アフリカのカメルーンで大統領選挙が行われ、半世紀近く大統領を務める92歳のポール・ビヤ氏の再選が有力視されている。長年大統領の座に就き続けられる理由は何なのだろうか?
再選目指す92歳現職
「今43歳ですが、これまで別の大統領を見たことがありません。変化をもたらす“新しい顔”が見たいです」
「買い物、仕事、生活のすべてが苦しい。だからこそ、私は“変化”を望んでいます」
12日に行われたカメルーンの大統領選挙。再選を目指すビヤ大統領は現職の国家元首としては世界最高齢の92歳で、再選すれば7年の任期満了時には99歳になる。
1982年、49歳で大統領に就任したビヤ氏。2008年には、憲法改正で大統領の任期制限を撤廃。国民の反発が暴動に発展したが体制は揺るがず、43年におよぶ長期政権となっている。
今年2月、「青年の日」の演説でもビヤ大統領は再選への意欲をにじませた。
長期政権の背景には、政治・経済の両面で深い結びつきを維持してきた旧宗主国フランスの支援があると言われている。
さらに近年は中国との結びつきも強め、国際社会での存在感を強めている。
一方、国内ではめったに姿を現さず、秘密主義的なイメージから「スフィンクス」と呼ばれているというビヤ大統領。今回の選挙戦でもAIで生成した画像や人形などを使い、ほとんど姿を現さなかったという。
そんななか、存在感を放っているのが1994年に結婚した37歳年下の妻、シャンタル夫人(54)だ。自身のSNSで派手なファッションを披露し、特徴的なヘアスタイルがたびたび話題となっている。
今回の大統領選挙には、ビヤ大統領を含む9人が立候補している。結果は15日以内に発表される見通しだ。
政権維持の背景とは
カメルーンの92歳のビヤ大統領が半世紀近く政権を維持している背景を見ていく。
AP通信によると、定数180議席の国民議会において与党が152議席を占め議会も掌握している。そうした盤石な体制を背景にビヤ大統領は多くを海外で過ごしているそうで、アルジャジーラによると、7年の任期のうち4年半をスイスで過ごしたこともあったという。
ビヤ大統領に対して国民の間では高い失業率や汚職の問題など不満が高まっている。
しかし、大統領選へのライバル候補者の立候補を禁止し野党が分裂した状態のため、AP通信はビヤ大統領の当選が確実視されていると報じている。
こうした状況下でクーデターなどが起こる可能性はあるのだろうか?
アフリカ情勢に詳しい東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターの武内進一センター長に話を聞いた。
カメルーンは独裁国家転覆の要因である軍事クーデターが起きにくい状況があるという。武内さんはカメルーンは多くの地域がフランスから独立した地域だが、一部のイギリスから独立した地域と内戦状態となっている。軍にとってビヤ政権を倒しさらに内戦の継続ともなるとメリットがないというのが現状だという。
さらに、武内さんによると、国民の間で大統領に対する不満が高まっているとはいえ、独裁国家でありながら公然と大統領を批判することが許されるなど国民への締め付けが厳しくなく、うまくガス抜きができている側面がある。そして何よりもビヤ大統領に代わる指導者が存在せず、現状打破に対して諦めのような空気が国民に広がっていて、ビヤ大統領の再選が長らく続いているのが現状だという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月14日放送分より)