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2025年11月12日 18:00

中国・習近平政権が掲げる内需拡大策 ビザ免除延長で海外旅行客増を目指す

中国・習近平政権が掲げる内需拡大策 ビザ免除延長で海外旅行客増を目指す
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 中国では米中貿易戦争で外需が低迷する中、習近平政権は「内需拡大」を掲げて、さまざまな策を打ち出している。

観光客増へ…ビザ免除延長

 まずは、中国が目指す内需拡大策について見ていく。

 中国共産党は先月、来年からの経済政策の指針となる「5カ年計画」の骨格を発表した。内需拡大へ、消費を力強く喚起するとして、個人消費を拡大して内需主導の経済成長を目指すとしている。

 そして、そのために海外からの観光客を増やそうとしている。

ビザ免除延長で観光客増を目指す
ビザ免除延長で観光客増を目指す

 中国外務省は、今年の年末までとしていた滞在30日以内の「短期ビザ」免除措置について、来年12月31日まで1年間、延長すると発表した。これによって日本など40カ国を超える国が免除措置を延長される。

 中国外務省はこのビザ免除措置の延長について「対外開放のレベルを拡大し、人的往来を促す」ためのものだと説明していて、インバウンド観光客を内需の拡大に生かす考えを示した。

中国インバウンドの現状
中国インバウンドの現状

 中国を訪れる観光客はどのくらいいるのか中国総局が取材したところ、去年、中国を訪れた観光客は約1億3000万人で、コロナ禍前の水準の9割以上まで回復したという。

 地域別に見ると、カザフスタンなど中央アジア諸国や東ヨーロッパ、南米のスペイン語圏などからの観光客が増加していて、一時スペイン語のガイドが不足する事態も発生していたという。

 インバウンドの旅行などを扱う中国の旅行会社シートリップによると、これまで北京や上海、香港、マカオなど沿岸部の都市が人気だったが、それに加えて、最近では内陸部の都市も人気となっているという。

 例えば、「ジャイアントパンダ繁殖研究基地」のある「成都」や崖に沿って建てられた「洪崖洞」が有名な「重慶」、それから秦の始皇帝のお墓の周りから多数発掘された、兵士や馬の形をした実物大の像が展示されている「秦始皇兵馬俑博物館」のある「西安」など、いずれも自然や伝統文化などが感じられるとして人気だという。

インフルエンサー招待
インフルエンサー招待

 大都市の北京でも今年6月、免税店の数を増やし、そこで扱う商品の種類も増やすなど対策を取っている。

 また、中国の旅行会社シートリップによると、アルゼンチン、韓国、日本、タイ、シンガポール、カザフスタンの6カ国から、インターネットなどで強い影響力を持つインフルエンサーを招待して漢服や国賓級の食事などでもてなしたという。

 その後、参加したアルゼンチンのインフルエンサーが紹介したレストランを中国旅行の目的地として挙げる人が急増したという。

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海外企業も呼び込み 日本も注目

 中国は観光客だけでなく、海外企業も呼び込もうとしている。

中国の巨大市場を海外にアピール
中国の巨大市場を海外にアピール

 5日から上海で「中国国際輸入博覧会」という催しが開かれた。中国商務省などによると、155の国と地域から約4100社が出展し、出展数は過去最多を更新したという。

 博覧会で李強首相は「中国は世界のサプライチェーンの安定を保障する。積極的に輸入を拡大し、中国の超大規模市場を世界と分かち合う」と、14億人の人口を抱える市場を海外にアピールした。

日本企業も多く出展
日本企業も多く出展

 この博覧会には日本企業も多く出展した。

 日本企業ではパナソニックホールディングスなど300社以上が出展しているが、パナソニックホールディングスの本間哲朗副社長は、博覧会の中で、「中国市場で勝った企業だけが世界で勝てるというのが、我々が中国市場に対して抱く信念」だと中国市場の重要性を語った。

パナソニックホールディングスが展示したドラム式洗濯乾燥機
パナソニックホールディングスが展示したドラム式洗濯乾燥機

 パナソニックホールディングスが展示したドラム式洗濯乾燥機は、中国の消費者を強く意識した商品だという。例えば、この洗濯機には4つのドラムがついているが、これは家族であっても洗濯物を分別し、別々で洗濯するという中国の習慣を取り入れたもので、約86万円と強気の価格設定を行っているという。

 中国では、過当競争によって値引き合戦が繰り広げられているが、これが企業の利益を圧迫しているといい、本間副社長はこうした「値引き合戦には乗らない」という。

 では何で勝負するのか。実はこの洗濯機、最高性能のAIが内蔵されていて、話しかけるだけで細かい操作が可能だという。

 また、この洗濯機は現地スタッフが中心となって開発を進めたといい、製品開発や事業戦略作りも現地法人が主導するという。

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日本の外食企業が中国進出 各社の戦略

 日本の外食チェーンも中国に進出している。いくつか例を見ていく。

「焼肉きんぐ」を運営 物語コーポレーション
「焼肉きんぐ」を運営 物語コーポレーション

 「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションは2015年、中国で当時珍しかったカニ料理専門店をオープンさせた。ここはミドル層向けの業態で客単価は日本円で1万円前後。2018年には16店舗を展開していた。

 ただ2020年からのコロナ禍、2022年の上海などでのロックダウン、2023年の処理水問題などの影響で業績が悪化し、先月末の店舗数は2店舗となった。

ハンバーグ専門店「肉肉大米」
ハンバーグ専門店「肉肉大米」

 そうした中、2022年には、ハンバーグ専門店「肉肉大米(ローローダーミー)」を上海にオープンさせた。先月末時点で、中国国内に54店舗を展開している。

 人気のメニューは客の目の前で焼き上げる牛100%のハンバーグで、セット価格で1690円。この価格で3つのハンバーグにご飯とスープ、生卵、それからさまざまな調味料がついてくるため自分なりの味を楽しむことができ、非常に人気だという。

 番組が物語コーポレーションに取材したところ、中国では最近「(食事で)失敗したくない」という消費者心理が強く、「低価格」かつ「高品質」ということが重要視されているという。

 日本での味を再現することで人気となっている店もある。

回転すしチェーン「スシロー」
回転すしチェーン「スシロー」

 回転すしチェーンの「スシロー」は、来年9月期末までに、中華圏での店舗数を約160店舗から最大222店舗にまで増やす計画だという。

 日本で経験を積んだ社員が現地で直接マネージメントを行い、現地スタッフとともに日本のブランドを再現するという。

 去年8月、北京に初出店した際に人気だったネタは「まぐろ」2貫、「赤えび」1貫、「うなぎ」2貫が当時の価格で約200円。「大とろ」が1貫約570円と、味も価格も日本と大きく変わらない形で提供している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年11月12日放送分より)

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