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ABEMA NEWS

2025年10月30日 20:15

なぜトランプ大統領は米中首脳会談の“直前”に核実験を指示したのか? 会談は本当に「満点超え」だったのか? 現地記者が解説

なぜトランプ大統領は米中首脳会談の“直前”に核実験を指示したのか? 会談は本当に「満点超え」だったのか? 現地記者が解説
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 30日、韓国で米中首脳会談が行われた。トランプ大統領は「10点満点の12点」と話したというが、その“内実”と会談直前にトランプ大統領が核実験開始を指示した理由などについて、現地・韓国にいるANNワシントン支局 梶川幸司支局長に聞いた。

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 本当に満点を超えるような会談だったのか?

 梶川氏は「現時点ではトランプ大統領が記者団に対して“成果”を一方的に主張しているに過ぎず、実際の会談の中身は米中両政府が今後公式に発表する声明を見ないと判断できない。だが、米中が100%を超えるような関税をかけ合うことによって世界が貿易摩擦に巻き込まれるような事態は当面なくなり、緊張緩和に向けて一定程度双方が歩み寄ったとみられる」と説明。

 さらに、「歩み寄るということは、当然、アメリカも何らかの譲歩をする」として「今回の首脳会談の最大の焦点は中国が7割ものシェアを握っているレアアースの輸出規制だ。トランプ政権は中国に対して一時は145%もの追加関税をかけたものの、具体的な成果も勝ち取れないうちに“休戦”に追い込まれたのは、レアアースというアメリカの製造業や軍需産業の『急所』を中国に握られていたからだ。中国は今回、今月発表したレアアースの輸出規制を1年間停止したとして、トランプ大統領は『問題はすべて解決した』としている。また、中国はアメリカ産大豆の輸入再開を認めたという。ではアメリカが何を譲歩したかというと、『レアアースの輸出規制を理由とした100%の追加関税の発動』を撤回したとみられ、フェンタニルという合成麻薬の流入を理由に中国にかけていた20%の追加関税のうち10%を引き下げた。トランプ大統領が目先の利益、例えば大豆の輸入再開を認めてもらうために、台湾に関する歴代政権の立場から逸脱するような発言をしたり、AI向けの高性能半導体の売買で譲歩するのではないかと危惧されていたが、台湾についても高性能半導体についても話さなかったとしている」と述べた。

 米中会談についてアメリカメディアは「敵対的な行為の一時的な休止に過ぎない。この結果は本質的に貿易政策をトランプ2次政権発足時の状態に戻すものだ。リセットに過ぎない」(ブルームバーグ通信)などと評価。

 梶川氏は「米中の貿易摩擦は解消に向けて一歩前進したと言えるが、レアアースの輸出規制も1年後に中国がどう判断するか分からない。トランプ大統領は来年4月に中国を訪問するというが、今後の展開は不透明だと言わざるを得ない。レアアースによって米中の力関係に変化が生じたことで、神経戦が長く続く時代に入った」とした。

 トランプ大統領が会談前に「核実験を開始するよう指示した」とSNSに投稿した狙いについては「トランプ大統領は専用機の機中で『他の国(=中国とロシア)もやっているからやらざるを得ない』と話しているが、核兵器の実験を指示したというだけで、どんな実験なのか具体的な説明をしていない。ただし、増強の一途を続ける中国の核戦力を抑え込む狙いがあるとみられる。ストックホルム国際平和研究所は6月、中国の核弾頭数は昨年よりも100発増えて600発と推計している。ロシアもアメリカも5000発以上保有しているが、中国の力がどんどん増えていることは事実だ。アメリカとロシアの間には、新START(新戦略兵器削減条約)という核軍縮の条約があるが、来年の2月に期限切れを迎える。プーチン大統領はこの条約の1年延長をアメリカに提案しているが、これはお金のかかる軍拡競争を避けたいという狙いがありトランプ大統領も立場は同じだ。ところが、中国は核軍縮の条約に入っていない。今回の動きは核兵器の削減義務を負っていない中国に対して、米中ロの3つの大国で『核の管理をしよう』と迫る意図があると見られる。ただし、3つの大国だけで世界の秩序を決めるような流れになりかねない、という点は注意が必要だ」と述べた。

(ニュース企画/ABEMA)

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