アメリカ・トランプ政権は南米・ベネズエラに対し、麻薬密輸対策を理由に軍事的な圧力を強めています。政権転覆を含む新たな作戦を準備しているとも報じられ、緊張が高まっています。
地上部隊の派遣「排除しない」
まず、軍事的圧力が強まっている経緯についてです。
9月以降、アメリカ海軍は麻薬対策を理由にベネズエラを出港した船を攻撃した映像を公開しています。今月16日には原子力空母を中心とする空母打撃群がカリブ海入りし、周辺国と軍事演習も行いました。
これらの軍事作戦は「サザン・スピア(南方のヤリ)作戦」と呼ばれ、アメリカ海軍の艦艇がこれだけ大規模に展開するのはキューバ危機以来です。
24日、アメリカ国務省は麻薬組織「太陽のカルテル」を外国テロ組織に指定。ベネズエラのマドゥロ大統領や高官が組織を率いていると主張しています。
「太陽のカルテル」を外国テロ組織に指定したことで、指定組織への物的支援や資源の提供が禁止されます。さらに、組織のトップや構成員のアメリカへの入国も禁止されます。
「CNN(16日)」によると、トランプ大統領は麻薬組織と紛争状態にあるとし、軍事行動に議会からの承認は必要ないとの見解を示しています。
トランプ大統領は、政権転覆も視野に入れているといいます。
「BBC」(先月17日)によると、先月15日、トランプ大統領はベネズエラでのCIA(米中央情報局)の秘密工作を承認したとの報道について、正しいと認めました。
「ニューヨーク・タイムズ」(4日ほか)によると、特殊部隊の派遣も検討されており、中にはオサマ・ビン・ラディン容疑者の殺害計画を実行した「SEALsチーム6」や、イスラム国の最高指導者・バグダディ容疑者殺害計画を実行した「デルタフォース」といった特殊部隊が含まれるといいます。
トランプ大統領は17日、地上部隊の派遣について問われると「排除しない」と答え、「ロイター通信」(22日)によると、新たな作戦も準備されているといいます。
政府関係者によると、ベネズエラ関連の作戦の新たな段階を開始する用意があり、マドゥロ政権の打倒も狙っているといいます。アメリカの当局者によると、第一段階は秘密作戦となる可能性が高いそうです。
さらに、中国、ロシアへのけん制の目的もあるのではないかという指摘もあります。
ベネズエラの石油埋蔵量は世界全体の17.5%で世界一。「ロイター通信」(先月1日)によると、直接または間接的な輸出先として中国がおよそ84%を占めています。
トランプ大統領は就任当初「石油は十分にある」と主張していましたが、「エコノミック・タイムズ」(先月25日)は、多くの専門家の話として、中国やロシアが関与を強めている中でアメリカが中南米の石油産業への影響力を確保する狙いもあると報じていました。
「モンロー主義」とは?
アメリカがベネズエラへ軍事的圧力を強める背景には「モンロー主義」が関係しているといいます。
2018年の国連総会でトランプ大統領は「西半球では外国勢力の侵食から独立すると固く誓う。モンロー大統領以来、アメリカは西半球への外国の干渉を拒否してきた」と演説していて、西半球を重視する「モンロー主義」の復活だとみる声もあります。
この「モンロー主義」とは、1823年にアメリカの第5代大統領ジェームズ・モンローが発表した外交政策の原則で「南北アメリカ大陸はアメリカの勢力圏であり、欧州諸国はこれ以上植民地を作ったり干渉したりしてはならない」という宣言です。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」(先月22日)によると、トランプ大統領は西半球をアメリカ本土の延長とし、敵とみなした勢力を排除する姿勢を取っているといいます。
つまり、すでに入り込んでいる中国やロシアを西半球から追い出すことが狙いだとみられます。
ベネズエラの野党指導者に「ノーベル平和賞」
そして、ベネズエラの野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏(58)がノーベル平和賞を受賞することになりました。
自由で公正な選挙を行うための活動を続け、マドゥロ大統領に対抗してきたとして、先月10日にノーベル平和賞を受賞することが発表されました。
「CNN」(先月16日)によると、マチャド氏は「この賞をトランプ氏に捧げる」と主張しました。





