ガザ地区をめぐる情勢が1つの岐路に立たされています。イスラエルは、停戦交渉を進めると表明した一方で、最大都市ガザ市の完全制圧に動き出しました。
“岐路”に立たされたガザ地区
ガザのどこにいても、空爆は突然人々を襲います。逃げ場はありません。
「以前は南部に避難しましたが、今回は無理です。避難しても待っているのは死です」
ネタニヤフ首相は、ガザ市制圧を承認すると同時に「停戦交渉の開始を指示した」と表明。
「我々が受け入れられる条件での人質全員の解放と、戦争終結に向けた交渉の即時開始を指示しました」
ただ、停戦が簡単に実現する保証はどこにもありません。
停戦案に“大きな溝”
制圧の目標とされるガザ市の住民が、決死の覚悟で声を上げるしかない。それが今の現実です。
「今日こうしてガザのパレスチナ人が集まったのは、私たちが戦争や殺戮(さつりく)を望んでいないと世界中に伝えるためです。安全な場所で生活したいだけです」
停戦案は今、カタールなどの仲介国が作成し、18日にハマスが承認したものがテーブル上にあります。人質の生存者10人の解放と、18の遺体の返還、そして60日間の停戦です。
ただ、ネタニヤフ首相が交渉を指示したのは、あくまで「人質全員の解放」を前提にした停戦案。今回の案で解放されるのは実際にいる人質の半数ほどとみられていて、簡単には溝が埋まりそうにはありません。
「もうハマスと合意すべきです。国民はこれ以上、ネタニヤフの戦争継続を許しません」
西岸地区の“分断計画”も開始
さらに、フランスやオーストラリアがパレスチナの国家承認を推し進める中、イスラエルは“禁じ手”を使い始めました。
ヨルダン川西岸地区では銃撃や放火など、ユダヤ人入植者による暴力が後を絶ちません。先週、ユダヤ人入植地を訪れたイスラエルの財務相は、計画の実行を宣言していました。
「過去20年間、この計画について『間もなく始まる』『選挙後すぐ』などと言われてきましたが、ついに約束を実現することになりました。この現実はパレスチナ国家構想を完全に埋葬するでしょう」
イスラエルには長年、ヨルダン川西岸のE1地区と呼ばれる場所に、入植者用の住宅を建設する計画がありました。国際社会の反対を受け、計画は凍結されていましたが、20日、ユダヤ人入植者の住宅約3400戸を建設する計画が承認されました。
この地がユダヤ人の入植地となることは、パレスチナにとって、主要都市のラマラとベツレヘムを行き来する回廊が断絶されることになり、南北の分断を意味します。すでに、パレスチナ人には立ち退き命令が届いています。
「立ち退かなければ建物を取り壊すというものです。1時間前にも重機が近くの基地に集結しているとのニュースを聞きました」
「イスラエル占領政府のこの決定は、各国のパレスチナ国家承認に対抗し、二国家間解決を阻止しようとするものです」