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2025年11月13日 18:00

シリア暫定大統領がトランプ大統領と会談 急接近する米国側の狙いとは 大国の駆け引きが加速

シリア暫定大統領がトランプ大統領と会談 急接近する米国側の狙いとは 大国の駆け引きが加速
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 シリアの暫定政府のシャラア大統領は10日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、関係強化を確認した。独裁政権が崩壊したシリアを巡り、アメリカを含めた大国の駆け引きが加速している。

アサド政権崩壊後、シャラア氏が大統領就任

 まずは、シリアを巡る構図を見ていく。

 長年、独裁体制を敷いていたアサド前政権は、ロシアやイランから支援を受けていた。それに対する反体制派勢力は、トルコやアメリカから支援を受けていた。この反体制派勢力とアサド政権が対立していて、長らく内戦状態にあった。

去年12月にアサド政権が崩壊
去年12月にアサド政権が崩壊

 しかし、去年12月にアサド政権が崩壊し、アサド氏はロシアへ亡命することとなった。

 そして、反体制派勢力のシャーム解放機構に属していたシャラア氏がいくつかの反体制派勢力をまとめ、暫定政府をつくり、大統領に就任することとなった。

首脳会談したトランプ大統領「彼は強い指導者」

 シリアに対するアメリカの向き合いも変わってきている。

“元賞金首”シャラア暫定大統領
“元賞金首”シャラア暫定大統領

 シリア暫定政府のシャラア大統領は、過去にはアルカイダの戦闘員として、イラクで戦い、アメリカ軍の刑務所に収容されたこともある。

 また、指定テロリストとしてアメリカ政府から1000万ドル、日本円で約15億円の懸賞金がかけられていた。

 しかし、アサド政権が去年12月に崩壊したことにより、シャラア氏にかけられていた懸賞金は去年12月に撤廃された。

 今月7日には、テロリスト指定も解除された。

 そして10日、シャラア氏とトランプ大統領の首脳会談が実現した。

会談後 トランプ大統領は…
会談後 トランプ大統領は…

 その会談後、トランプ大統領は記者団にシャラア氏を「彼は強い指導者」と称賛したうえで、シャラア氏の経歴を念頭に「我々はみなつらい過去を持っている」とも話した。

 また、シリア政府と取引をした企業に制裁を課す制度、これはシーザー法が基になっていると言われているが、この制度の執行停止を180日間延長することも発表された。

シリアと急接近する米国側の狙い

 シリアと急接近するアメリカ側の狙いは何なのか?

シリアと急接近するアメリカ側の狙いは
シリアと急接近するアメリカ側の狙いは

 アメリカのトランプ大統領はシリアを取り込み、中東情勢の安定につなぐ狙いがあるという報道もある。

 現状を見てみると、アメリカが支援しているイスラエルは、パレスチナの自治区(ガザ地区)への攻撃を続けている状態。また、イスラエルとシリアも第3次中東戦争でゴラン高原を巡る争いがあり、頻繁に武力衝突が起きている。

 ロイター通信によると、トランプ大統領は5月、サウジアラビアでシャラア大統領と面会。トランプ大統領は、イスラエルとの関係正常化を目指すよう促したといい、「シリアがいずれアブラハム合意に加わるだろう」と発言した。

 アブラハム合意とは、2020年にイスラエルとUAE、バーレーンなどアラブ諸国の国交正常化を目的に締結された合意である。つまり、シリアとイスラエルの関係改善がアメリカの狙いという見方もある。

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シリア暫定政府にロシア政権接近

 シリア暫定政権とロシアの関係について見ていく。

ロシアとは敵対関係だったが…
ロシアとは敵対関係だったが…

 ロシアは、アサド前大統領の後ろ盾としてシリア内戦に介入し、当時、シャラア氏ら反体制派勢力に大規模攻撃を実施していた。

 さらに、シリア暫定政府のシャラア大統領は、長年にわたる同盟関係のアサド政権を倒したことからプーチン氏にとって宿敵ともいえる相手だった。

「強力な戦略的関係」を確認
「強力な戦略的関係」を確認

 しかし、去年12月のアサド政権崩壊から約2カ月後の2月にはシャラア大統領とプーチン大統領は電話会談し、「強力な戦略的関係」を確認していた。

 そして先月15日、モスクワ・クレムリンで首脳会談が行われ、プーチン大統領は「両国の外交関係は80年以上続いてきた」と発言した。シャラア大統領も「関係を再構築し、新しいシリアを示せるよう努力する」と友好関係を強調した。

 では、ロシアの狙いは何なのだろうか。

シリアでの軍事基地存続が重要
シリアでの軍事基地存続が重要

 シリアにはロシアにとって重要な軍事基地が2カ所ある。それがシリア西部・地中海側のフメイミム空軍基地とタルトス海軍基地だ。

 英国王立防衛安全保障研究所によると、ロシアにとって東地中海への戦力投入の基盤とアフリカでの軍事支援という重要な基地だという。

 ロイター通信によると、タルトス海軍基地はロシアにとって地中海で唯一の修理・補給拠点であるという。

シリアの油田も関係か
シリアの油田も関係か

 そして、シリアの油田も関係しているという。

 国営タス通信によると、先月15日の首脳会談後、ロシアのノバク副首相は「ロシア企業は長年にわたりシリアで油田開発を行ってきた。(シリアには)開発が必要な油田、休止中の油田、そして新しい油田がある。我々も参加する準備はできている」とシリアの石油・ガス田開発への意欲を表明した。

 さらに、首脳会談では、内戦で破壊された各種インフラの復旧についても協議が行われた。こうしたことから、ロシアの狙いは油田であるという見方もある。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年11月13日放送分より)

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