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2025年9月19日 02:44

MAGA派批判が引き金に…トランプ政権“圧力”に屈服か 人気番組が無期限放送休止

MAGA派批判が引き金に…トランプ政権“圧力”に屈服か 人気番組が無期限放送休止
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アメリカの人気トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』が、無期限の放送休止に追い込まれました。

ことの発端は、右派の政治活動家、チャーリー・カーク氏が殺害されたことでした。

15日、司会のジミー・キンメル氏は、番組で、こう述べました。

ジミー・キンメル氏
ジミー・キンメル氏
「MAGA派の一味は、チャーリー・カークを殺害した青年について、自分たちと仲間でないと必死になっている。事件は政治利用され、最低の状況になった」
容疑者家族は、MAGA派

容疑者家族は、MAGA派という情報があり、それを皮肉った発言です。

この放送の翌日、FCC=連邦通信委員会のトップから物言いがつきます。

FCC ブレンダン・カー委員長
FCC ブレンダン・カー委員長
「キンメルの嘘は、悪意に満ちている。本当に病的である。キンメルを処分すべきだ。ABCは楽な道か、イバラの道を選ぶことができる。対処しなければFCCが乗り出す」
FCC

FCCは、テレビ局の放送免許を所管する機関ですが、トランプ政権から直に圧力がかけられたかたちです。

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無期限の放送中止を決定

番組を制作しているABCが無期限の放送休止を決定したのは、この数時間後のとこでした。

ジミー・キンメル氏とトランプ大統領

ジミー・キンメル氏の番組は『笑いは人をつなぐ橋』を信条に、ときの大統領も出演する20年以上続いてきたABCの看板番組でした。もちろん、トランプ大統領も例外ではありません。

しかし、アメリカでの自由闊達な風刺や、権力批判の文化は終焉に向かうようです。

アメリカ・トランプ大統領
アメリカ・トランプ大統領
「(Q.『「ヘイトスピーチを取り締まる』と司法長官が言っているが)私を不当に扱う、まさに君のような者を狙うだろう。憎悪だ。君は憎悪に満ちている。ABCを狙うかもしれない。不公平だった極左は、この国に甚大な被害を与えた。我々が修復する」

ブッシュ大統領の下でスピーチライターを務めたデイビッド・フラム氏は、今回の件について、このように批判しています。

デイビッド・フラム氏
デイビッド・フラム氏
「これはキャンセル・カルチャーではない。カルチャーではなく弾圧です。“この台本を読みなさい”という政府の命令なのです。“読まなければ番組から外す”と」
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解雇

暗殺されたチャーリー・カーク氏をめぐっては、批判した人々が解雇されるケースが増えています。パイロットや医療従事者、教員、シークレットサービスといった人々です。

密告も奨励され始めました。

アメリカ バンス副大統領
アメリカ バンス副大統領
「殺人犯を法廷で裁くのは当然として、重要なのは、この数年で台頭してきた左翼過激主義について論じること」

メディアへの締め付けやリベラル思想への弾圧は、今後、さらに強くなることは避けられません。

ただ、フラム氏は、このようにも話しています。

デイビッド・フラム氏
デイビッド・フラム氏
「ショックを受ける感性を決して失ってはいけません。その感性を失えば、独裁者に利用されます」
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◆“自由の国”のはずのアメリカで何が起きているのでしょうか。

3大ネットワーク“深夜トーク番組”

アメリカの深夜トーク番組は、3大ネットワーク、ABC、CBS、NBCがそれぞれ力を入れてきた看板番組です。名物司会者が政治など時事問題を風刺し、揶揄する内容でトランプ氏とその政権を批判し、人気を集めていました。

ABCテレビの番組

その深夜トーク番組ですが、今回、トランプ氏に批判的なABCテレビの番組が“無期限放送休止”になりました。

CBSテレビのトーク番組

また、トランプ氏に辛辣なことで知られたCBSテレビのトーク番組は、今年7月「打ち切り」を発表。CBSは「純粋な財務的判断」としていますが、アメリカメディアは、トランプ政権の承認が必要となる親会社・パラマウント社の合併問題をめぐり、忖度(そんたく)が働いたのでは、などと指摘しています。

トランプ氏

そして、残るNBCのトーク番組についても、トランプ氏はSNSで「打ち切るんだ、NBC!」と司会者を名指しして、番組の終了を求めています。

放送局が屈したという形になっています。

◆アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に聞きました。

前嶋和弘教授

「最大の要因は、トランプ政権が“放送免許の剥奪”をちらつかせていること」だといいます。

前嶋和弘教授

例えば、ABCだけで200以上のローカル放送局があり、地域のニュースやABCの番組を放送をしています。系列局の許認可を握っているのがFCC=連邦通信委員会です。この組織のトップはトランプ氏が指名した人物。今回の件で、系列局の免許剥奪も辞さない姿勢を示していました。

前嶋さんは「経営基盤の脆弱な系列局も多く、FCCに睨まれることを恐れ、トーク番組の放送を独自に取りやめる動きが出ていた。こうした理由から、ABCが番組の休止を決断したのでは」といいます。

前嶋和弘教授

こうした強権発動に対抗手段はあるのでしょうか。
前嶋さんは「正直難しい。歯止めになるはずの議会は共和党が多数。残る手段は司法だが、判断には時間がかかる。言論が弾圧された反トランプ派の不満が募り、社会の緊張がより高まるのではないか」と指摘します。

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