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報道ステーション

2025年12月4日 02:51

「地上攻撃も始める」ベネズエラへの攻撃間近か…空母も展開するトランプ政権

「地上攻撃も始める」ベネズエラへの攻撃間近か…空母も展開するトランプ政権
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アメリカのトランプ大統領は、以前から激しく敵視してきたベネズエラへの軍事侵攻の可能性に言及し、カリブ海に空母を展開する事態となっています。

ベネズエラに地上攻撃も辞さず

アメリカの自治領プエルトリコには上陸作戦に備えた強襲揚陸艦が配備され、兵士たちの訓練が続いていました。カリブ海に配備されたのは約1万5000人。ジェラルド・フォードなどの空母打撃群に、原子力潜水艦、F35も配置されました。

アメリカ国防総省 ウィルソン報道官
アメリカ国防総省 ウィルソン報道官
「麻薬密輸船への攻撃はこれまでに21回行われ、82人の麻薬テロ犯が殺害されました。指定テロ組織に対する攻撃は、アメリカの国益と国土を守る措置として実施されました」
麻薬密輸船への海上攻撃

9月から続く、トランプ政権による麻薬密輸船への海上攻撃。これまでに21回に上り、80人以上が殺害されています。麻薬対策が強化されていることは間違いありませんが、それだけでは片付けられないほどの大規模配備で、アメリカはベネズエラへの圧力を強めています。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「地上への攻撃も始める。地上攻撃ははるかに簡単だ。どこにいるかも分かっている。攻撃は間もなく始まる」
ベネズエラ マドゥロ大統領(2019年)
「アメリカ帝国主義政府との外交的・政治的関係を断絶すると決定したことを告げる」
反米政権

もともとチャベス政権の頃から本格的に「反米」を掲げているベネズエラ。トランプ大統領も1期目からベネズエラへの強硬姿勢を貫いてきました。トランプ政権が求めるのはマドゥロ大統領の退陣。ベネズエラの空域封鎖を宣言するなど圧力を強めているものの、反発の声は高まるばかりです。

ベネズエラ マドゥロ大統領
ベネズエラ マドゥロ大統領
「植民地には決してならない。奴隷には決してならない。自由・共和国・威厳のある平和、それこそ平和だ」

トランプ大統領のゴールは、ベネズエラの反米政権を倒すだけにはとどまらないとみられています。

アメリカ トランプ大統領
アメリカ トランプ大統領
「例えばコロンビアはコカインを密造していて精製工場がある。そのコカインを我々に売りつける。わが国に密輸する、あらゆる国家が攻撃対象になる」
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トランプ氏 軍事圧力の狙いは

ベネズエラ

ベネズエラは南米北部のカリブ海に面していて、人口は約2650万人。石油埋蔵量はサウジアラビアなどを上回り世界トップ。“反米左派”の政権が長く続く国です。

(Q.なぜベネズエラとアメリカは関係が悪いのでしょうか)

チャベス前大統領

1999年、ベネズエラの大統領になったチャベス氏は、これまでの親米政権の政策から転じて「21世紀の社会主義」を掲げ、反米政権となりました。その後、石油産業の国有化を強化し、中米などに優遇。それまでアメリカはベネズエラに石油輸入の15%を頼っていて、関係は悪化しました。

マドゥロ大統領

さらに2013年、チャベス氏から変わったマドゥロ大統領も反米路線を引き継ぎ、アメリカは2017年に金融制裁、2019年に石油会社への経済制裁などを行いました。その結果、ベネズエラの石油生産量が減少するなどして国内経済は悪化し、国民生活は困窮。国外に逃亡する人も多く、難民・移民の数は約790万人、アメリカへの不法移民は年間約65万人に上ると言われています。

(Q.長年対立していた中、なぜ今トランプ氏は武力を使った行動に出たのでしょうか)

ベネズエラへの麻薬対策

トランプ大統領は不法移民・麻薬対策を理由に掲げています。ただ、これは2019年の第1政権の時から言及していて、具体的に動き出したのは今年です。今年3月、トランプ氏は「ベネズエラのギャング組織が不法移民として流入し、麻薬売買などに関わっている」と指摘。そして9月からアメリカ海軍がベネズエラを出港した船を攻撃。映像を見ると、1隻の密輸船をミサイルで爆破するという激しい攻撃を行っています。こうした攻撃を9月以降、21回行い、これまでに80人以上を殺害したということです。

ベネズエラへの麻薬対策

このような攻撃について、国連の独立専門家グループは「法律に違反する」と指摘もしていますが、トランプ大統領は止まらず、11月には最新の原子力空母など13隻、アメリカ兵1万5000人をカリブ海に集結。さらにトランプ大統領はベネズエラへの“地上での攻撃”を「間もなく開始する」と改めて警告しています。

海外メディアによると、11月下旬、トランプ大統領はマドゥロ大統領と電話会談し、退陣を要求したと伝えられています。一方のマドゥロ大統領は「アメリカが戦争を捏造(ねつぞう)しようとしている」「戦争を正当化し、我々の莫大(ばくだい)な資源を奪うためだ」と激しく反発しています。

(Q.トランプ大統領は地上攻撃をどうやって正当化するのでしょうか)

アメリカ外交に詳しい慶応義塾大学の森聡教授に聞きました。

森聡教授
森聡教授
「地上への攻撃は“ベネズエラとの交戦”ではなく“麻薬テロ組織掃討作戦の一環”というロジック。アメリカ社会を蝕む麻薬密輸・移民流出の元凶であるマドゥロ政権の転覆こそが最終目標で、麻薬・移民流出対策を取る新政権を樹立させ、中南米地域での支配的影響力を強め、キューバ・ロシア・中国など反米勢力の影響力を排除したい狙いがあるのでは。このままマドゥロ大統領が退陣しなければ、近いうちに地上への攻撃を実行する可能性がある。ただ、トランプ大統領は無期限の武力行使は避けたいので、一定期間、攻撃してもマドゥロ大統領が国外退去に応じなかったり失脚しない場合には『麻薬テロ組織を壊滅させた』と宣言して、いったん軍事行動を打ち切る道を残そうとするかもしれない」
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