ガザへの攻撃が始まってから、まもなく2年。アメリカのトランプ大統領が、ガザ地区をめぐって新たな和平案を示し、イスラエルのネタニヤフ首相が同意しました。人質の解放やイスラエル軍の撤退などが盛り込まれていますが、曖昧(あいまい)な部分も多く、停戦に至るかは見通せない状況です。
ガザ和平案“合意”
2期目のトランプ政権になってから、ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪れるのは4度目です。
(Q.ガザの和平は近いという自信は)
「とても自信がある」
和平案をめぐる会談は長時間に及び、記者会見のスタートは1時間ほど遅れました。
「待望の『和平への基本原則』を正式に発表する。“偉業”とも言われている」
全部で20項目ある和平案は【戦闘の終結】【人質全員の解放】【物資の搬入】といった項目から始まり、【イスラエル軍の撤退】【イスラエルがガザを占領・併合しないこと】【ハマスが武装解除し、ガザ統治に関わらないこと】などが挙げられています。
「アメリカがガザを所有すれば、壮大な土地開発が行われ、雇用創出にもなると各方面から好評だ。見栄でも皮肉でもなく“中東のリビエラ”は壮観だろう」
トランプ大統領が計画していた、ガザ地区の住民を移住させたうえでのリゾート開発は事実上、撤回されました。
戦後の統治は「専門的かつ政治と無関係なパレスチナ委員会」が暫定的に担うとしています。一方で、曖昧なことも多いのが今回の和平案です。
「イスラエルは武装解除と非軍事化の進捗に応じて撤退を進めるが、当面は安全地帯に留まるものとする」
イスラエル軍の撤退は段階的に進めるとしているものの、完全な撤退時期は明記されていません。さらに、ネタニヤフ首相が国連総会でも反対していた、パレスチナ国家の樹立については、ガザの再開発計画がうまくいけば「信頼できる道筋がようやく整うことになるかもしれない」といった曖昧な文言でしか盛り込まれませんでした。
ハマスは「検討する」としていますが、幹部からは「イスラエル寄りだ」いう声も出ていて、受け入れるかは不透明です。
「ハマスが大統領の計画を拒否するか、表向きは受け入れ裏で妨害すれば、イスラエルは自らの任務を完遂する」
ネタニヤフ首相は、ハマスが受け入れなかった場合の戦闘継続を匂わせていて、トランプ大統領も後押しすると明言しています。スムーズに和平が実現する保証はどこにもありません。
イスラエル国内向けの動画では。
「今までもハマスの条件をのみ、軍は撤退すべきと言われてきた。そんなことはしない」
トランプ氏“自画自賛”も実現性は
トランプ大統領が示した和平案、実効性はどうなのでしょうか。アメリカが提案した20項目の和平案、主なものはこちらです。
・イスラエルとハマス双方が合意すれば直ちに戦闘終結
・イスラエルが合意を公に受諾後72時間以内に人質全員が返還される
・その後、イスラエルも囚人やガザ住民を釈放
・ガザ地区は非政治的なパレスチナ委員会が暫定統治
・この委員会はトランプ氏が議長の平和評議会が監視・監督
・ガザからの強制退去は行わない。離脱・帰還は自由
・ハマスはいかなる形でもガザ統治に関与しない
この提案にハマスは応じるのか。イスラエル情勢に詳しい防衛大学校・立山良司名誉教授に聞きました。
「ハマスは和平案について、アメリカに説明を求めるだろう。ただ、孤立化して軍事的圧力を受けているうえ、トランプ氏は『地獄を見るだろう』とまで言っている。和平案を受け入れざるを得なくなるのでは」
ただ、この和平案について、立山さんはこう指摘しています。
「文章はたくさん書かれているが、具体的なスケジュールや合意に違反した場合の対抗措置などの記述はなく、いかようにも解釈できる内容だ」
例えば、イスラエル軍撤退について、和平案では人質解放や治安の改善など進捗に合わせて、3段階で撤退するとしています。ただし、「テロの脅威がなくなるまでは、安全地帯にイスラエル軍が駐留する』とも書かれています。
「『テロの脅威が完全になくなる』とは何をもって解釈するのか。ネタニヤフ氏がSNSで言う『撤退しない』が本当のところでは。イスラエルは撤退せず、事実上の占領を続けるだろう」
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