様々な大統領令を発令し、世界をざわつかせているトランプ大統領。その後ろには、自称“出禁女”の影がちらついている。
イスラエルとハマスの紛争が激化してから2年経った今でも、戦火の中心・パレスチナ自治区のガザでは、各団体が食料や衣料の支援を続けている。
そんな中、アメリカ国務省は「医療・人道支援ビザの状況を見直す間、すべてのビザを停止する」として、ガザ地区のパレスチナ人に対する入国ビザ発給を停止すると発表した。
この件に影響を与えているとされるのが、極右活動家で、トランプ大統領の熱烈な支持者ローラ・ルーマー氏による非難である。
ルーマー氏はSNSで「この戦争が続いている間、ガザからの人は誰も米国に来るべきではない」と投稿。Xでは176万人以上のフォロワーを抱えるインフルエンサーだ。
ルーマー氏は過去にも、2001年に発生したアメリカ同時多発テロを「内部の者による犯行」だと主張。さらに、インドにルーツを持つハリス前副大統領に対しては「ホワイトハウスはカレーの匂いがするようになるだろう」と過激な発言を繰り返している。
一時、各種SNSへの投稿を禁じられ、自身のHPでは「世界一の出禁女」と自称するほど。
そんなローラ・ルーマー氏とトランプ大統領は、去年の大統領選の際には自らの専用機に搭乗させたりするほど緊密な関係にある。トランプ大統領は「彼女は愛国者だと思う。私は彼女のことが大好きだ」と信頼を寄せている。
周囲の反対もあり、トランプ政権には入れなかったものの、たびたびホワイトハウスにも足を運びトランプ大統領とも面会。4月に行われた国家安全保障会議の職員の解雇は、ルーマー氏の助言によるものとの報道もある。
公職に就いていない「活動家」が人事を左右するトランプ政権の現状を懸念する声が上がっている。
インフラの一角にローラ・ルーマーの存在が?

政権に属していない人物が人事にも影響を持つというアメリカの状況を、ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーター、上智大学総合グローバル学部教授で現代アメリカ政治外交が専門の前嶋和弘氏は次のように述べる。
「アメリカは未曾有の分断、拮抗があるので、共和党側はいろいろな声が必要だと思う。民主党側もそうだが。そもそも様々なトランプの応援団がいて、右腕だったり拡声器だったり、インフラが作られていて、そのうちにトランプ大統領が言いたいことを代弁する人、インフルエンサーとしてこの人が徴用されている。イーロン・マスクと同じような扱い。ここではイーロン・マスクを使い、ここではローラ・ルーマーを使い、あと、アレックス・ジョーンズも外から中にトランプ政権、あるいはトランプ陣営の声として中に入ったり外に入ったり、大きなインフラができていて、そのインフラの一角を確実にローラ・ルーマーが持っている」(前嶋氏、以下同)
政権の中にも外にも影響力が強い人がいる状況はあまり聞かないが、なぜそういう状況なのか。
「ここ20年ぐらいアメリカの場合、政治インフラ、右も左も大きくなってきた。その外と中の差は大きくない。例えば、アレックス・ジョーンズは外からトランプ政権を応援している陰謀論者。ローラ・ルーマーは去年の選挙戦でも陣営とともに一緒に飛行機にいた。ただ、陣営の中には形上、入っていない」
トランプ大統領の代わりにトランプ氏っぽいことを言う分身のような拡声器軍団。トランプ大統領はこういう軍団を拾い上げる嗅覚が優れているのか。
「それもあると思う。優れていると同時に、一種のインフラ化になっている。アメリカは日本から見るとものすごく政治的に右と左になってしまって、8月のギャラップの調査は驚く。ギャラップ全体のトランプ氏の支持率は40、支持しない人は56だが、共和党支持者93、民主党支持者1。圧倒的にトランプを応援しているところには常に燃料投下として情報を出さないといけない。そこに関しては様々なお金も入ったり、様々な産業が選挙産業になったり、政治の情報産業になったり。そのうちの一環がローラ・ルーマー」
ルーマー氏のような拡声器集団は、今後もトランプ政権に影響を持ち続けていくと考えていいのか。
「影響を持ち続けるが、トランプ大統領がうまく使っていく。自分の情報チームの1つだと。場合によっては、ローラ・ルーマーがめんどくさくなったら消える」
今後の外交のリスクはあるのか。
「もちろんある。この人がポロッと言ったところでもしかしたら変わっていくこともある」
(『ABEMAヒルズ』より)