古代エジプトの宝物10万点を収蔵する、大エジプト博物館が1日、カイロ近郊にオープンした。開館に向けさまざまな支援を行ってきた日本。記念式典には、三笠宮家の彬子さまが出席された。
大エジプト博物館 全面開館
「きょう我々は大エジプト博物館のオープンを皆で祝います。そして、現在と未来の歴史の新たな章を書き記すのです」
エジプトの首都カイロ近郊、ギザの3大ピラミッドの近くに建設された。大エジプト博物館が1日、全面オープンし4日から一般公開される。
大規模な記念式典が行われ各国の首脳らが出席。日本からは、三笠宮家の彬子さまや東京都の小池知事らが参加した。
ドローンショーなども行われ、ピラミッドやツタンカーメン王のマスクが夜空を彩った。
国を挙げての式典が行われた大エジプト博物館は単一文明に特化したものとしては、世界最大規模を誇る博物館だという。
エントランスでは、在位およそ70年、最も偉大な王とされるラムセス2世の巨大な像がお出迎え。
大階段には、さまざまな王族の石像などがケースに入れられることなく展示されており、古代エジプトの雰囲気を間近で感じることができる。
ほかにも、壁画やモニュメントなど収蔵されている古代エジプト文明の宝物はなんと10万点。
なかでも、最大の目玉がツタンカーメン王の黄金のマスクが展示される、専用展示室だ。ツタンカーメン王の財宝、およそ5000点が展示され、初公開のものも多数あるという。
「とても期待しているよ!必ず行かないとね」
「ぐるっと回るだけでエジプトの歴史を見られるのはいい」
実はこの博物館、日本と大きな関わりがある。
大エジプト博物館の総工費は、日本円でおよそ1540億円。日本政府はその半分以上、およそ842億円の円借款を行ったのだ。
「大エジプト博物館のオープンは、本当に素晴らしいこと。すべてのエジプト人にとっての誇りです」
目玉はツタンカーメン専用の展示室
構想から30年以上を経て1日に開館した大エジプト博物館。改めてその魅力を見ていく。
カイロ近郊、ギザの三大ピラミッド近くに建てられた大エジプト博物館の敷地面積は、およそ50万平方メートル、東京ドーム10個分に相当する。
現地メディアによると、展示施設に加えて、庭園や会議施設、教育施設やフードコートなどが併設されているという。
建物の設計を行ったのは、アイルランドの設計事務所で、1583件の応募のなかから選ばれたということだ。
古代エジプトの神殿をモチーフに建設されていて、ラムセス2世の像に太陽の光が差し込む仕掛けになっているそうだ。
博物館の目玉はツタンカーメンに関する展示で、その規模は想像を絶するスケールだという。ツタンカーメン専用の展示室には、黄金のマスクをはじめ、およそ5000点が展示されているという。
これまで、複数の博物館に分散していた展示品を一挙に集め、ツタンカーメンのミイラ以外は、すべて展示されているとのことだ。
そして、博物館に日本が大きく貢献した象徴として、ツタンカーメン専用展示室のすべてに日本語の解説文が付いているという。
博物館のオープンに、エジプト政府は経済面で期待を寄せている。エジプトでは観光関連の収入がGDP=国内総生産のおよそ15%を占める。
ロイター通信によると、新型コロナウイルスで、大きな影響を受けた観光業だが、去年、エジプトを訪れた観光客は1570万人で、消費額は過去最高の2兆3000億円に達した。
そうしたなか、エジプト政府は博物館を観光の起爆剤に位置付け、2030年までに観光客を3000万人まで増やしたい考えだ。
ちなみに、気になる入場料は「エジプト国民」「エジプトに住む外国人」「外国に住む外国人」の3つの区分で料金が異なる。私たち日本人を含む外国人の入場料は、およそ4700円で、エジプト国民は、およそ650円。
インターネットで事前に購入できるほか、当日券も用意されているという。いよいよ4日から一般公開が始まる。
大きく貢献した日本人考古学者
この大エジプト博物館には、日本の技術がいかされているが、大きく貢献したのが、エジプト考古学の第一人者、吉村作治さん(82)だ。
「友好国である日本が、この文明の大プロジェクトのために提供してくれた。大きな資源を忘れることはありません」
「うれしいですよ。シシ大統領の演説ね。ベストフレンズって言ってたもんね。うれしいな」
記念式典に参加した考古学者の吉村さんは、シシ大統領が式典で、日本への感謝の気持ちを伝えたことがうれしかったと語った。
日本とエジプトの考古学研究における協力は、1960年にさかのぼる。ラムセス2世が建造したアブシンベル神殿は、ダム建設で水没の危機に見舞われた際、高台に移築するプロジェクトに日本が参加。
その後、1966年に吉村さんがアジア初のエジプト調査隊を組織。およそ60年にわたり、エジプト文明の解明に挑み続けてきた。なかでも、世界に衝撃を与えたのが、クフ王のピラミッド内部の電磁波探査だ。内部に複数の空間があることを発見し、それまでのピラミッドへの理解を大きく塗り替えた。
「全部、石を詰めるんじゃなくて、空間をたくさん作ることによって、ピラミッドは構成。そういう理論に移るんですよ。そういう意味では今回我々が発見した“女王の間”の部屋(空間)は大変意味があると思っています」
クフ王のピラミッドのそばでは王の魂が死後、太陽神ラーと旅をすると信じられた。クフ王の船が発掘されているが、吉村さんはその近くで手つかずのまま眠っていたもう1隻の船の位置を特定し、修復と保存のプロジェクトを主導している。
こうした功績から、2010年には、エジプト考古最高評議会が吉村さんにゴールド・メダル賞を授与した。
そして今、開館を迎える大エジプト博物館。ここには、吉村さんの発掘した出土品が収められ、“太陽の船”の修復作業も公開されている。
計画段階から協力してきたという吉村さん。完成を危惧したこともあったという。
そんな吉村さんに今後について、尋ねると…。
吉村作治さん 発掘の品も
長年、エジプトの考古学に貢献してきた吉村さんだが、吉村さんの研究は新たな博物館でも行われていくという。
大エジプト博物館では、ツタンカーメンの展示と並んで、目玉とされるのが第二クフ王の船の展示だ。
クフ王は紀元前26世紀ごろ、第四王朝の王で、ギザの三大ピラミッドのうち一つが、クフ王の墓とされていて、付近から発見された2隻の木造船が、博物館の敷地内の専用の施設で展示されることになっている。
このうち「第一の船」は1954年に発掘。その後修復され、1980年代初頭に一般公開されているが、「第二の船」は劣化が著しく、長年、発掘は不可能とされてきた。
そこで、発掘作業に乗り出したのが、エジプト考古学者の吉村さんです。2011年に発掘作業を開始し、これまでにおよそ1650に及ぶすべての部材の発掘を完了させた。
そして、博物館の専用施設で修復作業が行われる予定で、その様子は来館者も見学できる。2030年の修復完了を目指しているということだ。
吉村さんは、「修復途中の船を見て『完成したらどうなるのだろう』と、想像力を働かせて見学して欲しい。こうした経験は貴重でダイナミックなもの。日本人の方がたくさん来てくれればうれしい」と話していた。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年11月4日放送分より)




















