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2025年9月16日 16:00

保守系活動家暗殺 容疑者の素顔 米国で相次ぐ政治的暴力 進む分断の実態

 保守系活動家暗殺 容疑者の素顔 米国で相次ぐ政治的暴力 進む分断の実態
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トランプ大統領に近い保守系の政治活動家を銃撃して殺害した疑いなどで、22歳の男が逮捕されました。

トランプ大統領の熱烈な支持者を射殺した容疑者の素顔が分かってきました。

アメリカで広がる分断についても見ていきます。

■活動家暗殺の容疑者 事件翌日 知人とやりとり判明

銃撃事件で逮捕された22歳のタイラー・ロビンソン容疑者について、最新の情報です。

日本時間9月15日午前1時すぎ、事件があったユタ州のコックス知事は、
ロビンソン容疑者は当局に対して黙秘している。協力的ではない。しかし彼のルームメートや周囲の人々は協力してくれている。これはとても重要な点だ」と話しています。
事件翌日、公開された画像を見てロビンソン容疑者の知人が、
「どこにいる?」と、グループチャットで聞いたところ、
ロビンソン容疑者が、
「俺の“分身”が俺をトラブルに巻き込もうとしている」とコメントしたということです。
タイラー(ロビンソン容疑者)がチャーリー(カーク氏)を殺した」と他の人が冗談で書き込みをしていたという事です。

捜査当局によると、依然として銃撃の動機を解明しようとしているということです。

ロビンソン容疑者は日本時間9月17日に出廷予定で、さらに詳しい情報が明らかになるとみられています。

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■暗殺されたカーク氏とは トランプ氏 勲章授与を発表

殺害されたチャーリー・カーク氏についてです。

アメリカのユタバレー大学で講演中に銃撃され、亡くなりました

カーク氏は、18歳で保守的思想を学生に広める青年団体『ターニング・ポイント USA』を創設。
現在、850以上の大学に支部があります。

カーク氏のSNSのフォロワーは、
TikTok が、約1000万人、
Xが約600万人、
若者を中心に高い人気がありました。

2024年7月の共和党大会で、カーク氏は、
「バイデン・ハリス体制を倒して、トランプ氏をホワイトハウスに返り咲かせましょう」と発言。

トランプ大統領の支持基盤である『MAGA(マガ=アメリカを再び偉大に)派』の代表格でした。

カーク氏の過去の発言です。

銃規制について、
「銃を持つ権利を維持するためには、残念ながら毎年、銃による被害者が出ることはやむを得ない代償
移民政策について、
同化を伴わない移民は侵略。移民は我々が寛大なのを良いことに、我々をさけずんでばかり」としています。

カーク氏が創設した団体は、左翼的なプロパガンダを進める大学教授が、保守的な学生を差別することを摘発・記録するとし、“リベラル教授狩り”とも言える『プロフェッサー・ウォッチリスト』を公開しています。

プロフェッサー・ウォッチリストでは、大学名や個人名を顔写真つきで、ホームページで公開
過去の発言や、SNSへの投稿を紹介していて、
テロ支持者、反ユダヤ主義者、フェミニスト、社会主義者などに分類しています。

トランプ大統領はカーク氏について、
「アメリカで彼ほど若者の心を理解した人はいなかった。すべての人々、特に私から愛された」とSNSに投稿しました。

トランプ大統領は文民の最高位である『大統領自由勲章』をカーク氏に授与すると発表。

過去の受賞者には、キング牧師やヘレン・ケラー氏がいます。

カーク氏の影響力について、同志社大学大学院教授の三牧聖子さんです。
「トランプ氏が勝利した2024年の大統領選、若者、とりわけ若い男性の得票に貢献したのが、カーク氏による草の根的な若者をターゲットにした保守運動。右派インフルエンサーの中でも若くしてトランプ大統領の信頼を勝ち取った人物
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■逮捕の22歳 容疑者の素顔 動機は?深まる謎

事件発生から33時間で、容疑者が逮捕されました。

殺人の疑いで逮捕されたのは、タイラー・ロビンソン容疑者、22歳。
3人兄弟の長男で、事件が起きたユタ州出身です。
現時点では単独犯とみられているということです。

ロビンソン容疑者は高校時代、全米統一試験で全国上位1%の成績を収めて、2021年に4年間の奨学金を得てユタ州立大学に入学。
1学期だけ在籍し退学していますが、詳しい理由はわかっていません。

現在です。

ユタ州立大学を退学後、ディキシー工科大学に入学。
現在は、電気技師の見習い課程の3年生で、
2022年に見習い電気技師の免許を取得しました。

容疑者がよく買い物をしていた店の店長です。
「話しかけない限り、自分から話しかけてくることはなかった。いつも非常に物静かだった

支持政党です。

ユタ州は保守色が強く、2024年の大統領選では、トランプ大統領が約6割の票を獲得しています。
容疑者の両親は共和党員ですが、ロビンソン容疑者は、特定の政党には所属していませんでした

家族によると、近年、政治的な思想を強めていたということです。

ユタ州のコックス知事は、
「ロビンソン容疑者は『なぜカーク氏が好きではないのか』『カーク氏の物の見方について』家族に語っていた」と話しています。

銃器の取り扱いについて、ロビンソン容疑者は軍隊の経験はありませんが、狩猟をして育ち、銃器の扱いには慣れていたということです。

この画像が、回収されたボルトアクションライフルです。
狙撃用の照準器がついています。

事件について、トランプ大統領です。
極左による政治暴力で、あまりに多くの人が傷つき、あまりに多くの人の命が奪われた」
政府効率化省の責任者だった、イーロン・マスク氏は、
左派は“殺人の政党”だ」と発言しています。

動機について、ロビンソン容疑者の動機はいまだに不明です。

発見された未使用の弾丸には
「おい、ファシスト、受け取れ」
「お前は同性愛者だ」
など、
それぞれ異なる刻印がされていたということです。

三牧さんです。
このような事態でこそ、大統領が分断を乗り越え、党派対立を超えて団結を生み出していくべき。しかし、大統領自身が早々に犯行を左派によるものとし、分断をあおっている」
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■事件後 教育現場や政府で言論統制 揺らぐ“自由の国”

今回の事件を受けて、アメリカでは分断の広がりが懸念されています。

SNS投稿が懲戒処分の対象となっています。

フロリダ州の教育局です。
カーク氏の死について、不適切なコメントをした教育者に対して、調査と懲戒処分を行うと警告しています。
オクラホマ州の教育長です。
SNS上で、カーク氏の死を軽んじるコメントをした教師たちを調査すると明言。
中学校教師をオクラホマ州の教育局が調査中です。

政府も言論統制の動きです。

国防当局者らによると、ヘグセス国防長官が国防総省職員に対して、カーク氏の射殺を肯定していた軍人を特定し、処罰するよう指示を出し、複数の軍人を解任したとみられています。

カーク氏に否定的なSNSについて、ヘグセス国防長官は、
「私たちはすべてを非常に注意深く追跡しており、即座に対応する」としています。

ネットの匿名サイトでは、言論の監視が行われています。

『チャーリーの殺人犯を暴露』という匿名サイトが、事件を喜ぶような投稿をしたとされる人の名前、所在地、勤務先など、個人情報の掲載をすることを明らかにしました。

この匿名サイトによると、9月13日正午時点で、約3万件の処罰対象となる投稿を受けつけたとして、そのうちの数十件は、すでに個人情報が公開されています。
情報公開された一部の人は、すでに嫌がらせを受けているということです。

『言論の自由』について、三牧さんです。
『言論の自由』の大義のもとに差別発言を繰り返してきたカーク氏について、政府の統制によって『自由』に論ずることができなくなっている。『自由』の国アメリカの根幹が揺らいでいる
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■相次ぐ政治的暴力 進む分断 “内戦”の懸念も

政治的暴力が行きつく先について、見ていきます。

アメリカのメリーランド大学の研究者によると、
2025年、半年間にアメリカでは、政治的な動機による攻撃が約150件発生。   
2024年の同じ期間から、ほぼ倍増しています。

メリーランド大学の研究者です。
私たちは今、非常に危険な状況にある。広範な騒乱へと容易にエスカレートしかねない」

政治思想をめぐる銃撃事件は相次いでいます。

2024年7月、東部のペンシルベニア州で行われた大統領選挙の支援者集会で、トランプ氏を狙った暗殺未遂事件が起きました。
トランプ氏を含む4人が死傷しています。

その2カ月後、2024年9月には、ゴルフをプレー中のトランプ氏の近くで、再び発砲が起こりました。

この事件で逮捕されたのが、ライアン・ラウス被告です。

ラウス被告は、車で逃走後、警察当局が拘束。
ウクライナに強い関心を持っていたということです。

ラウス被告が、事件前に自費出版した本には、
頭の悪い大統領を選んだことについて、我々も責任の一端を負わなければならない」と書かれていて、トランプ氏に不満を抱いていた可能性があります。

民主党議員を狙った銃撃事件も起きています。

2025年6月、中西部のミネソタ州で、民主党の州議会議員の自宅が襲撃され、
議員の女性と、その夫が死亡しました。
別の民主党の州議会議員の自宅も襲撃され、
議員の男性と、その妻がけがをする事件が起きました。

この2つの事件を起こしたのが、バンス・ボールター容疑者です。

襲撃後に逃走し、捜査当局に逮捕されました。
ボールター容疑者は、元ミネソタ州政府の職員だったこということです。

ボールター容疑者が犯行で使った車から、数十人の標的リストが見つかっています。
民主党員や人工妊娠中絶の権利運動と関係のある人物が書かれていたということです。

2025年6月の世論調査です。

18歳以上のアメリカ人を対象に、「今後、10年以内にアメリカで内戦が起こる可能性はどれくらいあるか?」と質問したところ、
「非常に高い」、「やや高い」と答えた人は、合わせて40%で、
「あまり高くない」、「全くない」と答えた人の39%を上回りました。

ニューヨークタイムズです。

いまSNSの『X』では『内戦』という言葉が急増しています。
カーク氏の銃撃事件が起きた当日(9月10日)は、
『内戦』という言葉が12万9000回以上確認され、
事件翌日(9月11日)には、少なくとも21万回に増えました。

主に『内戦』を話題にしたのは、共和党議員や右派メディアの出演者などだったということです。

三牧さんです。
「アメリカでは『自分たちの政治的な立場を共有する人間の死は悲しむが、共有しない人間の死には一切同情しない』という人々が増え、すでに感情の次元では、『内戦』状況にある。実際の内戦にしないために、アメリカは、いよいよ知恵や勇気が問われている」

(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年9月15日放送分より)

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