの武力衝突?

 それが一転悪化していきます。関係悪化の要因はインドとパキスタンの武力衝突だといいます。

 そもそもインドとパキスタンはカシミール地方の領有権を巡って、これまでも度々武力衝突を起こし、多数の死者も出ていました。カシミール地方とは、インドの北、パキスタンの北東に位置しています。

 そして4月下旬にも、カシミールのインド実効支配地域で、パキスタンを拠点とする武装集団による観光客への銃撃テロが発生。このテロをきっかけに5月、インド・パキスタンが武力衝突、核保有国である両国が攻撃を応酬する事態となり、ロイター通信によると、民間人の死者だけでも両国で66人に上ったということです。

 ではなぜこの印パの武力衝突が、アメリカとインドの関係を悪化させることになったのでしょうか?

 カシミール問題に関して、実は1972年インドとパキスタンの間で結ばれた「シムラ協定」というのがあります。この協定にはカシミール問題は「二国間問題」という規定があるため、インドは国連や第三国の関与を認めないという立場です。

 しかし、5月10日、トランプ大統領はSNSで「アメリカの仲介でインド、パキスタン両国が即時かつ完全な停戦で合意した」と表明。実際、10日にインド、パキスタン両政府も停戦合意を発表しました。

アメリカとインドの関係悪化の要因に
アメリカとインドの関係悪化の要因に

 パキスタンはアメリカに謝意を伝え、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦しました。

 一方のインドは、アメリカによる仲介を否定しあくまでも停戦は二国間で行ったと主張。

 しかし、その後もトランプ大統領は、アメリカの仲介で停戦したと繰り返し主張します。これがアメリカとインドの関係悪化の要因となりました。

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追い打ちかけるトランプ関税

アメリカ側はインドに高関税示唆
アメリカ側はインドに高関税示唆

 そうしたなか、インドは当初、関税協議でも早期締約をするのではとの見方もありましたが、実際はそうはならず、高関税を突き付けられている状況です。

 6日、トランプ大統領はロシア産の石油を輸入しているとして、インドに対し二次関税25%を上乗せする大統領令に署名しました。今月27日から発動される見通しで、これまでの相互関税25%と合わせ、関税が50%となる見通しです。

 一方、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦したパキスタンについて、アメリカは関税率を当初の29%から19%に下げました。

中国との関係深めるインド

 アメリカとインドの関係が悪化するなか、インドと中国が接近しています。

米印関係悪化のなかインドと中国が接近
米印関係悪化のなかインドと中国が接近

 19日、中国の王毅外相と会談したモディ首相。2020年の軍事衝突で悪化した両国間の関係改善を図り、両国間の直行便の再開などで合意しました。

 会談後、モディ首相はXに「両国間の安定的で予測可能かつ、建設的な関係は、地域と世界の平和と繁栄に大きく貢献するだろう」と投稿。

 朝日新聞によると、モディ首相は訪日後の31日から7年ぶりに訪中し、中国で開催の上海協力機構サミットに出席する見込みです。

ロシアとの関係も深めるインド

インドはロシアとの関係も深化へ
インドはロシアとの関係も深化へ

 そしてインドは、ロシアとの関係も深めています。15日の米露首脳会談が行われた後、18日、ロシアのプーチン大統領はモディ首相と電話会談を行い、ウクライナ問題の長期的な解決の見通しについて協議しました。

 モディ首相はXで「友人であるプーチン氏からの電話と、アラスカでのトランプ大統領との米露会談についての見解の共有に感謝する」と投稿しました。

プーチン大統領が年内にもインドを訪問する計画がある
プーチン大統領が年内にもインドを訪問する計画がある

 またインド外務省発表によると、インドのジャイシャンカル外相は、21日までロシアを訪問。ラブロフ外相と会談する予定で「長年の両国の特別な戦略的パートナーシップをさらに強化するのが目的」だといいます。

 そして、プーチン大統領は年内にもインドを訪問する計画があり、実現すれば2021年12月以来となります。

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日米豪印「クアッド」への影響は

 そして、インドが中露に接近するなか、注目されるのは西側諸国におけるインドの立ち位置です。

日米豪印4カ国枠踏み「クアッド」に影響は?
日米豪印4カ国枠踏み「クアッド」に影響は?

 朝日新聞によると、今年インドで日本、アメリカ、オーストラリア、インド4カ国の枠組み「クアッド」の首脳会合が開催予定です。米印関係悪化のなか、開催は実現するのか?そして西側の一角としてインドの立ち位置は今後どうなるのか?注目されています。

モディ首相 約2年ぶりの訪日

29日にモディ首相訪日予定
29日にモディ首相訪日予定

 そんななか、日本とインドの関係です。29日にモディ首相訪日予定となっていて、日程は29日から31日です。モディ首相の訪日はおよそ2年ぶりです。朝日新聞によりますと、日本とインド両政府は2008年に策定した「安全保障協力に関する共同宣言」を17年ぶりに改訂するといいます。

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