香港の高層マンションで起きた大規模火災。消火活動は26日夜からずっと続けられていますが、27日朝になっても、火は消し止められていません。
あたりに焦げた臭いが立ち込めるなか、涙を浮かべながら、消火の様子を見つめる住民の姿がありました。
「このマンションを買ってから、20年以上が経ちます。すべてを投じて買ったけど、もう何も残っていません。どうすればいいの。死にたい気持ちでさえあります。見てるだけで、何もできない」
救助活動は、さらに困難を極めます。
1階から徐々に上の階へ。安全が確認できてから、その階層の捜索を行うため、かなりの時間を要します。
現在、270人以上の安否がわかっていません。
「奥さんだけが中に。(Q.避難は)しようとしました。外へ出てと伝えたとき、彼女は部屋を出たけど、階段は黒い煙で充満していて、逃げられなかった。仕方なく戻ったんです」
27日昼前には、最上階である31階にいた男性が救助されるという、奇跡的なことも起きました。
ただ、時間の経過とともに犠牲者の数は増加。26日夜の時点で13人だった死者は、65人に上っています。
マンション7棟のうち、4棟は、ほぼ鎮圧されたということですが、それでも救出活動を阻んでいるものがあるといいます。
「主な課題は、火災現場の気温が非常に高く、足場が崩壊したため、内部構造が非常に複雑なことです。消防隊員は高温に耐えつつ、階ごとに、火災現場へ進まなければならない。非常に困難な状況です」
香港でこれほどの人的被害が出た火災は、イギリス統治下にあった1948年以来。香港史上、最悪レベルといっていい惨事となりました。
何が、これを引き起こしたのでしょうか。
出火をとらえたとされる映像。
8棟からなるこのマンション群。このうちの1棟の1階部分に火がついているのが確認できます。何に火がついているのかは、映像から判別はできませんが、撮影時刻は午後2時51分。火災の発生時刻と合致します。その火は、すぐに大きくなり、上の階の足場に燃え広がります。その後、炎は縦に大きく伸びています。撮影者によりますと、ものの10分ほどで、急速に燃え広がっていったそうです。
8棟中、延焼をまぬがれたのは1棟のみです。約4600人が営んでいた生活が、たった数時間で奪われてしまいました。
「私は、2号棟に住んでいて、6号棟から5号棟に火が燃え広がったのを見た。誰も水をかけてくれなかった。私たちにとってはひどい状況で、どうしたらいいのかわからなかった」
発生当初から、改修工事のために組まれていた竹の足場が、急速に燃え広がった原因だと指摘されてきましたが、これ以外の要因も加わった可能性が出てきました。
「救助・消火活動のなかで、建物の外に防護ネット、防水キャンパス、ビニールシートなどが張られていた。これらの材料が、防火基準に満たしていない疑いがある」
警察が指摘しているのは、マンション全体を覆っている緑色の防護ネットが燃えやすい素材だった可能性です。
さらに、もう一つ。
「エレベーターホールの窓は、外から発泡スチロールで覆われていた。発泡スチロールが、火の手が迅速に広がった原因であることを排除できない」
マンションの各階の外壁にも、燃えやすい発泡スチロールが張られていたことです。
警察当局は、これらが火の勢いを急速に強めたとみて捜査を進めていて、工事会社の取締役や技術顧問が、過失致死の容疑で逮捕されました。
一方、いまだ判然としないのが出火元です。
現地メディアは、火災直前の出来事として、こんな住民の証言を伝えています。
「建設作業員の一部が、間違いなく喫煙していた。窓を開けたら、すぐに煙の臭いが漂ってきた。作業員は18階か20階で作業していたので、きっとそこでタバコを吸っていたのでしょう」
今回の修繕工事は、1年以上前から続く大規模なもので、その間、住民たちからは作業員の喫煙やポイ捨てについて、苦情があがっていたとも報じられています。
タバコの不始末が原因になったか、確たる情報はありません。ただ、避難した住民たちに話を聞くと、確かに工事業者への批判を耳にします。
「(Q.工事の作業員が喫煙していたことは)ある。地面によく落ちていた」
住民
「たばこを吸ったら罰金なのに、吸っていた。罰金と書いてあるのに吸っていた。吸っていない作業員はいないと思います」
住民
「エアコンが外された後の穴を発泡スチロールでふさいでいた。(Q.部屋の中に)はい」
住民
「部屋の窓は、すべて発泡スチロールでふさいでいた。工事のときに、窓ガラスを守るための対策だろう」
◆今回の火災、香港では“戦後最悪”の規模となるおそれがあります。
日本でも同じような火災が起きるリスクはあるのでしょうか。
マンション火災に詳しい元東京消防庁・麻布消防署長の坂口隆夫さんに聞きました。
坂口さんは「日本で同様のことが起こるとは考えづらい」といいます。その理由として「日本の工事では、竹ではなく“金属製の足場”が使われ、防護ネットも防炎性能のものが義務付けられている。日本のマンションは、住戸ごとに耐火構造の床や壁で区切られ、延焼を防ぐ構造になっている。一定規模のマンションでは、“防火設備の点検”が年2回実施される。また、11階以上のマンションは“スプリンクラーの設置”が義務付けられている」と話します。
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