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報道ステーション

2025年9月11日 03:05

「事前通告なし」トランプ氏“同盟国”攻撃に不満…イスラエル カタールでハマス空爆

「事前通告なし」トランプ氏“同盟国”攻撃に不満…イスラエル カタールでハマス空爆
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9日、イスラエルがイスラム組織『ハマス』の幹部暗殺を狙って、カタールの首都ドーハを空爆しました。

イスラエルによるこの攻撃は、数カ月かけて準備されたものだと伝えられています。

ハマス幹部のハイヤ氏

狙ったのは、ハマス幹部のハイヤ氏ですが、無事だといいます。

ハマス政治局 ヒンディ氏
ハマス政治局 ヒンディ氏
「ハマスの指導部は無事です。これも偉大な神のおかげです。神は、犯罪者であるネタニヤフの陰謀を防いでくださった」
ハイヤ氏の息子ら5人が死亡

ハマスによりますと、ハイヤ氏の息子を含む、ハマスのメンバー5人が死亡したといいます。

破られた暗黙の了解

世界に衝撃を与えたのは、カタールには手を出さないという暗黙の了解が破られたことでした。

カタール ムハンマド首相
カタール ムハンマド首相
「イスラエルがカタール領内で行った攻撃は、ネタニヤフによる国家テロであり、中東地域を不安定化させる政策の一環です。この地域には、ならず者がいて、無謀な政策を続け、国家主権を侵害している」
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仲介役

秋田県とほぼ同じ大きさでありながら、石油と天然ガスに恵まれ、中東随一の豊かさを誇るカタール。
ハマスとの関係は深く、指導者が活動の拠点としてきた場所です。一方で、ハマスに捕らわれたイスラエルの人質解放に向けた交渉の仲介もしてきました。

アメリカと同盟関係

そして、何よりカタールは、中東最大の米軍基地を置き、軍事条約は結んでいないものの、アメリカと同盟関係にあります。

偉大なパートナー

トランプ大統領も2期目初の外遊で訪問。カタールを「偉大なパートナー」と呼び、関係強化をアピールしていました。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「(Q.イスラエルの攻撃について)よろしくないね。すべてにおいて納得していない。良い状況ではない。あす、声明を出すが、これだけは言っておく。非常に不満だ。あらゆる意味で不満だ」
イスラエルの標的

イスラエルがハマス幹部の暗殺を図ったのは、トランプ政権が提示した新たな停戦案を、ハマスが協議している最中のことでした。

カタール ムハンマド首相
カタール ムハンマド首相
「カタールが仲介国として、正式に調停を行っている最中だ。このような行為が許されるなら、国同士の“信義”とは何なのか。これは裏切りとしか言いようがない」
事前通告

6月、イランに大規模攻撃を仕掛けたイスラエル。このときは、アメリカに対し事前に通告していました。しかし、今回は、事前通告はなかったといいます。

今回、10機を超えるイスラエル軍の戦闘機が投入されました。

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アメリカ当局者の話として、こう報じられています。

米メディア アクシオス
米メディア アクシオス
「アメリカ軍は、イスラエルの戦闘機がペルシャ湾に向かい、飛行しているのを確認した。アメリカは説明を求めたが、イスラエルが返答したときには、ミサイルはすでに放たれていた」
事前の通知がなかった

ただ、事前の通知がなかったとの主張には、疑問の声も上がっています。

トランプ大統領は、今回の攻撃に不満を示しつつも、こう述べました。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「攻撃の後、ネタニヤフ首相とも話をした。首相は和平を望んでいると言っていた。この不幸な出来事は、和平へのきっかけになり得ると思う」
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和平

ネタニヤフ首相が望む和平。それは、ハマスの殲滅です。
ガザの人々の生活も命も、犠牲にすることをいとわない姿勢に変わりはありません。

新たな停戦案

新たな停戦案は、停戦初日にイスラエルの人質全員を解放するというものでした。今回の攻撃で遠のくことになります。

息子がハマスの人質になっているザンガウカーさん
息子がハマスの人質になっているザンガウカーさん
「恐怖で震えています。ネタニヤフ首相の決断が、息子に死の宣告をしたかもしれない。もう、たくさんです。イスラエル国民は、この戦争に嫌気がさしています。早く終わらせて。早く協定を結んで。すべての人質を帰して」
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◆イスラエルは、これまでにイラン、レバノン、イエメンといった敵対国に空爆を仕掛け、ハマス幹部やハマスと連帯を掲げる武装組織を攻撃してきました。
一方、今回は、カタールにまで攻撃を仕掛けました。サウジアラビア、UAEといった世界屈指の石油産出国が並ぶ地域にまで攻撃の手が広がったことになります。
カタールは、イスラエルと国交はないものの、イスラエルを支援するアメリカとは良好な関係を持つ国で、ガザ停戦交渉の仲介役でもあります。
 
◆なぜ、カタールへの攻撃に踏み切ったのでしょうか。イスラエル政治に詳しい防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。

立山名誉教授

立山名誉教授は、今回の攻撃について「7月、イスラエルの停戦に向けた姿勢が大きく変化。これまでは、人質を何回かに分けて解放する段階的な停戦合意の枠組みを目指していたが、7月以降、“人質全員の一度の解放”に要求を強め、8月には、ガザ市制圧を目指した軍事作戦を本格化。交渉を前進させようというところからハマスを亡き者にしようという考え方に転換。今回の攻撃は、“国外”で強硬姿勢をとるハマス幹部を狙い、“ハマス壊滅”が具体的な形になった」といいます。

ハマスを攻撃する建前だった「人質の救出・解放」も念頭にないということでしょうか。

立山名誉教授

立山名誉教授は「イスラエルは、交渉する気がもはやない。7月にハマスが受け入れられない“人質全員の一度での解放”を要求している時点で、人質解放を第一優先と考えていない。ハマス壊滅の方を目標として重視している。イスラエルはハマス壊滅まで攻撃を続け、パレスチナ人住民をガザ地区の外へ自発的に移住させたい」といいます。

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