アフリカのマダガスカルは今、深刻な政情不安に陥っている。大規模な反政府デモが発生しているだけではなく、市民に軍の精鋭部隊が協力。事実上のクーデターが起きているのだ。大統領は国外に出国したとされ無政府状態となっている。
何が?大統領は国外へ脱出
日本から1万キロ以上離れたアフリカ大陸の南東沖に浮かぶ島国・マダガスカル。日本の1.6倍ほどの面積におよそ3000万人が暮らしている。
美しい海とカメレオンやキツネザルなどの固有種が生息していることで有名だ。日本が輸入するバニラのおよそ9割がマダガスカルからのものだという。
そんなマダガスカルで反政府デモが起きたのは先月25日。きっかけは停電や断水などへの不満だった。
マダガスカルでは国民のおよそ75%が貧困ライン以下で生活しており、電力を利用できる人は全体の3割ほどにとどまっているという。
苦しい生活への不満が大きなうねりとなり、大規模な反政府デモに発展し衝突などで少なくとも22人が死亡している。
この危機的状況にラジョエリナ大統領はこう述べている。
これまでラジョエリナ大統領を支援してきた軍の精鋭部隊、CAPSATがデモ隊に協力。大統領を裏切る形となっている。
「誰もマダガスカルを破壊することは許さない」
不満が爆発し抗議活動に発展
武力による違法な権力掌握と主張する大統領。一方、マダガスカル軍は14日大統領の国外逃亡を受け権力を掌握したと宣言した。
政変に突入した母国を憂う日本に住むマダガスカル人のエリックさん(61)に話を聞いた。
そうした不満が爆発し、今回の大規模な抗議活動に発展したという。
中心となったZ世代の若者は、ユーロニュースの取材に、同様に若者中心のデモで政権が倒れたネパールとスリランカに触発されたと答えたという。
なぜ豊富な天然資源を持ちながら貧しい国のままなのか。そんな疑問が怒りの根底にあるとエリックさんは言う。
なぜ?クーデター繰り返し 続く貧困
世界でも特に貧困で苦しんでいる国といわれるマダガスカルの現状から見ていく。
世界銀行の報告書によると、マダガスカルでは都市住民の60%以上が電力など基本的なサービスが不足している地域で暮らしていて、中小規模都市の住民で直接、飲料水を利用できるのはわずか20%未満だという。
実際、先月25日に勃発した今回の大規模デモも、きっかけは停電と断水だったという。
外務省の資料によると、マダガスカルは1960年にフランスから独立して以来およそ10年おきにクーデターが発生し、2002年にはラチラカ大統領がフランスへ亡命。2009年にはラバルマナナ大統領がクーデターで南アフリカへ亡命。そして今回は現職のラジョエリナ大統領が国外へ逃亡したとも報じられた。
繰り返されてきた大統領の国外逃亡に大きな影響を与えてきたのが軍の存在だ。
今回、デモ隊の味方についた軍の組織CAPSAT部隊は、2009年のクーデターではラジョエリナ氏を支持したが今回は不支持となり政変を決定づけた。
ドイツメディアによると、この部隊は最前線の戦闘部隊ではないものの、人事管理、行政支援、物流、技術サービスなど軍の重要な側面を管理するエリート部隊で、国内の有力者やビジネスエリートとのつながりが強いという。
彼らが若者のデモに同調した要因について、彼らは自分たちの利益と大統領が一致するのかどうか疑問視したとみられていて、つまり、自分たちも利益次第で味方にも敵にもなるということを繰り返してきたと報じられている。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年10月15日放送分より)