イギリスとカナダは21日、G7として初めてパレスチナを国家として承認すると発表した。国家承認の動きが拡大するなか、この動きに期待するガザ出身の医学生を取材した。故郷に戻りたくても戻れない、彼の日常を追った。
日本はパレスチナ国家承認を見送る
「本日、パレスチナ人とイスラエル人の平和への希望と、二国家解決を実現させるため、イギリスはパレスチナを正式に承認する」
日本時間21日夜、G7(先進7カ国)として初めて、イギリスとカナダがパレスチナを国家として承認した。
「パレスチナとイスラエルの平和な未来のためだ」
22日からニューヨークで行われる国連総会。それに合わせ、フランスとサウジアラビアが主催するイスラエルとパレスチナの二国家共存を目指す国際会合が行われる。
これまでパレスチナを国家として承認するのは147カ国だったが、会合ではフランスなども新たに承認予定で、合わせて150カ国以上になる見通しだ。
一方、親イスラエルの姿勢を見せるアメリカ・トランプ政権は国家承認に同意しない考えを示している。
「ハマスが人質を盾にして攻撃を行うと言っていることを考えると、非常に残酷だ。それ(国家承認)について、私はスターマー首相と意見が異なる」
日本政府は国家承認を見送ることを表明。岩屋毅外務大臣が出席し、日本の立場を説明する方針だ。
「日本政府としては、今回の国連総会のタイミングでは、パレスチナ国家承認を行うことはしないとの判断をしたところでございます」
16日、イスラエル軍はガザ市への地上侵攻を開始。これに対し、イスラム組織「ハマス」は「別れの写真だ」として、人質47人の写真を公開した。
イスラエルへの牽制を強めるハマス
パレスチナの北部ガザ市の制圧を目指し、攻撃を継続しているイスラエル軍。
パレスチナ通信は20日、イスラエル軍がガザ市で住宅区域を空爆し、少なくとも11人が死亡したと伝えた。
ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以降の死者数は6万5000人以上に上る。
これに対し、パレスチナのイスラム組織「ハマス」は、現地で拘束している40人余りの人質の顔写真を公開した。
「別れの写真だ」
ハマスは20日、カタールなど仲介国が作った一部の人質を解放する停戦案にイスラエルのネタニヤフ首相が応じないことや、イスラエル軍のザミール参謀総長がガザ市占領計画に同意したことを非難。
イスラム組織「ハマス」は、「ネタニヤフが人質を殺害すると決めた以上、我々は、彼らの命を気にかけるつもりはない」と投稿し、イスラエルへの牽制(けんせい)を強めている。
ガザ出身の医学生の日常
国連の会合で、150を超える国がパレスチナの国家承認を行うとみられるなか、故郷パレスチナの真の独立を願う人がいた。
「戦争が始まった後、すべてが変化しました。しかし、私は、まだ希望を持っています」
そう話すのは、ガザ地区出身で、現在エジプト北部のザガジグ大学に通うアワードさん。医学部で学ぶために、2018年にエジプトへやってきた。
「医師になるというのは私の幼いころの夢。そして家族の夢でした。母は病気で苦しんでいたので、母の願いでもありました」
ガザ地区にある故郷ジャバリアに帰省したのは、およそ2年前。病弱な母とは、これ以降会えていない。
エジプトに戻った3日後、イスラエルとイスラム組織「ハマス」の戦闘が始まり、空爆で自宅もがれきと化した。
「おばと祖父を失いました。友人は少なくとも30人。彼らは爆撃で殺されました」
これまでは家族からの援助で学費を工面していたが、それも底をついてしまった。
今年に入ってからは自らパレスチナの郷土料理を作り、デリバリーをして生活費を稼ぐようになった。
「朝7時から昼の12時・1時まで大学病院に通っています。その後、数時間、仕事に行きます。仕事は夜の12時や1時に終わり、家に帰宅して寝ます。毎日そうしています」
大学で5年間学び、この9月からは病院で実際に研修医としての訓練が始まった。エジプト政府はガザ出身の学生に、学費の支払いを遅らせる措置を講じているが、最終的に支払いをしなければ医師免許は得られないという。
しかし、アワードさんは、湾岸諸国の人々に援助を申し出たりするなど医師になる夢をあきらめていない。
「私はヨーロッパで医師としてのキャリアを続けるのが夢でした。でも、ガザ地区での戦闘が始まった後、気持ちが変わりました。ガザに戻って傷ついた人を助けること、これは医師としての義務です」
パレスチナの国家承認を表明する国が相次ぐなか、アワードさんはこう話す。
「(Q.これがイスラエルとパレスチナの関係をどう変えると思いますか)すぐには何も変わらないと思います」
「(Q.国際社会に何を望みますか)戦争を止め、パレスチナの人々が食べ物を得られるようにし、彼らを守ってほしいと思っています。再び人が暮らせるように、ガザが解放されること、安全になること、再建されることを望みます」
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月22日放送分より)