4日、米東部ニューヨーク市長選で、民主党の急進左派、ゾーラン・マムダニ・ニューヨーク州下院議員(34)が当選した。なぜニューヨーク市民は彼を選んだのか、そして、トランプ政権にどのような影響を及ぼすのか、ANNニューヨーク支局・小松靖記者に聞いた。
━━アメリカ政治の中で、ニューヨーク市長選が持つ意味とは?
「全米最大都市であるニューヨークのトップとなると大きな影響力を持つが、その政治力はニューヨーク市に限られる。ただ、シンボルとして、時にはアメリカ大統領と肩を並べてホワイトハウスにも物を言える立場にもなるため、ニューヨーク市長選挙は全米レベルの注目を集めると言ってもいい」
━━マムダニ氏が当選、ニューヨーク市民、現地メディアはどのように受け止めているか?
「今ニューヨークは『新しい時代が始まるかもしれない』という期待感に包まれている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は『グローバル資本主義の中心地ニューヨークで民主社会主義者のリーダーが誕生した。34歳のマムダニの勝利は、ニュージャージー州とバージニア州の知事選における民主党の勝利と相まって、2026年の中間選挙を控え分裂状態にあった民主党にとってまさに必要としていた追い風となった』と報じている。つまり、『地方選挙が国政に影響していく』と予言している。ニューヨークという枠を超えたところにすでに話が移っているようだ」
━━マムダニ氏はどういった人物なのか?
「元々アフリカ・ウガンダ出身のインド系の移民でイスラム教徒という大変異色のバックグラウンドの持ち主だ。7歳でニューヨークに移住してきて、2018年に市民権を得た。また、自身で『民主社会主義者』と名乗っており、自身と同じ移民や、必ずしも所得が多くない若者のために、高くて手が届かないものになってしまったニューヨークをもう一度取り戻すことを掲げている」
━━マムダニ氏は選挙で何を訴えたのか?
「『古い政治からの脱却』と『ニューヨークをエリートから取り戻す』と訴えた。これは移民でありイスラム教徒であり、そしてインド系といういわゆるマイノリティという属性を持っている彼だからこそ説得力を持って有権者に伝わったメッセージだろう」
━━ニューヨークでは「9.11同時多発テロ」が起きているが、イスラム教徒であることは今どのように捉えられるか?
「マムダニ氏の親戚の女性の方が9.11同時多発テロの後にニューヨークに住んでいたというが、イスラム系であるということから地下鉄に乗ることに危険を感じていたという。つまりイスラム教徒を敵視するという空気が当時蔓延しており、まだそれが根強く残っているという空気もあるという。マムダニ氏は『そういった背景も含め差別や偏見と戦う』と訴えてきた。パレスチナの問題、イスラエルの問題に関しても非常に機微に触れる発言をしたこともあり、これが反対勢力からすると『反イスラエルのコメントをした』として批判を浴びるという経緯もあった。本人の宗教、それからバックグラウンドに対する偏見との戦いでもあったが、だからこそ、同じような境遇にある人たちの共感を得ることができた」
━━マムダニ氏の人柄は?
「アメリカのメディアでは一言目に『カリスマ性がある』と形容される。非常にチャーミングな笑顔で人懐っこいキャラクターだ。スーツ姿で寒中水泳してびしょ濡れになったり、夜勤の人たちのために24時に街角で演説を始めたり、あるいはLGBTQのコミュニティのためにゲイバーに現れてメッセージを発したりした」
━━マムダニ氏の勝利はトランプ政権にどのような影響を及ぼすか?
「大統領選から1年経ち、1年後には中間選挙があるが、民主党をはじめとするリベラルはまだ敗北から立ち上がれていない。トランプ大統領の強大な権力・関税・大統領令で縛られてきて、民主党は対抗軸を打ち出してこられなかった。だが、きょう話を聞いたマムダニ支持者の若い女性の方は『トランプに負けた民主党はダメな民主党・ダメなリベラルだ。今回、自分が好きだった民主党が帰ってきたような気分になったことが嬉しい。期待感が一気に膨らんだ。もしマムダニさんが民主社会主義者としての政策をこの資本主義のど真ん中であるニューヨークで成功させられたら、アメリカの他の場所でもできるんじゃないか。だとしたら、それは来年の中間選挙に向けて強大なトランプ政権に対抗していくこともできるようになる。だからここからが勝負どころだ』と語っていた」
(ニュース企画/ABEMA)
