中国・新疆ウイグル自治区が成立して70年を祝う式典に、習近平国家主席が最高指導者として初めて出席し、「民族の団結」をアピールした。習主席が訪れた狙いは何か。
経済発展で内需拡大を期待か
まずは、新疆ウイグル自治区で行われた式典について見ていく。
そもそも新疆ウイグル自治区は、1955年に成立。中国・北西部に位置し、面積は約166万平方キロ(全体の6分の1にあたる)。中国最大の自治区で、半数近くがイスラム教を信仰する、少数民族のウイグル族だ。
習主席は25日、新疆ウイグル自治区の成立70年を祝う式典に出席した。国家主席としてウイグル自治区の式典に出席するのは初めてだ。
習主席は式典に先駆けて24日「これまで国家の統一・民族の団結・社会の安定を断固として守ってきた。中華民族共同体意識をしっかり確立すべきだ」と話したという。
ウイグル族については、人権侵害があると欧米から非難されてきた。
新疆ウイグル自治区では、2014年に習主席が現地視察した際に爆発テロ事件が発生。テロや暴動が頻発した。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、こうしたことから習政権は、ハイテクの警備・監視網を構築し、少数民族の同化政策を推進してきた。
アメリカの国土安全保障省は先月、新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」の検査を強化。強制労働防止に向け圧力を強めた。
こうしたなか、今回の訪問をテレビが大々的に報道。空港では各民族が習主席を歓迎し、沿道では人々が中国国旗を掲げたと報じられた。
中国は共産党の指導のもと、新疆ウイグル自治区が安定し経済が発展したと主張していて、習主席の式典出席には自治区に対する政策が成功しているとアピールする狙いがあるとみられる。
また中国政府は、新疆ウイグル自治区を産業の拠点として重視し、観光も推進しているという。習主席は、新疆ウイグル自治区は「内需拡大の強化に貢献するべき」と発言しているという。
中国政府“無気力”を規制対象に
こうしたなか、中国国内では若者の失業率が過去最悪となっているとされる。今、若者の間で増加している「ねずみ人間」とは何か。
アメリカメディア「ビジネスインサイダー」は今年4月に「中国の疲弊した経済と労働環境に、多くの若者が落胆。パンデミック後には“寝そべり族”が注目された。しかし、“ねずみ人間”の生き方は“寝そべり族”よりもさらに無気力だ」と伝えている。
これまでに報じられてきた中国の若者には、こうした例がある。
アリ族「相応の職に就けない高学歴ワーキングプア」
そして、今増えている「ねずみ人間」は、本当に何もせず、一日中ベッドに横になって過ごす若者のことだ。
実際の”ねずみ人間”のライフスタイルは「食事やゲームなどベッドで一日中過ごし、深夜に就寝」「SNSに自身の生活を投稿」だという。
番組が話を聞いた、自称“ねずみ人間”の31歳の女性はこのように話す。
“ねずみ人間”増加の背景に何があるのか。
中国の今年の大学卒業生数は、過去最高の1222万人。ただ、先月の都市部の若者失業率は18.9%に達していて、大学を出てもなかなか就職ができないという現実がある。
そのため、中国政府も対策に乗り出している。中国政府は“無気力”を規制対象に据えた。
ロイター通信によると、中国当局は22日に敵意や悲観主義をあおるオンラインコンテンツを厳しく取り締まっていくと発表。「努力は無駄」「勉強は無駄」といった悲観論も調査対象にするという。中国政府の狙いとしては、無気力な若者の動画が拡散することで社会の秩序が乱れるのを防ぎたいとしている。
抗日戦勝80周年映画に賛否
政府と国民の溝は、こんな場面でも広がっている。政府が力を入れてきた「抗日戦勝80周年」の映画に批判の声もある。
一番の目玉と言われていた映画「731」。旧日本軍の731部隊が題材で、公開初日のチケット売り上げは約45億円。インターネットニュース上には賞賛や反日的コメントがあふれている。
その一方で、SNSには「言葉が出ない。悲劇性やリアリティを損なった映画」「愛国心を利用しただけの映画。描写もひどい」といった酷評もある。
映画を見た人は、まげにフンドシ姿の日本兵などが登場、捕虜同士が綱引きをして負けると処刑されるなど史実とは思えない設定が多数あったという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月30日放送分より)