ロシアに対してヨーロッパ各国が警戒を強めている。
ドイツが新たな兵役制度の導入へ
まず、ドイツで進む兵力増強の動きを見ていく。来月、新たな兵役制度が始まるという。
BBCによると、先月13日、ドイツ政府は、兵力増強に向けて新たな兵役制度で志願兵を集める方針を発表した。この法案は今月に可決され、来年から施行される見通しだという。
志願兵とは、英語で「ボランティア・ソルジャー」といい、自発的に軍に参加し、一定期間軍務に就く兵士のこと。ドイツ連邦軍には現在約18万人の兵士がいるが、新たな制度のもとで来年約2万人増員し、今後10年間で最大26万人まで増やすことを目標にしている。また、軍務についた経験を持つ「予備役」約20万人を追加することなどもうたっている。
こうした兵力を増やすため、来年から18歳のすべての男女を対象に兵役への関心や意思を問う質問状を送付するといい、男性は回答する義務があり、女性は任意となる。
また、政府は志願者を増やすための措置として、給与を月額で最低でも約47万円に引き上げるといい、1年以上勤務すれば運転免許取得の補助金など用意するという。
背景にはロシアへの警戒感があるという。
ロイター通信によると、ドイツ軍のトップであるブロイアー連邦軍総監は、去年4月の時点で、ロシアがウクライナ侵攻の影響を受けた軍を再建すれば、「5年〜8年以内にNATO加盟国を攻撃する可能性がある」として、コメントをした去年から5年後の「2029年までに準備を整えなくてはならない」と指摘している。
では、兵力増強の財源はどう確保するのか?
ロイター通信によると、そもそもIMF(=国際通貨基金)がドイツの財政赤字について、2027年にGDP比で約4%にまで拡大するとみているほど、財政悪化は深刻な状況だ。
そもそもドイツ憲法には、財政赤字を抑える「債務ブレーキ」という仕組みが記されている。これは2009年の金融危機への対応として、当時のメルケル政権が設けた制度で、政府の財政赤字をGDP比0.35%未満に抑えるもの。
ただ3月、ドイツは国防費などを「債務ブレーキ」から除外する憲法改正を行った。1920年代のハイパーインフレがナチス台頭の一因となったことから財政規律を重んじてきたが、大きな政策転換となるという。
「徴兵制」復活の議論も 若い世代から賛否の声
警戒感を強めるドイツでは「徴兵制」復活の議論も始まっている。こちらも新たな兵役制度に含まれている。
BBCによると、ドイツ政府は当面志願制を維持するが、新たな兵役制度では必要な人員を確保できない場合、徴兵を議会で検討する可能性もあるという。
ただAFP通信によると、与党内では、くじ引きによって徴兵の対象者を決める「徴兵くじ引き制」という形で義務的な要素を導入する案も出ているという。
BBCによると、ドイツでは長らく徴兵制度があったが、冷戦終結後に防衛支出が大幅に縮小したことなどから徴兵制は2011年から停止されている。
今回決まった新たな兵役制度では、2027年から18歳の男性全員に兵役適性を判断するための身体検査を行い、戦争が勃発した場合、兵役希望などの質問状や身体検査の結果を活用して徴兵対象者などを検討できるといい、徴兵への地ならしとの指摘もある。
今回の改正をドイツ国民はどう受け止めているのか?
ドイツ誌シュテルンと世論調査会社の調査では、「徴兵義務」には全体の54%が賛成した一方で、18歳〜29歳という若い世代では、63%が「反対」という逆の結果が出たという。
BBCによると17歳の学生ジミさんは「戦争に行きたくない。死にたくないし撃たれたくない」「人を撃ちたくもない」と話しているというが、一方で安全保障環境の変化から入隊を志願した若者もいて、21歳のジェイソンさんは「最悪の事態に備え、平和と民主主義を守るために貢献したい」と軍に入隊したという。
自衛隊の人員不足が深刻に
ドイツでは兵士不足が課題となっているということだが、日本でも自衛隊の人手不足が深刻な課題となっている。対策として手当の拡充などを進めるほか、人手不足を補うためにAIを活用するという考えだという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月3日放送分より)







