イスラエルのネタニヤフ首相が日本時間26日午後10時過ぎ、国連総会の演説に臨みました。
ネタニヤフ首相 ハマスの脅威を強調
ネタニヤフ首相はイスラム組織ハマスの脅威を強調し、ガザ地区などで行っている軍事作戦の正当性を主張しました。
「ただ、まだ終わりではない。ハマスの残党が今もガザに潜伏している。『10月7日の蛮行を繰り返す』と何度も宣言している。だからこそ、イスラエルが最後までやりきらなければいけない」
“ジェノサイド認定”の現実
イスラエル軍が空から地上から攻撃するガザ地区。この2年で6万5000人を超えるパレスチナ人が殺害されました。国連の委員会も認定したイスラエルによる“ジェノサイド”です。「戦争犯罪」に「人道に対する罪」。ICC(国際刑事裁判所)でお尋ね者となっているネタニヤフ首相。ニューヨークへのフライトは、去年とは違ってICC加盟国のフランスやスペインを迂回する異例のルートとなりました。
着いた先のニューヨーク。タイムズスクエアでは、ネタニヤフ首相の演説に合わせてデモが行われました。
「ICCに戦犯と認定された彼が、自由の身なんてあり得ません」
「ジェノサイドを主導する人物が演説するのです。刑務所に行くべきなのに」
総会で各国から批判噴出
新たにパレスチナ国家を承認する国が続出するなか、国連総会では、すでに承認していた国からもイスラエル批判が相次ぎました。
「人類はジェノサイドを1日たりとも許してはならない。虐殺者ネタニヤフとアメリカと欧州の同盟国を野放しにしてはならない」
「私たちはホロコーストもルワンダのジェノサイドも止めていない。スレブレニツァのジェノサイドも止めてはいない。ガザのジェノサイドは私たちが止めるべきだ。これ以上、言い訳は通用しません」
今回、承認を見送った日本も。
「イスラエル政府高官から、パレスチナの国家構想を全面的に否定するかのごとき発言が行われていることには、極めて強い憤りを覚えます。『二国家解決』実現への道を閉ざすことになる。さらなる行動が取られる場合には、我が国として新たな対応を取ることになることを、ここに明確に申し述べておきます」
国連に“オブザーバー国家”として認められているパレスチナ。トランプ政権がビザの発給を拒否したため、今回はビデオ演説となりました。
「イスラエルの行為は、20世紀21世紀における最も恐ろしい人道的悲劇の一つとして歴史書に記録されるだろう」
アッバス議長は同時に、イスラエルの民間人を殺害し人質に取った、ハマスにも非難の矛先を向けました。
「ハマスは、統治においてはいかなる役割も担わない。ハマスと他の勢力はパレスチナ自治政府に武器を引き渡さなければならない」
“西岸併合論”にトランプ氏は
ガザとヨルダン川西岸に分かれているパレスチナ。その西岸地区も6割がイスラエルの支配下にあります。イスラエルは家々を破壊してはパレスチナ人を追い出し、入植地の拡大を続けています。さらに政府内からは、西岸地区の大部分を併合すべきとの声が上がっています。
パレスチナの国家承認については「ハマスの残虐行為に見返りを与えることになる」と批判するトランプ大統領。ただ、ヨルダン川西岸の併合について問われると。
「西岸地区の併合は許さない。認めるつもりはない。そうはさせない」
(Q.ネタニヤフ首相と話は)
「話した。話したところで関係ない。ヨルダン川西岸の併合は許さない。もうたくさんだ。今が止め時だ」
主張の根拠に“和平プロセス”
国連総会でネタニヤフ首相が演説を始める前に退場する国が相次ぎました。ネタニヤフ首相の演説はまだ続いていますが、冒頭15分間、パレスチナの国家承認について触れることはありませんでした。ネタニヤフ首相は国連への出発前にこうコメントしています。
「殺人者・強姦者・子どもを焼き殺す者を非難するのではなく、イスラエルの地の中心部に彼らに国家を与えようとする指導者たちを私たちは非難する」
イスラエル情勢に詳しい、防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。
「イスラエルでは、ネタニヤフ首相だけでなく、野党やユダヤ系の国民の多くが『パレスチナの国家承認は“ハマスへの報酬”であり、イスラエルにとって脅威でしかない』と考えている」
国連での演説については。
「冒頭15分間で国家承認について言及しなかったのは、イスラエルは国家承認については無視。国連での演説は自分たちの力を示す最大の舞台として、軍事作戦の正当性を主張している」
また、イスラエル側には、もう一つ“主張”があるといいます。それが1993年『オスロ合意』で議論された和平プロセスです。
オスロ合意 和平プロセス
(1)イスラエルとパレスチナの直接交渉
(2)和平合意
(3)パレスチナ独立
(4)国際社会が承認
「あくまでも“イスラエルの主張”だが、こうした枠組みがあるにもかかわらず、欧州などの国家承認は一方的で和平の手順を乱すものだと主張している。一方、ヨーロッパ側は、仲介したノルウェーも国家承認したように、和平プロセスでは30年以上、何も進まなかったのだから取り組みを変えるべきというのが欧州側の主張」
トランプ氏「併合許さず」影響は
強硬姿勢のネタニヤフ首相ですが、「ヨルダン川西岸地区の併合は許さない」というトランプ大統領の発言の影響はあるのでしょうか。
「額面通りには受け取れない。トランプ大統領は今後、サウジアラビアやUAEなどと大きな経済取引を計画している。今回の発言は、アラブ諸国との関係悪化を避けたい“リップサービス”。29日に予定されるトランプ・ネタニヤフ会談で何らかの進展があるのか注目される」
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