大きなニュースの陰に隠れてしまっているけれど、大事なニュース、面白いニュースはたくさんあります。そこで今日はあまり報じられないけど、知ると「そうだったのか!」と言ってしまうような、日本のニュース、そして海外のニュースを解説してまいります。
インバウンドは過去最高の勢い!それでも国内線は赤字!?
今年もたくさんの外国の方が日本を訪れています。上半期で初めて2000万人を超えた、と日本政府観光局から発表がありました。どこの観光地にいってもたくさんの外国人観光客であふれていますよね。でもこんな驚きのニュースがあるんです。
飛行機に乗る人は増えていて、去年の利用者は1億人以上とコロナ前の水準まで戻っています。それなのに今国内線は赤字状態なんです。国内の主要6社で見ると、2024年度は公的支援がなければなんと全社が赤字です。一体なぜこんな事態となっているのでしょうか。
以前は「ドル箱路線」なんていって、利用客が多くて収益性が高い路線がいくつもありました。羽田−新千歳、羽田−福岡間などが代表的です。でも今はそんなに儲からなくなってきたと言われています。
理由の一つはコスト増。円安や物価高の影響です。今年の5月に日本航空が国土交通省に提出した資料によると、2024年度の国内線費用は燃油費が138%、整備費が170%など、2018年と比べて大きく増えていることがわかります。
国際線ですと、燃油サーチャージ、と言って燃油価格が上がってきた場合に運賃に上乗せされる料金がありますよね。でも国内線にはありません。最近は燃料費が上がっていますから、結果的に航空会社が負担することになっています。また、飛行機の機体は海外から買っています。円安でこの購入費であったり、整備費のようなものも大幅に上がってしまっているんですね。
さらにビジネス利用が減ったことも赤字の原因と言われています。会議や商談などで飛行機を利用するビジネス客は、「どうしてもこの日のこの時間に」ということで多少値段が高くてもチケットを買ってくれます。でもコロナ以降リモートでの打ち合わせが普及したことで、ビジネス利用の客が減ってしまっているのです。つまり高い価格の航空券が売れにくくなってきた、というわけです。つまり最近の国内線は座席は埋まっていても、客単価が下がっているんですね。
それなら今増えている外国人観光客なら!?と思いますよね。円安ですから海外から来た人には安く感じるはずです。でも残念ながらあまり増えていないんです。その理由は新幹線です。
東京―大阪間で見てみましょう。15年前と比べてJR、つまり新幹線の利用客は768万人から1037万人まで増えていますが、飛行機の利用客はほぼ横ばい、ちょっと減っているんです。こうなると飛行機の値上げもなかなか難しくなってしまいます。
実は海外の人に今新幹線が大人気なんです。時間の正確さや乗り心地の良さ、そして短時間での清掃作業など、新幹線自体が観光スポット化しているんですね。
でもこのまま国内線の赤字状態が続いてしまうと路線が減ったり、経営が厳しくなったり、ということがあるかもしれません。そこで最近は航空会社ではライバル会社同士で連携するなどの協力体制をとっています。例えば日本航空や全日空では多くの空港で搭乗口での改札機を共通のものにしたり、整備部門も統合したり、機内用品の積み込みを協力し合ったりしているんです。
今国内線にも燃油サーチャージを導入しようか、という動きも出始めています。これからどうなるのか、注目です。
中国人観光客が増えても、日本は儲からない!?
今年日本を訪れた外国人観光客が使ったお金は上半期だけで4兆円以上と物凄い金額です。
一番多く日本に来ている国は韓国、僅差で中国となっていますが、その中国人観光客について驚きのニューストリビアがあります。
日本にたくさんの中国人が遊びに来ても、儲かるのは中国…一体どんな仕組みなのでしょうか。
まず団体旅行の場合、扱うのは中国の旅行会社です。そして日本での受け入れも中国系が多くなっているんです。バスの車両やガイドさんも中国系、泊まるホテルも中国系、免税店も中国系、食事も中国料理…そんな中国系の囲い込みが日本で今起きていまして、これは中国が世界中でとっている手法なんです。
もちろん観光地のお土産など一部日本の企業にもお金は落ちますが、なるべく中国系企業内で済ませよう、そんな形が出来上がってきているんですね。
現在日本には87万人もの中国の方が暮らしています。まもなく100万人に達する勢いということで各地にチャイナタウンのようなものが出来ています。まさに巨大な中国経済圏が日本にもできている、ということです。
イスラエルがガザへの攻撃をやめるかどうかはまだわからない!?
イスラエルとハマスとの戦闘開始から丸2年が経過しています。先日はハマスが人質を解放するなどようやく停戦?というところまで来ています。しかし完全に停戦となるかどうかはまだまだ先が見えない状況なのです。
イスラエルは政党の数が多い、というのは皆さんご存知でしょうか。イスラエルは日本と違って完全比例代表制の1院制です。日本は小選挙区と比例との組み合わせですが、イスラエルは比例のみです。小選挙区では大きな政党が議席を得やすいですが、比例は一番多くの票をとった1位だけ、ではなく獲得した票数に応じて議席が分配されるため、小さな党も議席を得やすくなります。
政党の数が多い結果、議会の過半数は61にもかかわらず、最大与党でも32議席しかありません。そのためイスラエルは今6つの政党で連立政権を組んでいます。その中の1つ、極右政党は「パレスチナの自治は認めない」という極端な姿勢をとっています。今の地位を守りたいネタニヤフ首相にすれば連立が解消されるのはイヤなわけです。ですから首相本人の意向などいろいろな要因はありますが、この連立政権、というのもガザへの攻撃が長引いた要因の一つであり、これからも停戦が守られるかはまだわからない、そんな状況となっているんです。
そんな中、ガザへの攻撃を続けていたイスラエルには世界の批判が集まっています。イスラエルをけん制するためにパレスチナを国家として承認する、そんな動きも加速しました。
最近イギリスやフランス、カナダもパレスチナを国家として認めました。でもドイツやイタリア、そして日本も国家承認を見送っています。
ドイツは過去にユダヤ人約600万人を殺害しています。そのためイスラエルに頭があがりません。一方で日本やイタリアが承認しないのはアメリカへの気遣いです。イスラエルの味方であるアメリカはパレスチナを承認しません。日本はアメリカに頭が上がらない、というわけですね。
これからイスラエルとガザとの停戦は維持されるのか、カギとなるのはイスラエルの国内の動向です。これからのニュースに注目していてください。
(池上彰のニュースそうだったのか!! 10月18日OAより)
なぜ今年はサンマが豊漁?日銀が世界からクレーム!?など秋のニューストリビアの池上解説はTVerへ!!