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2025年11月20日 11:50

【愛子さまが訪れたラオス】不発弾約8000万発 世界一空爆を受けた国の現実

【愛子さまが訪れたラオス】不発弾約8000万発 世界一空爆を受けた国の現実
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19日、愛子さまはラオスの首都ビエンチャンにある不発弾問題の啓発施設を訪問された。ラオスは「世界一空爆を受けた国」とも呼ばれていて、ベトナム戦争で投下された8000万発の不発弾が今も国民を傷つけ、苦しめている。
(ANNバンコク支局 金井誠一郎)

今も苦しみを与える不発弾 光を失った男性

「突然すべてが暗闇になったのです。誰にもこんなことは起きてほしくない」

あの日に戻れたら…。きっと何度もそう願ったことだろう。

ビエンチャンでマッサージ店を営むカンメンさん、33歳。

店では足の感触を頼りに器用に店内のイスやマットの位置などを整えていく。カンメンさんはいまから9年ほど前、両目を失明した。

日常のすぐそばに”不発弾”

COPEビジターセンターに展示されている不発弾
COPEビジターセンターに展示されている不発弾

この日、カンメンさんはトウモロコシなどを作る畑にいたという。場所は、北東部にあるシエンクワーン。ベトナムに接するこの場所は、ベトナム戦争でアメリカ軍から特に激しい攻撃を受けた地域の1つだ。

カンメンさんは金属の”ゴミ”を見つけた。丸い形をしたその”ゴミ”には泥がついていた。カンメンさんはナイフ入れを作ろうとその”ゴミ”を家に持ち帰り、叩いた。

その直後のことだった。

”ゴミ”は爆発し、顔中が血だらけになっていた。右目は破裂し、左目に破片が入り、意識を失った。”ゴミ”は不発弾だった。目が覚めたカンメンさんの目に光はなかった。

失った希望と見つけた希望

事故後、シエンクワンの病院に入院したカンメンさん。

1週間ほどの入院の後、別の町の病院に移り1カ月を過ごしたが、医師からは「もう治らない」と伝えられた。カンメンさんは「希望を失い、生きる気力もなくなった」という。

そこから数年、カンメンさんにとって地獄の日々が続いた。

「どうして無意識にそんなことをしてしまったのか」

常に自分を責めた。食べて、眠る、それだけの日々。気がつけば精神も蝕まれていた。

そんなカンメンさんが変わるきっかけとなったのが友人からの誘いだった。「(首都)ビエンチャンの障がい者センターに行ってみないか」と声をかけてくれたのだ。

訪れてみると、そこで腕や脚を失った人たちが働いていた。障がいがあっても前を向き、働く人たちに勇気づけられたカンメンさん。

「私も頑張ろう」。気が付けば、目が見えない人たちによるマッサージ店で技術を学び始めていたという。8カ月がたったころには、1人で客を持つまでになっていた。

マッサージをするカンメンさん
マッサージをするカンメンさん

そして、数年間の勤務の後、自分の店を開くことを決意した。10畳ほどの小さな店だが、少しずつ軌道に乗り、今では常連客も増え始めているという。新たな道を歩みだしたカンメンさん。同じく目の見えない恋人もでき、二人三脚の人生をスタートさせていた。

「世界一空爆を受けた国」ラオス

COPEビジターセンター
COPEビジターセンター 天井からたくさんの義足が吊るされていた

ラオスの政府機関などによるとベトナム戦争中にアメリカ軍がラオスに投下した爆弾の量は200万トン。数にして2億7000万発を超えるという。被害者はこれまでに5万人以上。その多くが子どもたち。

これが、ラオスが世界最大の「不発弾汚染国」と呼ばれる所以だ。

昔話ではない。戦争終了時、8000万発が残されたという不発弾による被害は現在も続いていて、おととし、去年は年間でおよそ50人が不発弾によって死傷し、今年も死傷者が確認されている。ラオスの人々にとって、不発弾は今も日常を脅かす存在なのだ。

被害者として伝えたいこと

「歩く場所のあちこちに不発弾が残されている。撤去しようとする団体やプロジェクトもあるが数が多すぎて取り除かれていない」。こうカンメンさんは話している。

実際、まわりにもケガをした人は多く、亡くなった人もいるという。

誰も被害にあわないでほしい。不発弾による被害の辛さを知るカンメンさんだからこそ、いま皆に伝えたいことがあるという。

「私の経験を教訓として、みんなへ警告したい。よくわからないものを見つけたら専門家に確認すべきです。もう誰にも同じ悲劇が起きてほしくはありません。不発弾を残した人たちは深く考えなかったかもしれませんが、苦しむのは若い世代です。被害者は自力で生きていくしかないのです」
COPEビジターセンターを訪れた愛子さま
COPEビジターセンターを訪れた愛子さま

そして最後に不発弾の関連施設を訪問される愛子さまに対して思いを述べた。

「愛子さまがラオスを御訪問されることをとてもうれしく思っています。可能ならこの現状を知り、他の人々に伝え、警告してほしいです」
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