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報道ステーション

2025年9月10日 01:17

米移民当局“摘発”日本人3人含む475人拘束 韓国『ヒョンデ』の工場建設現場

米移民当局“摘発”日本人3人含む475人拘束 韓国『ヒョンデ』の工場建設現場
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アメリカの移民当局が4日、韓国の自動車メーカー『ヒョンデ』の工場建設現場で大規模摘発を行いました。韓国人の労働者ら500人近くが不法滞在などの疑いで拘束され、その中に日本人が3人含まれていたことが分かりました。このうち2人が所属する日本の機械メーカーの担当者は取材に対して「法令に基づきビザを取得し、現地に出張していた」と語りました。

韓国人ら多数拘束 外交問題に

韓国は大統領自らアメリカに対して苦言を呈しました。

韓国 李在明大統領
韓国 李在明大統領
「韓米がともに発展するための我が国民と企業の活動が二度と侵害されないことを願います」

発端は先週の出来事でした。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「彼らは違法なエイリアンであり、ICEは仕事に忠実なだけだ」
米国土安全保障捜査局 シュランク特別捜査官
米国土安全保障捜査局 シュランク特別捜査官
「国土安全保障省は、違法な雇用と犯罪捜査の一環として捜査令状を執行した。その結果、475名を拘束した」
(Q.475人のうち、韓国籍は何人か)
「韓国籍が多数を占めている」
ICE(移民・税関捜査局)

今月4日、ICE(移民・税関捜査局)が大規模な摘発を行いました。場所はジョージア州で、ヒョンデなどが建設していた工場です。当局は「捜査対象は4人だった」と説明していますが、武装した捜査官は次々と拘束者の腰に鎖を巻き、手錠と足かせをはめていきます。グアンタナモを彷彿させる扱いです。

韓国『JTBC』
韓国『JTBC』
「鉄格子の向こうを私服の男性たちが列をなして移動します。工場の制服も見えます。ICEの急襲によって拘束された韓国人たちです」
ICEによる摘発

300人以上の韓国人を含む、475人がいる建物は、不法移民の収容施設ですが、劣悪といっても言い過ぎではありません。

韓国『JTBC』
韓国『JTBC』
「ここはアメリカにある収容施設の中でも、非衛生的な環境と収容者への虐待で悪名高い施設です。カビや虫が湧くシャワー施設が摘発され、去年収監中だったインド人が治療が遅れて死亡した例もあります」
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“極右政治家”が通報か

極右政治家

この一件。発端となったとされる極右政治家が取り沙汰されています。

共和党 下院選に立候補 トリ・ブラナム氏
共和党 下院選に立候補 トリ・ブラナム氏
「昨日、建設中の大規模工場で450人の違法就労者が拘束されました。移民・関税捜査局に情報提供したのは私です。人道危機を招いたのはバイデン政権なのです。当局は善良な人の職を奪っているのではなく、長い目で見れば彼らを救っているのです」

雇用生む工場で…韓国人ら多数拘束

バッテリー工場

ヒョンデなどは2022年から、この場所にバッテリー工場を建設中でした。工場が完成し、稼働すれば8500人の現地雇用が生まれていましたが、工場の完成は大きく遅れそうです。

米国土安全保障省 ノーム長官
米国土安全保障省 ノーム長官
「ジョージア州で摘発された者の多くは、法に基づき国外退去させます」
高度な技術を持ったエンジニア

今回拘束された韓国人たちの多くは、設備関連の高度な技術を持ったエンジニアたちでした。ただ、彼らにはビザに問題があったという報道もあります。

韓国通信社『ニュース1』
韓国通信社『ニュース1』
「『短期商用ビザ』を通じて建設現場に韓国人が投入されるのは『慣例』だった」

技術者としての就労が認められていない、観光用などの制度を利用した可能性も指摘されています。

拘束された韓国人労働者

拘束された300人の韓国人労働者は外相が渡米し、チャーター機で出国する予定になっています。それでも先月末に大統領自ら、アメリカでの1500億ドルの投資を決めた韓国にとっては納得のいく話ではありません。

中央日報
中央日報
「来年の中間選挙を控えたトランプ政権のパフォーマンスとの見方もある。しかし、同盟国を対象にした示威的な摘発は、韓米同盟の信頼を損なう行為だ」

当初、捉えた韓国人たちを「エイリアン」としていたトランプ大統領ですが、摘発から3日経って。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「彼らと話す。バッテリー工場だというが、製造の知識を持つ人材が不足しているなら、専門家の入国を認めて、市民の訓練を手助けすべきだろう。バッテリーやコンピューター、半導体の生産などは複雑な仕事だ。私が状況を確かめる」
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日本メーカー「ビザ取得し出張」

今回の一件は、日本にとっても他人事ではありません。

林芳正官房長官
林芳正官房長官
「米の移民当局等がジョージア州の現代自動車に対して強制捜索を行って、470名以上を拘束し、その中に邦人3名が含まれていることを確認しております」
社員が拘束された会社の担当者

3人のうち、2人は関西の産業用機械メーカーの社員でした。担当者の話によると「拘束された2人は生産立ち会いのため、今月初旬からアメリカに入っていた」といいます。法令に基づきビザを取得し、現地でできる作業もアメリカの弁護士に確認していた中での出来事でした。移民当局に社員が拘束されたのは初めてということですが、今後への影響は避けられそうにありません。

社員が拘束された会社の担当者
社員が拘束された会社の担当者
「アメリカとのトラブルを避けるため、細かいことは言えない。帰国のめどなど、先のことは何も話せない」
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“取り締まり強化”の背景は?

アメリカ政治に詳しい、上智大学の前嶋和弘教授に聞きました。

上智大学 前嶋和弘教授
上智大学 前嶋和弘教授
「選挙公約で最も大きく打ち出した『移民排斥』に今本格的に乗り出している。トランプ政権は5月に、逮捕者のペースを1日3000人に設定。年間100万人超の逮捕を目指している。つまり、外国人がアメリカで働くこと自体を問題視していて“外国人労働者=職を奪う者”と支持者へアピールしたい」

トランプ氏は、日本を初め諸外国にアメリカへの工場進出や投資を求めています。そのために外国企業は人材を現地に派遣することもあるはずです。そういう人たちが摘発されるリスクを抱えるのは、矛盾していないのでしょうか。

上智大学 前嶋和弘教授
上智大学 前嶋和弘教授
上智大学 前嶋和弘教授
「トランプ氏の中では“矛盾していない”。『人は来るな。お金だけよこせ』『アメリカ人を雇えばいいだろう』と考えている。それによって、例え諸外国の投資意欲が下がっても、国同士の決定事項として、他国からの投資は必ず呼び込めると考えていて、むしろ支持者に受ける不法労働者の取り締まりを強化する姿勢」
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