北朝鮮は10日、朝鮮労働党創建80年に合わせて大規模な軍事パレードを実施するとみられている。それを前に各国の首脳級要人が北朝鮮入りをしている。
知られざる北朝鮮の軍需産業
10日にも行われるとみられる軍事パレードについて見ていく。
北朝鮮では今年が国防5カ年計画最後の年に当たる。4日「国防発展2025」という兵器展示会を行った。金正恩総書記は、この展示会について「核抑止力を根幹とする軍事力構造を現代化、高度化してきた重大産業の結実が集結している」と述べた。
では、どういうものが展示されたのか。アメリカ本土も射程圏内のICBM「火星19」や、超音速巡航ミサイル、各種ドローン、そして、展示会の一環として5000トン級の新型駆逐艦「チェヒョン号」を金総書記が視察した。
さらに、10日、早ければ9日夜にも数万人規模の大規模な軍事パレードが実施される見込みで、展示会の兵器も登場するとみられている。
そこにはロシアのメドベージェフ前大統領や中国の李強首相などが出席。KBSによると、金正恩総書記が言及した秘密兵器が公開される可能性があるという。
そんな北朝鮮が目指すのは兵器輸出の拡大だという。新アメリカ安全保障センターのバートレット研究員は、過去に「軍事パレードを公開することは、米国の敵対国にとっては武器のカタログであり、北朝鮮にとっては海外から顧客を招き寄せる目的がある」と分析していた。
では、知られざる北朝鮮の軍需産業はどうなっているのか?
まず、弾薬の製造について、韓国のキョンヒャン新聞はこう報じている。韓国国防省国防情報本部の報告によると、弾丸の原料となる金属や火薬などは自主調達。また、ミサイルに用いる半導体は制裁の対象外として購入した商用品から取り出し、流用しているとみられている。軍需工場は200カ所以上に上り、主要な工場は地下要塞化されているということだ。
またロイター通信によると、北朝鮮製ミサイルはウクライナ侵攻で収集したデータに基づいて改良されるなど、精度が大幅に向上したという。
他国でも北朝鮮製の兵器を買うという実態があるというが、KOREA WAVE編集長の西岡省二氏によると、北朝鮮の武器は現在ロシアを経由してその他の国にも売られている可能性が高いという。
実際、韓国国防研究院によると、北朝鮮はロシアへのミサイルや弾薬などの物資提供だけで2兆9400億円を得ているという。
韓国銀行が推計する北朝鮮の去年のGDPはおよそ3兆9700億円なので、ロシアからのおよそ2兆9400億円はGDPのおよそ75%にあたる金額だという。
米朝“直接会談”模索か
こうしたなか、今月にも米朝首脳会談が行われるという報道もある。
これまでの米朝関係といえば、2018年6月にシンガポールで第1回米朝首脳会談が行われた。2019年2月にベトナムのハノイで第2回首脳会談。そして、同じ年の6月には、南北の軍事境界線・板門店で電撃会談が行われた。しかし、非核化を巡る交渉は暗礁に乗り上げた。
そして、今年再び米朝首脳会談が行われる可能性がある。トランプ大統領は8月、米韓首脳会談で「金正恩総書記と私は非常に良い関係にあり、今もそのままだ。今年中に会いたい」と意欲を示した。
一方、金正恩総書記も先月の最高人民会議の演説でトランプ大統領について「私はまだ個人的な良い思い出を持っている」と発言し、両者で信頼関係を強調した。
朝鮮日報によると、今月31日から韓国・慶州市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて米朝首脳会談が実現する可能性があるという。
実際、今月31日に外交団向けの板門店ツアーを企画していたといい、国連軍司令部は板門店への立ち入りを許可していたが、6日までに立ち入り許可が取り消されたとの報道もある。
会談を行う双方の思惑について、西岡氏は、アメリカはICBMの放棄と平和達成のアピールが狙い。一方、北朝鮮は核保有認知と制裁解除だという。
そして、今後日朝首脳会談の可能性はあるのだろうか。これまで拉致問題解決に積極的な姿勢を示していた自民党の高市早苗新総裁に対して、総裁選後、被害者家族からは解決を求める声が上がっている。
韓国の李在明大統領が演説
韓国は北朝鮮にどのような姿勢なのか。
韓国の李在明大統領は、先月23日、就任後初めてとなる国連総会での一般討論演説で「軍事的緊張を和らげるとともに南北間の信頼を回復する道筋を一貫して目指す」と述べ、境界線付近の北朝鮮向け宣伝放送を停止した最近の措置に言及した。そのうえで「北朝鮮との交流を徐々に拡大することにより、持続可能な平和へ向けた道を切り開く」と語った。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月9日放送分より)