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2025年9月9日 20:28

日本在住のイスラエル元兵士の半生が絵本に 平和の象徴は「ちゃぶ台」? 

日本在住のイスラエル元兵士の半生が絵本に 平和の象徴は「ちゃぶ台」? 
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 日本に住む、元イスラエル兵の半生を描いた絵本がある。反戦を訴え続け、平和の象徴として愛してやまないのが「ちゃぶだい」だ。そこに込められた思いとは。

ダニーさんが考える大切なもの「ちゃぶだい」

 連日続くガザへの攻撃。イスラエル軍は5日と6日に連続で高層ビルを爆撃し、少なくとも20人が死亡した。

反戦を訴え続けるイスラエル人が日本にいる
反戦を訴え続けるイスラエル人が日本にいる

 終わりの見えないなか、反戦を訴え続けるイスラエル人が日本にいる。ダニー・ネフセタイさん(68)だ。

18歳で空軍に入隊
18歳で空軍に入隊

 幼いころからイスラエル軍のパイロットに憧れ、18歳で空軍に入隊。だが、パイロットにはなれず、除隊した後はアジアを旅することに。

 1979年、日本に来た時に妻と出会い結婚。その後、手に職をつけるため木工職人となり、およそ40年間、家具などを作り続けている。

およそ40年間、家具などを作り続けている
およそ40年間、家具などを作り続けている
ダニーさん
「位牌(いはい)も神棚も作った。机・テーブル、椅子は当然。本当に何でもやっています」

 そんなダニーさんは、木工職人以外の顔もある。

木工職人以外の顔も
木工職人以外の顔も
ダニーさん
「武器に頼ると結局、人が死ぬ。敵も味方も関係なく。外交によって犠牲者を出さない。これは国家の責任だと私は思います」

 自身が所属していたイスラエル空軍が、2008年にガザ地区に大規模な空爆を行い、子ども345人を含む多くの市民が犠牲となった。

平和や人権の大切さを訴える講演活動を行っている
平和や人権の大切さを訴える講演活動を行っている
ダニーさん
「平気で345人の子どもを殺す命令を下せる。この国おかしくなったぞ。そこから自分が変わった」

 ダニーさんは元イスラエル兵でありながら、今回のガザへの侵攻を批判。平和や人権の大切さを訴える講演活動を行っている。

ダニーさんの経験をもとにした絵本
ダニーさんの経験をもとにした絵本

 戦争をなくすためには、子どもへの平和教育が重要と考えているダニーさん。そこで今回作ったのが絵本だ。

 ダニーさんの経験をもとにした「ダニーさんのちゃぶだい」。ダニーさんは幼少期から、周りの国は「敵」だと教えられた。しかし、日本に来てみると…。

周りの国は「敵」だと教えられたが…
周りの国は「敵」だと教えられたが…
ダニーさんのちゃぶだい
「にほんの こうえんには ケバブを うっている やたいが ありました。よく みると、やたいで はたらいている ひとは 『てき』だ、と おしえられている くにの ひとでした。ダニーさんが ゆうきを だして こえを かけてみると すぐに ともだちに なれました。これは、じぶんの くにに いたら できないことでした」
ダニーさん「中東で会ったら敵だった。代々木公園で会ったら友達になれる」
ダニーさん「中東で会ったら敵だった。代々木公園で会ったら友達になれる」
ダニーさん
「恐る恐る近づくと…気付き。シリア人が隣の人とニコニコしながらしゃべっている。襲おうとしないし殺そうとしない。シリア人は人間だったってびっくり。中東で会ったら敵だった。代々木公園で会ったら友達になれる」

 そして、絵本のタイトルでもある「ちゃぶだい」は、ダニーさんが考える大切なものだという。

「ちゃぶだい」の意味
「ちゃぶだい」の意味
ダニーさん
「『ちゃぶだい』はボーダーがない。丸いもので、何人座っても大丈夫。私の場所、あなたの場所などは全く生まれない。本当に『輪』、まさに言葉通り。全部みんな平等」

 身分や人種に関係なく人々が輪になって食卓を囲む、まさに平和の象徴だとダニーさんは語る。

一番伝えたいメッセージ
一番伝えたいメッセージ
ダニーさん
「(Q.一番伝えたいメッセージは?)このなかで一番好きな絵はこれ。『ほんとうに?』大好き」
絵本の一部
絵本の一部
ダニーさんのちゃぶだい
「そびえたつ たかい かべ。あそこには『てき』が いる。『ほんとうに?』」
ダニーさん「みんなに一番分かってほしいことは『敵はない』。私たちと全く同じ人間」
ダニーさん「みんなに一番分かってほしいことは『敵はない』。私たちと全く同じ人間」
ダニーさん
「私は3歳からイスラエルの周りの国は『敵』と教わった。みんなに一番分かってほしいことは『敵はない』。私たちと全く同じ人間。一番子どもたち・親に伝わってほしい」

ダニーさん「大人に届ける近道は、子どもに託すこと」

絵本作家のなるかわしんごさん
絵本作家のなるかわしんごさん

 反戦の講演会を何度も行ってきたダニーさんは、絵本を出版することが夢だったという。

 出版社から絵本出版の打診を受け、ダニーさんは快諾。そして、いくつか絵本作家の方の画を見て、なるかわしんごさんの作風に惚れ込んで指名したそうだ。

 なるかわさんは「ダニーさんが愛する、ちゃぶだいのサイズを特にこだわって描いた。そこにも注目してほしい」という。

 「イスラエルとパレスチナの問題に限らず、戦争はダメというテーマを伝えたい。本来、こうした絵本が必要の無い社会が理想です」と話している。

子どもの気づきは身近な大人に届く
子どもの気づきは身近な大人に届く

 ダニーさんは、夢だった絵本の出版について、「これまでの経験で、子どもは『戦争がダメ』ということをまっすぐに理解してくれる。子どもの気づきは身近な大人に届く。だから、大人にメッセージを届ける近道は、子どもに託すこと」と話している。

「敵」という概念は、後天的に植え付けられる思い込み
「敵」という概念は、後天的に植え付けられる思い込み

 また「『敵』という概念は後天的に植え付けられる思い込みで、実際には『敵』はいない。そう、世界中の人たちが気が付けば、戦争も軍隊も抑止力も不要になる。絵本が家庭のなかで、想像力を育てる役割になれば」と話していた。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月9日放送分より)

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